新型コロナウイルスの世界的大流行があちこちで危ぶまれていたころ、米オレゴン州ポートランドのストリッパー、ブロディ・グロディ氏の収入はいつもの半分に激減していた。「みんな怖がっていたわ」と彼女は言う。

「前より外出しなくなったし、ラップダンサーをオーダーする回数も減った。ダンサーに近づきすぎるのを恐れて、ステージ横に座るお客も少なくなった」

そこへ先週ケイト・ブラウン州知事が、オレゴン州のすべてのレストランとバーを閉鎖すると発表した。すでに半減していたグロディ氏の収入は「見事にすっからかん」になったそうだ。「私たちみんな、大至急どうにかしなくちゃいけなくなっちゃったの」

グロディ氏の勤め先Lucky Devil Loungeのオーナー、ション・ボールデン氏がある解決策をひらめいた。ブラウン州知事のお達しがあった後、ボールデン氏はTwitterに、レストラン兼ストリップクラブは閉めることになるが、どうにかして従業員に仕事を見つけなくちゃいけない、と投稿。そして冗談交じりに、トップレスダンサーの宅配サービスでも始めるか、とツィートした。すると、うちのエリアにもデリバリーしてくれるか、という問い合わせが顧客から殺到。「『おいおい、ひょっとしたら上手くいくんじゃないか』と思ったんです」とボールデン氏は言う。

このツイートから生まれたのがBoober Eats(ブーバー・イーツ)だ。デリバリー料金プラス30ドルで――代金は従業員内で均等に分配される――バーガーやフライドポテト(サラダ、ステーキ、その他何でもOK)をオーダーすると、運転手兼ボディガードに伴われた2人のダンサーが自宅まで配達してくれる、というサービスだ。ダンサーはマスクに手袋、アルコール消毒液を携え、疾病予防管理センターのガイドライン通りに6フィート(約180センチ)の感覚を保って、玄関口まで食事をお届けにあがる。

・配達中の写真

当初の計画ではトップレスでデリバリーするつもりだったが、「ある時点で、トップレスの女の子たちを不特定多数の家に送り出すのはどうか、という話になりました。それで少し抑え気味にすることにしました」とボーデン氏は言う。控えめバージョンでは、ニップルシールを張った女性が客の玄関まで歩いていき、戸口に注文品を置いてから、上着を脱いで「揺らしてみせる」。ただし、この辺はダンサーの力量に任されているようだ(たとえばグロディ氏の場合、一度に片乳ずつ揺らしてくれる)。

一般的にストリップダンサーは個人事業主に分類されるため、万が一仕事ができなくなっても、疾病手当やその他の給付を受けられない。その結果、全米の大勢のサービス業の従業員同様、ストリップクラブの閉鎖でダンサーたちも完全に収入源を絶たれてしまった。「この先数週間どうなるのかしら。仮にどこからか金銭的な援助があったとしても……ダンサーを支援していた人たちが仕事や移動ができなくなったら、私たちへの援助もどうなることか分からないでしょ」とは、r/strippersというサブレディットのとある投稿だ。中にはクラウドファンディングで支援を訴えるダンサーや、あるいはアダルト業界のパフォーマー同様にOnlyFansなどのプラットフォームでコンテンツを販売しているダンサーもいる。

それでも稼ぎは以前の1/4

Boober Eatsは完璧な解決策ではない。グロディ氏いわく、続けるうちに状況は良くなってはいるものの、それでも以前の1/4しか稼げないという。それに完全にリスクフリーというわけでもない。ダンサーは注文のたびに手を洗い、手袋も交換しているが、車内では他の2人と同席しなくてはならない。そのためボールデン氏のクラブのダンサーにも、とくに感染の危険が高い近親者と暮らしている者など、宅配サービスで勤続する代わりに自宅隔離を選んだ者もいるという(パンデミックの間デリバリーができないダンサーがいたら支援するか、と尋ねると、「彼女たちのなかで連絡をくれた者はいませんが、もし連絡があれば、必要なことはなんでもしてやりたいと思っています」と彼は答えた)。

手グセの悪い客という危険とも隣り合わせだ。だが、それも新型コロナのご時世にはこれまでとは様相が違っているようだ。グロディ氏の話では、幸いなことに、ほとんどの顧客が安全な距離を保っているという。ただ一度だけ、酩酊した女性客が抱きついてこようとしたことがあり、「ボディガードがうまく収めてくれたわ」とグロディ氏。

それでも、零細企業が懐を痛めている昨今、Lucky Devil Loungeのようなクラブはスタッフを守るために大至急ビジネスモデルの転換を迫られている。「この後も営業が続けられるようにするためにも、今までとは違うやり方で、従業員を雇用し続けなくては」とボールデン氏は語る。