代表に選ばれると、取材の数も「一日に5件とか、ほぼ毎日だった」と一気に増えた。大変だったが、そのすべてに応じた。
 
 もちろん、まったく休みがなかったわけでもない。キリンカップの期間中、オフを利用して憧れのカズに映画に連れて行ってもらったことがある。

「カズさんは当然だけど、俺もJリーグに出始めていたし、歩いていたら、たくさんの人が集まってきて、凄いなって。映画はカズさんがチケット代を出してくれて、おつりをもらっていなかったから、俺がそれを受け取りに行ったら、カズさんから『戻してこいって』って怒られた」

 プロのサッカー選手として、ピッチ外でいかに振る舞うかも学んだ。

 ピッチ内に目を向ければ、キリンカップの前と後では、自分の中で明らかな変化を感じていた。「Jリーグでは、代表の試合と比べるとスピードがゆっくりというか、余裕ができた」。欲もさらに出てきた。「世界は甘くないけど、もっと代表で活躍したい」と。

 より高みを目指し始めたテルは、ある欲望が抑えきれなくなってもいた。もし次の代表でも選ばれたら、「監督に絶対に言おう」と決意を固めた。

<エピソード3に続く>

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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