●加藤浩次の助言で自由な笑いに「楽になった」

お笑いコンビ・平成ノブシコブシ吉村崇が、マルチな才能で存在感を増している。かつては“破天荒キャラ”として注目を集めていたが、今ではMCとして進行を務めたり、ひな壇でもほかの共演者にツッコミを入れて盛り上げたり、全体を左右する重要な役割を番組やイベントに合わせて器用にこなす。さらに、吉本芸人によるボーイレスクショーの座長としても奮闘中だ。

そんな吉村に自身のキャラや役割について話を聞くと、「破天荒は捨てました!」と宣言。時代の変化、そして、求められる役割の変化に適応させてきたそうで、現在の自身の役割について、全体を円滑に回す「潤滑油」「成立屋」と表現した。また、現在の芸風に影響を与えたという極楽とんぼ・加藤浩次の言葉も明かしてくれた。

――幅広く活躍されていますが、芸人としての目標を教えてください。

よく言っている理想は、“僕を目指して芸人をやる人”か“僕を見て芸人をあきらめる人”、そういう人が出てくる存在になりたいんです。どっちかに影響があるというのは目指しているところです。

――どちらにせよ影響力がすごい人ということですね。

それと、芸人が難しく考えるようになっちゃったんですよ。「お笑いとは」っていうのを突き詰めるようになってしまって、僕は北海道出身でその文化に育っていなかったので、下ネタも変顔も、そういうのも笑っていたなって。芸人がお笑いを小さくしないようにしようかなと思っています。

――先日テレビ番組で、同じ北海道出身の加藤浩次さんについて「恩があって好きなんです」とコメントされていましたが、加藤さんへの“恩”について具体的に教えてください。

加藤さんが若い時から一緒にやってきた方に比べたら薄いかもしれないですけど、過ごしてきた時間は濃厚で、飯を食いに行ったり、いろんなイベントや番組を一緒にやったり。そういった時間もそうですが、ほっとしたというか、加藤さんのこの言葉があって楽になったなっていうことがあったんです。

――それはどんな言葉だったのでしょうか?

テレビに出たくて、売れたくて、コントの大会や漫才の大会とか、いろいろネタをやっていたんです。そのとき加藤さんと飲みに行ったら、「お前、北海道の人だから、コントとか漫才とか別に見てなかっただろ」って言われて、「あ、そっか」って。確かに、北海道は新喜劇やっているわけではないですし、ネタの大会があるわけでもなく、ドッキリとかを見てきたんです。そうだよなって思ってちょっと楽になって、いろんなものを見るようになって視野が広がったら今の感じになったので、恩恵はありますよね。

――ネタに縛られない自由な笑いということですね。

そうですね。加藤さんのコンビのネタもたまに見ますが、ひどいですからね!(笑) 何も決めずにやったり、なんだこの時間はっていうときもありますけど、最後はバーンって盛り上がって帰っていきますから。こういうこともありなんだって。

●“破天荒”は「世の中が求めていない」と痛感

――そういった経緯で“破天荒キャラ”が生まれたのかなと思いますが、最近はそのイメージからも変わってきて、全体の盛り上げ役、まとめ役のようなイメージが強いように感じます。

破天荒って今の時代違法なんですよね。コンプライアンスどころではなく、法に引っかかるくらいのレベルになっちゃっているので、捨てました! この間、生ごみの日に(笑)。今の時代に合わせて。

――今の時代において、破天荒は受け入れられないと痛感した具体的な出来事がありましたら教えてください。

昔は車をぶつけて笑っていたのが、今はダメなんだなって。ネットの番組も厳しくなってきているようで、媒体ではなく世の中がそれを求めていないんだと感じました。ネタをやっていても、昔は「じじい」「ばばあ」って言ったらウケていたのが、今はウケないんですよ。みんなが優しくなったっていうのと、その世代の人たちが見るようになったんだと思います。

――最近はMCとしても活躍されていて、必然的に求められる役割が変わってきたというのもありそうですね。

MCとか回しで破天荒っていうのはなかなか難しいですよね。本物の破天荒も見ちゃったから。山根(明)会長とか(笑)

――山根会長と比べていたんですか!? でもやはり、全体をまとめるという役割を意識されるようになったということでしょうか?

そんなこともないですけど、役割がそういう役割なので。何でも屋さんですね。この人の企画を成立させるとか、水と油の性格の人たちを同じ舞台に立たせて円滑に回すとか、成立屋! 潤滑油! ローション! って感じじゃないですか!?

■プロフィール

吉村崇

1980年7月9日生まれ、北海道札幌市出身。2000年に同じく北海道出身で東京NSC5期生の徳井健太とお笑いコンビ・平成ノブシコブシ(旧名コブシトザンギ)を結成。フジテレビ『ピカルの定理』、『ノンストップ!』、テレビ朝日『しくじり先生 俺みたいになるな!!』、『くりぃむクイズ ミラクル9』など、数々のテレビ番組で活躍し、ニホンモニターの調査による「テレビ番組出演本数ランキング」で上位にランクインするように。2017年に吉本芸人によるボーイレスクショー「Butterfly Tokyo」を立ち上げ、プレゼンター「T.YOSHIMURA」としても活躍している。