pixel 3a」は、2019年5月17日に発売開始されたGoogle製スマートフォンです。前年11月に発売された「Pixel 3」から価格を約半分の4万9500円としながら、上位モデルと変わらないAIカメラ性能、おさいふケータイ搭載しています。

廉価版という扱いを受けることが多いこの機種ですが、Googleの設計開発の妙により、実はそれ以上となったこの機種を、筆者はベストバイ2019に推したいと思います。
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■本当に廉価版? ハイエンドに見劣りしないカメラ性能


ハードウエア的には、ハイエンドのPixel 3と比べて格が落とされた部分は確かにあります。搭載SoCはsnapdragon845から同670となりました。ディスプレイは同じOLEDディスプレイですがHDR対応ではなくなりました。

そして、Pixel 3で搭載されていた動画処理に特化したプロセッサ「Visual Core」が省略されています。しかし、それをソフトウエアで勝負して見事Pixel 3と同等、場合によってそれ以上に実用的な製品に仕上げたGoogleのセンスは見事だと思うのです。

一番驚かされたのは、カメラ機能。Visual Coreがないにも関わらずさほどPixel 3と変わらない性能を保っていることです。

Pixel 3はVisual Coreがカメラ機能で使用しているAI、具体的にはニューラルネットワークは膨大な数の半精度浮動小数演算を「同時並行」で計算しています。Visual Coreを省略してしまったPixel 3aは撮影に時間が非常にかかるか、クオリティが落ちるかどちらかになるだろうと思いました。

しかし、Pixel 3aの実力に打ちのめされます。夜景モードは、Pixel 3より若干時間がかかっているのかな? と思える程度にしか撮影にかかる時間は変わりません。なにより撮影した画像は。Pixel 3のそれと全く変わりなく美しいのです。

▲夜景モードで撮影した12月の六本木。下手なコンデジよりも、Pixel 3aの方が綺麗に、速く写せる。

AIが画像を補完することで遠い距離でも画像が粗くならない「デジタルズーム」も健在ですし、カメラが内部で自動連写しベストショットを自動で選ぶ「トップショット」も機能しています。


▲Pixel3aの最大ズームで撮影した「月と雲」。さすがに、月のあばたや天の川が写るというPixel 4には敵わないが、ミッドレンジ向けスマートフォンでここまでいけるのはたいした物では。


▲ポートレートモードで手前のコーク瓶にピントを合わせ、背景をボケさせる。瓶が汗かく描画までAIが輪郭抽出していると思うと、見事な芸当だなぁ、と思わざるを得ない。

Pixel 3やPixel 4で行われたカメラ機能に関する記者説明会が3aでは行われておらず、Pixel 3aのAIカメラがどのような仕組みで実現されているのか一般には公開されていないためわかりません。しかし、Visual Coreなしでも何らかの仕組み(CPUやGPU、DSP)を使って、Pixel 3がVisual Coreでやっているのと同等の演算をしているのでしょう。

▲照明が入って暗くなってきた野球場ですが、これだけ明るく撮影できます。Pixel 3aのカメラ機能は本当にピカイチです。ちなみに夜景ではなく、普通のカメラモードでの撮影です。

▲お寿司の照りはこんな感じで写りますね。赤味はもうちょっと赤いほうが食欲をそそるかなぁ。

▲ここは、かなり煙い、炭を使った焼き肉屋さんなのですがちゃんと肉も美味しそうに写っております。

ちなみにAndroid OS自体、バージョン8.1以降からニューラルネットワーク演算支援APIが搭載されていて、機種特性に応じて使えるハードウエアを上手に使ってAIに必要な演算が可能です。

たとえば、TensorFlow LiteやCaffe2といったAIエンジンを載せ、その機種で利用可能なプロセッサが、TPU・GPU・DSP・CPU等を持っていれば、それに応じて演算負荷を分散させることができるのです。Pixelシリーズも内部でこれを利用しているのかもしれません。

■いいトコロはまだまだある


先にも述べましたが、Pixel 3からスペックダウンした部分としてはCPUやディスプレイがあります。Pixel 3がSnapdragon 845なのに対し、Pixel 3aではSnapdragon 670になっています。

一般的にSoC(CPU)型番は8xxだからハイエンド、6xxはその性能を落としたもの......となります。実際は一部のゲームなどでは性能差がうかがえますが、ほとんどの日常の利用シーンでは問題ありません。おそらく、CPUのSnapdragon 845と670では単純に性能が違う劣化版ではないことが影響しているのでしょう。

余談になりますが、Snapdragon 845と670では、CPUのコア構成から異っていて845は素直なLitte.BIG構成4−4コアでしたが、670に関しては2-6コア構成になっています。なので低速時、平常運転は同時並行に動くコア数としてはむしろ670の方が多いという状況もありうるのです。

ただし、Snapdragon 845のCPUコアはKyro380 2.8GHz/1.8GHz、670はKyro360 2.0GHz/1.7GHzですから、絶対的性能で逆転することは、さすがにないでしょうが......。

ディスプレイはPixel 3がHDR対応(ただしUHDA認証を受けていない)のOLEDディスプレイだったのに対して、Pixel 3aではHDR対応ではなくなりました。ただ、HDR対応のコンテンツ自体それほど多くないので、それほど影響は大きくありませんが。

ただ、CPUやディスプレイが変わったことで明らかなメリットもあります。それは電池保ちです。バッテリー容量自体が3000mAhとPixel 3より85mAh多くなっているのですが、容量の増えた以上に、Pixel 3aはPixel 3より電池保ちが良くなっています。

▲ちょうど左手ワンハンドで握って人差し指が指紋センサーに届くサイズ感。人間光学的に正しい位置を考えて作られているに違いない。

まだまだ、Pixel 3aのメリットはあります。大きさ・ホールド感の良さ、イヤフォンジャックが有るところでしょう。

大きさに関して言えば、Pixel 3aは、片手持ちし、もう片方の手で操作する筆者のような使い方をする人に最適なサイズ、センサやスイッチの位置なのも最高です。指紋認証センサなどは背面にあり、左手で握ると、ちょうど人差し指の位置に来ます。すなわち、スマホを握るとちょうどロック解除できる本当にちょうどいい位置に設計されています。

イヤフォン端子に関して言うと、廉価版ではイヤフォン端子がなくなったの?と思う方が多いと思いますが、逆です。Pixel 3ではなかったイヤフォン端子がPixel 3aにはイヤフォンジャックが「ある」のです。今まで購入したイヤフォン・ヘッドフォンをつないで使うことができる。やっぱり、これが嬉しいですねぇ。

やはり、TypeーCやLightingではなくオーディオ機器にはイヤフォン端子があるべき、と思うんですけど、どうなんでしょう? 少なくともコストをいうなら安い機器にあって高い機器にないのは逆なのでは......。

Pixel 3aでは綺麗なPurple-ish(淡紫)がカラーラインナップに加わりました。この色、他のスマートフォンにはない色で、綺麗なんですよね。どこか陶器にも似た淡紫。うん、いい色です。Pixel 3のnot Pinkも綺麗だとは思うのですが、筆者個人的にはこのPurple-ishは素敵だと思います。

また、個人的には筐体がガラスからPixel 3aでポリカーボネートになったことで、手入れがしやすいので気に入っています。

さて、Pixelシリーズとしては、最新機種として『Pixel 4』が発売になりました。こちらにも『廉価版』が登場するのでしょうか? 筆者としては少し楽しみなのですが......できればイヤフォンジャックと指紋認証が復活したモデルででてくれると嬉しいなぁ、と。

▲次の被写体を用意して待っております。>googleさま

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