●そもそもサポート終了で何が問題なの?

2009年にリリースされて以降、長きにわたって人気を保ち続けてきたWindows 7ですが、その延長サポートが2020年1月14日に終了します。これにより、同日以降はWindows 7向けセキュリティ更新プログラムなどの提供が行われなくなります。

サポート終了でただちにパソコンが使えなくなるわけではありませんが、そのまま使い続けるとサイバー攻撃のリスクにさらされる可能性が高まり非常に危険。それを避けるためにも、できるだけ早くWindows 10に移行したいところです。

Windows 10に移行するには、パソコン自体はそのままでOSのみアップグレードする方法と、パソコンごと買い替える方法があります。短期的にみると安上がりなのは前者ですが、Windows 10が正式リリースされてすでに4年が経っていることを考えると、現在使用しているWindows 7搭載パソコンはパーツの劣化が進んで故障しやすくなっているはず。加えて、CPUやGPU、ストレージなどのパーツは4年前から大きく進化しているため、これを機にパソコン全体を買い替えたほうが結果的に安くつく場合も多いと思われます。

買い替えの際に問題となるのが端末に保存しているデータの移行です。ここでは、個人ユーザーがWindows 10搭載パソコンに買い替える際に移行すべきデータと、その移行方法などをQ&A形式で紹介していきます。

○Q1:Windows 7の延長サポートが終わると何が問題なの?

データ移行の説明の前に、Windows 7の延長サポートが終了すると、どうしてPCを買い替えたほうがいいのかを先に説明しておきます。

現在、マイクロソフトはWindows 7のリリース以降に発見されたプログラムの不具合やセキュリティ上の問題点を修正するため、随時セキュリティ更新プログラムを提供しています。こうしたプログラムを適用することで、Windows 7搭載パソコンが一部のマルウェアに感染したり、不正アクセスの被害にあったりすることを防ぐことができます。

しかし、延長サポートが終了するとセキュリティ更新プログラムも提供されなくなり、新たな不具合や脆弱性が発見されても修正が行われません。そのため、それらの不具合を悪用したマルウェアや不正アクセスの被害を受けやすくなります。

実際、2017年には世界中の数十万台に及ぶコンピューターが「WannaCry」と呼ばれるランサムウェア(マルウェアの一種)に感染し、身代金として仮想通貨ビットコインを要求されるという事件が起きています。その際、被害にあったのはセキュリティ更新プログラムをインストールしていないコンピューターやサポート終了済みのコンピューターがほとんどでした。

事件を受けて、マイクロソフトはサポート終了済みの古いOSにもセキュリティ更新プログラムを臨時提供しましたが、このような措置はあくまでも例外的なもので、通常は行われません。個人ユーザーとしてはサポート期限に余裕のあるOSを使うことが最良の対策となるわけです。

○【ミニTips】Windows 7搭載PCは何台くらい稼働してるの?

Windows 7のサポート期間は、2009年10月のリリースから10年を迎えようとしています。日本マイクロソフトに尋ねたところ、Windows 7搭載PCの稼働台数は、2019年3月末現在で約1,000万台が稼働しているといいます(個人向けのみ)。Windows 10が登場した2015年から徐々に減ってきていますが、先進国の中ではまだWindows 7ユーザーは多いとのこと。

●Windows 10搭載PCに移行すべきデータは?

○Q2:新しいPCを買ったら、どのデータを古いPCから移すべき?

Windows 7からWindows 10に乗り換える際、移行すべきデータは大きく分けて次の3種類あります。

●自分でパソコンに保存したファイル

●アプリケーションの設定やデータ

●普段使っているアプリケーション

このうち「自分でパソコンに保存したファイル」は、デジタルカメラから取り込んだ写真や自分で作成したWordやExcel、PowerPointなどの文書、CDから取り込んだり音楽配信サービスから購入したりした音楽ファイルなどです。これらのデータは替えがきかないものなので、忘れず移行するようにしましょう。

「アプリケーションの設定やデータ」は、Webブラウザのお気に入り(ブックマーク)やメールのアドレス帳、受送信したメッセージデータ、日本語入力のユーザー辞書、普段使っているアプリの個人設定などです。そのなかでもブラウザのお気に入りやメールのメッセージデータなどは失うと復元が難しいものなので、確実に移行したいところです。

「普段使っているアプリケーション」は、パソコンにインストールして使用しているビジネス統合ソフトや年賀状ソフト、写真編集ソフト、ゲーム、ユーティリティなどのアプリケーションのことを思い出してみてください。

Windows 10では、多くのアプリをMicrosoft Storeというアプリストアから入手できるようになっています。今まで使っていたアプリや必要なアプリがMicrosoft Storeにある場合は、そこからインストールするのがいちばん楽な移行方法。もちろん、インストールメディアやインストーラーが手元にあり、Windows 10に対応している場合は、従来のようにセットアッププログラムを使用してインストールすることも可能です。

○【ミニTips】Windows 7から10への移行、ユーザーの声は?

10年の長きにわたり提供されてきたWindows 7。延長サポート終了にあたり、どんな質問が届いているか日本マイクロソフトに尋ねたところ、Windows 10への移行に関するユーザーからの質問は「実はかなり少ない」との回答でした。また、その内容は「買い替えたいがどうしたらいい?」「Windows 10を使いたいがどうすればいい?」など漠然とした質問が多いとのことで、同社は売り場の工夫や延長サポート終了の周知を強化していくといいます。

●今のPCに保存しているデータを移すには?

○Q3:音楽や画像データ、ドキュメント系はどうすればいいの?

自分で作成したデータを移行するには、次のような方法があります。

●OneDriveを使ってデータを移行する。

●OSの標準機能「バックアップと復元」を使う。

●外部記憶装置を使って手動でデータを移行する。

○その1:「OneDrive」を使う

新旧のパソコンがインターネットに接続されている環境で、データの容量が5GB以内(Office 365ユーザーの場合は1TB以内)であれば、マイクロソフトのクラウドサービス「OneDrive」を使うのがいちばん手軽な方法です。

なお、保護の対象から外れているフォルダーに保存しているデータがある場合は、OneDriveを設定する前にそのデータを「ドキュメント」や「デスクトップ」などの同期対象のフォルダーに移動しておきましょう。

注意したいのは、OneDriveの無料ユーザーの場合は同期できるデータの容量が5GBまでに限定される点。5GB以上のデータを移行したい場合は次に記す方法を利用します。

○その2:「バックアップと復元」を使う

移行したいデータの容量が大きい場合は外部ストレージを利用するほうがスムーズ。OSの標準機能「コントロールパネル」の「バックアップと復元」を使えば、手軽に必要なデータを移行することができます。

○その3:手動でデータを移行する

Windows 7搭載パソコンに外部記憶装置をつないで、手動でデータを移行することもできます。自分で必要なデータをひとつひとつ確かめながら移行したい場合や、パソコンの内蔵ドライブのパーティションを分けてCドライブ以外にデータをまとめて保管している場合などはこの方法が便利です。

○【ミニTips】お引越しソフトって便利なの?

自分でひとつひとつデータを移行していくのが手間ならば、ストレージ内のデータを他のPCへまとめて移行するデータ移行ソフト(例えばAOSテクノロジーズの「ファイナルパソコン引越し」やAcronisの「Acronis True Image 2019」など)を使う手も。日本マイクロソフトに聞いたところ「データを丸ごと移行したい場合は、引越しソフトの利用も勧める」とのこと。ソフトの利用は、特に移行データの多いSOHOやビジネスユースの人に適しているといいます。

●ブラウザの「お気に入り」はエクスポートできる?

○Q4:IEからEdgeにお気に入りを移す方法は?

Windows 7搭載パソコンの場合、WebブラウザとしてInternet Explorerが標準搭載されていますが、Windows 10ではMicrosoft Edgeが標準ブラウザとなっています。前者から後者にお気に入りを移行するには、次の手順を実行します。

なお、Windows 7搭載パソコンでGoogle ChromeやMozilla Firefoxを使用している場合は、それぞれGoogleアカウントやFirefoxアカウントを使って同期するのがもっとも簡単です。

○Google Chromeの場合

Google Chromeのブックマークは、標準の同期機能を使えば、新しいパソコンでもブックマークを同期できます。Windows 7搭載パソコンでGoogle Chromeを起動し、Chromeにログインし、同じようにWindows 10搭載パソコンでGoogle Chromeをインストールして起動。同じアカウントでChromeにログインするとブックマークなどをまとめて移行することができます。

○Mozilla Firefoxの場合

Mozilla Firefoxでも、同じく標準の同期機能が役立ちます。Windows 10搭載パソコンでFirefoxをインストールして起動し、同じアカウントでSyncにログインするとブックマークなどをまとめて移行することができます。

○【ミニTips】PCの買い替え時のポイントは?

Windows 10搭載PCを新しく買い替えるにあたり、最新のPCを選ぶポイントはどこでしょう。日本マイクロソフトに尋ねたところ、買い替えのポイントは量販店などで「実際に手にとって製品をみるのがとても重要」だそうです。「多くのユーザーは数年前のPCを使っているので、最新PCの薄さや軽さ、起動時間の速さなどを、実際に触って体感することが大事です」とのことでした。

●今まで受信したメールは移行できる?

○Q5:メールのデータはどう移せばいい?

WebメールサービスのOutlook.comやGmailなどを使用している場合は、特別な移行手続きは必要ありません。それぞれWebブラウザでアクセスしてログインすれば以前と同じように使用できます。

問題となるのは、インターネットプロバイダーのメール。Windows 7には標準のメーラーが搭載されていないため、多くのユーザーは自分好みのメーラーを別途入手してプロバイダーメールを使用しているはずです。代表的なメーラーとして、Microsoft Officeに付属するOutlookや、Mozilla Thunderbirdなどがありますが、それぞれデータの移行方法は異なります。

●Outlookのサポートページ

※Outlookヘルプセンターの「管理」の「インポートとエクスポート」を参照

●Mozilla Thunderbirdのサポートページ

※ヘルプトピックの「インストール、移行、更新」を参照

このほか、以前無償で配布されていたWindows Essentials 2012に含まれていたWindows Liveメールを使用している人も少なくないでしょう。ただし、Windows Essentials 2012はすでに配布およびサポートが終了しており、Windows 10での使用も推奨されていません。そのため、Windows 7上でOutlookやThunderbirdなどのメーラーに乗り換えた上で、そのデータをWindows 10に移行するのが一般的な方法になります。

ここでは、一例としてWindows LiveメールからOutlook(Windows 7で動作する最新版のOutlook 2016)に移行する方法を紹介します。

これで、メッセージのエクスポート画面で「すべてのフォルダー」を選択して「OK」すると、エクスポートが開始されます。Outlookの画面を確認すると、メールのデータが移行されているはずです。あとはOutlookのサポートページなどを参考にしながら新しいPCにメールデータを移行してみてください。

○【ミニTips】Windows 10でセキュリティソフトって必要?

Windows 10標準搭載のマルウェア対策ソフト「Microsoft Defender」はWindows 7搭載のものより強固になっています。日本マイクロソフトに尋ねたところ、「ほぼリアルタイムで新マルウェアへの対策が行え、最低限のセキュリティは保たれる」といいます。ただ、セキュリティベンダーによるセキュリティソフトは、ペアレンタルコントロール(保護者機能)の搭載など高機能なため、「より高度な設定をする人にはあったほうが便利」とのことです。

●日本語入力のユーザー辞書も移行したい!

○Q6:日本語入力のユーザー辞書を新しいPCに移行したい!

日本語入力にOS標準のMicrosoft IMEを使用している場合は、次の手順でユーザー辞書を移行できます。

○【ミニTips】Windows 10のバージョンって何?

Windows 10は、これまでのWindows XPやWindows 7と違い、OS自体が大型のアップデートを繰り返して進化していきます。名称は「Windows 10」のままですが、2015年7月にリリースされた初期バージョン「バージョン1507」(コードネーム:Threshold 1)と、2018年11月にリリースされた「バージョン1809」(コードネーム:October 2018 Update)の間には、5回の大型アップデートがあり、多くの機能が改善されています。5月23日時点では、最新版「バージョン1903」(コードネーム:May 2019 Update)も入手できます。

JEITAのWindows 7の延長サポート終了に関する注意喚起では、Windows 10のバージョンアップのほか、Windows 10への移行に関するPCメーカーのサポート情報などが詳しくまとめられています。また、日本マイクロソフトによると、Windows 10リリース時に展開された無償アップグレードのようなキャンペーンは行わないものの、今後、移行に関する乗り換えキャンペーンは行う可能性があるといいます。

●普段使っているアプリはどう移せばいい?

○Q7:Windows 7で使っていたアプリは移行できる?

無料アプリの場合は、まず日本マイクロソフトのストア「Microsoft Storeにあるか検索してみましょう。アプリが見つかった場合は、その詳細画面で「入手」をクリックすることで簡単にインストールすることができます。TwitterやLINE、iTunesなどの人気アプリもMicrosoft Storeで入手することができます。手順は次の通りです。

目的のアプリが見つからなかった場合や有料アプリの場合は、インストールCDやインストールDVD、アプリの公式サイトからダウンロードしたインストーラーなどを用意しましょう。Windows 10非対応でも、よほど古いアプリでなけば起動はすると思いますが(サポートは別)、アプリがWindows 10に対応しているか、動作環境も確認するといいでしょう。

Windows 10に対応していれば、従来通りセットアッププログラムを実行してインストールすることができます(有料アプリの場合、Microsoft Store版は従来版とはライセンスが別になっていることがあります。その場合、従来版のライセンスを持っていてもMicrosoft Store版を使うには別途購入する必要があるので注意しましょう)。

○【ミニTips】Windows搭載PCの買い替えサイクルは?

Windows 10登場直前にWindows 7搭載PCを買った人は、まだ4年弱とWindows 10搭載PCに買い換えにくいかもしれません。一般的なPCの買い換えサイクルはどのくらいなのか、日本マイクロソフトに尋ねたところ、最近のPC買い替えサイクルは「約7年」と長めでした。ひとつのものを長く使う背景には「日本の文化として『よいものを長く使う』傾向があるため」と同社は分析しています。

●インストールしたアプリがWindows 10で動かない?

○Q8:Windows 10でアプリが動かないことはある?

まずは、そのアプリの開発元の公式サイトなどで最新のアップデートプログラムが配布されていないかどうかを確認し、ある場合はアップデートしましょう。

アップデートが用意されていない場合や、事情があって古いアプリを使い続けたい場合などは、次の方法を試してみましょう。

この方法で必ず問題が解決するというわけではありませんが、運よくアプリが動作する場合も。試してみる価値は十分あります。

○【ミニTips】今まで使ってきたアプリ、Windows 10で動く?

Windows XP時代は大量のデータや設定などを移行していると丸1日かかったことも。アプリの移行に関して日本マイクロソフトに尋ねたところ、「Windows 7から10へ移行して動かなくなるアプリはほとんどない」という回答でした。「基本的には動くはず。Windows 10をリリースして4年、対応するアプリも増えている」とのこと。米Microsoftでは、大手ベンダーによるアプリを中心に、そのアプリがWindows 10で動くかどうかをチェックできる動作確認サイトを公開しています。