日本政府の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策アプリ「COCOA」が6月19日に配信開始されました。このアプリ登録方法を紹介します。

■接触確認アプリ「COCOA」とは

2019年末より世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。「接触確認アプリ」はその感染拡大を抑制するために、スマホのアプリを活用しようという取り組みです。

アップルとグーグルの協力によって、iPhone(iOS)とAndroidの2つのプラットフォームで使える「接触確認」の仕組みが用意されました。その仕組みを用いて、世界各国の政府や保険機関がアプリを提供します。1か国で1つの機関のみが提供をすることとなっており、日本では厚生労働省がiOS/Android向けのアプリ「COCOA」として提供します。

厚生労働省

接触確認アプリCOCOAの目的は、新型コロナウイルスの感染者が発覚したときに濃厚接触した疑いのある人に「通知」を送ること。そのため、アップルとグーグルはこの仕組みを「接触通知」と呼んでいます。

COVID-19は感染者に症状がでていない期間にも感染を広げるというやっかいな性質があります。特に若年層には症状がでないことが多いため、気付かないうちに感染を広げているという可能性もあります。

アプリをみんなが導入すれば、誰かに感染が判明したときに接触した人が、いち早く気付けます。濃厚接触のおそれがある人が外出を控えれば、感染拡大の抑制につながる、というわけです。

アプリを導入すると、Bluetoothビーコンという近距離無線通信機能を使い、1メートル以内、15分以上近づいた人(同じくアプリを導入した人)のスマホの識別情報を記録し続けます。利用者のうちの誰かの感染が発覚した場合、濃厚接触の疑いのある人に通知が送られるようになります。

■COCOAの設定方法

COCOAは初期設定を一度行ってしまえば、そのままスマホに入れておくだけで作動するように仕組みになっています。「接触確認アプリ」と検索して、App Store/Google Playからダウンロードできます。利用開始時にアカウント登録などは不要。住所氏名、電話番号といった個人情報の入力も必要ありません。

App Store(iOS 13.5以上)

Google Play(Android 6.0以上)

アプリをダウンロード後、最初に情報取得の許諾に同意します。利用規約、プライバシーポリシーへの同意と、ログ記録機能および通知機能の権限を確認されます。アプリ上の案内に従っていけば3分ほどで設定は完了します。

初期設定では利用規約への同意と、アプリへの権限確認が行われます。Bluetoothによるログ記録と通知をして良いかの確認です

接触情報の確認は、アプリ上から確認できます。アプリで「陽性者との接触を確認する」というボタンを押すと、接触があった場合に接触した回数が表示されます。登録したばかりでは、接触情報は確認できないでしょう。接触情報は1日に1回程度、更新されます。

COCOAアプリのメイン画面

感染者との接触が判定された場合、「陽性者との接触が確認されました」といった通知がアプリ画面上に表示され、必要に応じて帰国・接触者外来を受診するよう促されます。

過去14日間に陽性者と接触していないかを確認できます

■感染が判明すると匿名での登録を求められる

接触確認アプリの仕組みは、感染が判明した後に作用します。感染しているかのどうかの判断は、従来通り、保健所・医療機関でのPCR検査などによって行います。

ここで感染が判明した人が接触確認アプリを利用している場合、保健所にて「感染者のIDを接触確認アプリのシステムに登録して良いか」を訪ねられます。同意すると、感染者のスマホのID(最大で過去14日分)を接触確認アプリのシステム上に匿名で登録されます。

こうして登録された陽性者のIDは、各アプリに「診断キー」として配信されます。この「診断キー」と、スマホ内の接触情報をアプリが照らし合わせることで、「陽性者と接触した履歴があった」と分かる仕組みです。

感染者のIDと日時情報を組み合わせて生成された「診断キー」の情報をユーザーアプリに対して公開します。この診断キーを各ユーザーの接触確認アプリが取得し、アプリ内に保持している接触したIDの識別情報を照らし合わせて、「接触したかどうか」をアプリ上で判定します。

■プライバシー侵害の懸念はない?

政府が提供するアプリということで、「プライバシーが侵害されるでは?」という懸念を持つ人もいるかもしれません。その心配はありません。政府が公開した仕様書によると、このアプリは個人情報を取得する範囲が厳格に制限されています。

もともと、アップルとグーグルが用意した「接触確認」の仕組みもプライバシーに配慮したものとなっています。「接触」の情報は端末に割り当てられた匿名のID(しかも1日ごとに変化し、14日で削除される)で管理され、端末内にのみ保持されます。スマホはこの個別IDをBluetoothビーコンの信号として発信します。近くを通りかかったスマホがそれを記録して、「このIDを持つスマホと接触した」という情報を残します。この接触情報はスマホ内にのみ保存され、アップルやグーグル、政府が取得することはできません。

また、Bluetoothの性質上、スマホ個別のIDを遠隔で取得することはできません。さらに、ID自体は乱数になっているため、取得したとしても保有者Aさんの個人情報を知ることにはなりません。付け加えれば、COCOAは位置情報や携帯電話の基地局からの情報の取得も行いません。

■アプリ利用は任意。感染した人のID申告も任意

そもそも、アプリを利用開始するには、ユーザーがアプリをダウンロードし、Bluetoothの使用などの許諾に合意する必要があります。政府が強制的にアプリをインストールするといったことはありません。

PCR検査などでCOVID-19感染と診断された場合にも、「システムにIDを登録するか」は感染診断を受けた人が任意で選ぶ仕組みとなっています。登録する場合、スマホ個別のIDは「誰から感染した」ということが分かるプライバシー性の高い情報となるため、個人情報として扱われます。

また、接触通知を受けた人に対しても「誰から感染した」「どこで感染した」という情報は伝えられないように配慮されています。通知が表示されたとしても、濃厚接触のうたがいのある人が政府に把握されるということもありません。アプリが判定に使っているIDはスマホ上でランダムに生成された乱数なので、通知があったとしても「誰に通知された」のかはそれだけでは識別できません。

このように、プライバシーの取得に関しては厳密なルールが定められているため、個人の監視に使うことは困難な仕組みと言えます。

■スマホのID発行を止めたい場合

接触確認アプリの利用は完全に任意で、プライバシーの取得も最小限となるように配慮されていますが、利用しない選択も可能です。アプリの利用はいつでも中止できます。アプリを削除すればスマホ内に保存された接触記録も削除されます。

ランダムIDの発行はスマホの機能として組み込まれていますが、設定からIDを削除できます。

接触通知アプリのためのログ記録機能は、OSの設定からアクセス可能です。

iPhone:「設定」→「プライバシー」→「ヘルスケア」→「COVID-19接触のログ記録」

Android:「設定」→「Google」→「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の濃厚接触の可能性の通知」

■実際に効果はあるのか

接触確認アプリという新しい感染症対策ツールを手に入れたことで、感染拡大をどこまで抑制できるのかには期待が集まるところでしょう。残念ながら、接触確認アプリ単体では、感染拡大を大きく抑制する効果はありません。

英オックスフォード大学の研究によれば「人口の6割弱が導入すれば、感染拡大を抑制できる」とされています。ただ、日本のスマホ利用率が6割強にとどまっている時点で、その全員がアプリを導入するというのは大きすぎる目標と言えます。各人が意識的にアプリストアからダウンロードして、さらに設定も行わなければならないという時点で、接触確認アプリの普及には大きなハードルが存在します。

加えて、特にiOSでは最新OSのみ対応と要件も厳しめです。システム的に全人口の6割のスマホに導入されることは不可能でしょう。COCOAは、これさえあれば感染を抑制できるという特効薬ではないのです。

とはいえ、アプリが意味のないツールだということではありません。たとえばアプリの導入により、通勤電車のような人が多く行き交う場所での感染拡大の状況が明らかになる可能性があります。さらに濃厚接触のうたがいのある人を優先して検査できることで、保健所や医療機関の負担が軽減することになります。

また、COCOAでは今後、「昨日接触した人数」を表示するアップデートも検討されています。この更新の狙いは、多くの人と接触していることを知らせることで、手洗いや密な空間でのマスク着用などの感染拡大防止を意識するように促すことにあります。たとえ利用が6割に及ばず感染拡大の抑止効果としては不十分な結果になっても、ユーザーひとりひとりに感染対策を意識させるきっかけになるという効果はありそうです。

COCOAは、プライバシーに十分配慮した上で多くの人が利用することで「自分以外の誰かを救える」可能性を持つアプリです。その上で、利用するかどうかは個人の判断に任せられています。

Source:厚生労働省

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