過去のイメージから脱却して大ブレイクしたクルマ

 マツダがアクセラのフルモデルチェンジに合わせて、国内の乗用ラインアップの改名を行ないました。アクセラはMAZDA3になり、デミオはMAZDA2、アテンザはMAZDA6となっています。まさに「MAZDAという名のクルマが走り出した」のです。クルマが選ばれる理由のひとつに認知度があり、そのためにさまざまなプロモーションをするわけですが、その名前を捨ててしまうというのはもったいないとも思えますし、一方では新鮮味のあるブランドにするためには必要という見方もあります。はたして、クルマの改名というのはどのような効果があるのでしょうか。

 まずは、マツダ以外のブランドで、どのような改名があったのか思い返してみましょう。たとえば日産ではセドリック/グロリアという伝統的な名前で、トヨタ・クラウンのライバルだったラグジュアリーセダンを2004年に「フーガ」と変えました。このときは、プレミアムスポーツセダンとして若返ることが改名の狙いのひとつでした。

 トヨタではハイエース由来のメカニズムだったLLクラスミニバンの「グランビア」を、FFの乗用ベースとしたタイミングで「アルファード」に変えたことも、改名の一例として思い出されます。一気に洗練したことを改名によって市場にアピールしたわけです。その後の躍進はご存じのとおりのでしょう。

 遡ると販売チャネルの改名にあわせて「スターレット」を「ヴィッツ」と変更したこともありました。その「ヴィッツ」はWRCのプロモーション効果に合わせて、グローバルネームの「ヤリス」に変わるというもっぱらの評判です。

 最近ではスズキのスーパーハイト軽モデルが「パレット」から「スペーシア」に改名したケースも印象深いものです。スペーシアとなって初のフルモデルチェンジを果たした2代目では、大きく販売台数を増やしています。

伝統的な車名を変更して数年で終わったモデルも存在

 もちろん成功例ばかりではありません。トヨタが2001年に誕生させた「ヴェロッサ」は、それまでチェイサー/クレスタという名前で一世を風靡したマークII(これものちにマークXに改名)の兄弟モデルを、統合して生まれた名前です。伝統的なモデルの改名でしたが3年足らずの短いモデルライフで生産終了となってしまいました。販売チャネルの整理という背景もあるので、モデル単体での失敗という言葉を使うのは憚られますが、成功したとは言い難い例のひとつです。

 いずれにしても改名というのは絶好調のモデルに対して行なう施策ではなく、多くの場合は「古臭い」や「不人気」といったネガティブなイメージを払拭するためにとられる手段といえます。改名によって人気を落としたというよりは改名でも人気回復はならなかったと捉えるべきかもしれません。

 さて、冒頭に記したようにマツダがデミオ、アクセラ、アテンザをMAZDAという名前のモデルに改名したことは、吉と出るのでしょうか、凶と出るのでしょうか。

 マツダ自身は改名の経験が豊富で、その知見は今回にも活かされているはずです。アクセラにしても実質的にはファミリアからの改名ですし、アテンザはカペラの改名といえます。そのいずれもが、ブランディングとしては成功してきたといえます。その前にもルーチェをセンティアに改名して成功したということもありました。そして、今回の改名は、1990年代にマツダが実施した5チャンネル化の縮小に合わせて、ユーノス800をミレーニアに改名したというような、少々後ろ向きな変更とはちがいます。

 さらに重要なのは、MAZDA+数字という名前は従来の単体車種における改名とは意味合いが違うということです。それぞれに新規の名前を与えたのではなく、グローバルネームに統一しているのです。こうした改名はマツダというブランドに対する改革であり、単独車種での販売実績をもって評価することはミスリードになってしまうでしょう。これまで進めてきた魂動デザインによるラインアップの統一性の延長にある施策です。たとえば、デミオからMAZDA2に変えたことにより前年比で販売台数がどれだけ変わったというデータで云々することに意味はないでしょう。数年先、ユーザー層の変化まで見て評価すべき、大胆なリブランディングといえます。