高齢化社会となった日本において、「介護」は大きな社会問題となっている。
とりわけ現在、対応が遅れているのが「介護施設」の改善と効率化である「介護施設ソリューション」だ。

実は今、NTTドコモが、この「介護施設ソリューション」に取り組んでいる。

介護分野は、NTTドコモが、もっともアプローチできていない分野のひとつでもある。
それゆえに、
NTTドコモが介護? 
と、イメージできないという人も多いのではないだろうか?

介護に対する社会的なニーズは国内だけでなく、2015年の国連サミットで採択された2016年から2030年までの国際目標である「SDGs」など、世界的にも機運が高まっていることから介護分野への参入を決めたという。
さらの総務省から発表された携帯電話・スマートフォンの安全性から医療分野への進出が可能になったことも要因にはあるのだろう。

今回は、そうした我々が知らない「介護施設ソリューション」に取り組むNTTドコモを紹介する。

NTTドコモは、2019年の今年、介護業界最大級となる展示会「CareTEX2019(ケアテックス) 」において、同社初となる大規模な「介護施設ソリューション」のブースを展開した。ひときわ大きなドコモブースには数多くの来場者が訪れていた。


天井がハート型のNTTドコモブース

■「介護車」の運転の評価や指導、事故対応もクラウド管理する「docoですcar」
「docoですcar」は、2017年4月からスタートした自動車での運行の安全と効率化を図るサービス。
これまでは営業車での注意喚起や運行管理での支援として、これまで2,300社以上で利用されており、累計台数は2万台を超えている。

そこで近年、介護施設での送迎車のドライバーも高齢化にともない、事故の軽減と効率化をはかるために「docoですcar」を介護施設でも活用しようという試みだ。
「docoですcar」では、
・事故削減
・業務効率化
・コスト削減
・コンプライアンス遵守
などが期待できる。

また「docoですcar」を導入すれば、通信機能を搭載した高性能ドライブレコーダーが利用できるため、ドライバーの運転診断や運転の記録も可能となる。


「docoですcar」のドライブレコーダー。


事故の状況をクラウドのデータですぐに確認できる。

介護車は、通常の運転に比べて、安全でスムーズな運転が求められる。
その点でも「docoですcar」の通信型ドライブレコーダーには加速度センサーが内蔵されており、ドライバーの運転を記録し、高齢化するドライバーの運転の評価と改善を促すことが可能なのだ。

費用は、
・ドコモ通信型ドライブレコーダー 3万5,000円(税別)
・docoですcar Safety 1万2,000円(税別)※1台あたりの金額
※管理者ID追加 6,000円(税別)/年 ※1IDあたり


■介護者の移動歩数を4割軽減する見守りカメラ「みまもりCUBE」
「みまもりCUBE」は、オールインワンの防犯・見守りカメラ。
「みまもりCUBE」を介護施設で利用することで、入居者の行動をいち早く確認できるため、介護者の無駄な移動など負担や時間のロスを軽減できるという。


「みまもりCUBE」からの情報をネットで確認できる。

「みまもりCUBE」は、カメラ、マイク、スピーカー、LTE通信機能を搭載している。
これまでの防犯カメラとは異なり、特定の状況を設定しておけば、独自の認識機能で自動的に検知して通知することができる。
たとえば介護施設で、
・ドアを開けて出て行く姿=徘徊
このように定義すれば、入居者がドアを開けて出て行こうとすれば、徘徊と認識し、介護者のスマートフォンに知らせが届くというわけだ。

現在、介護負担の軽減のため、北九州市や介護施設と共同で実証実験を行っており、
「みまもりCUBE」で介護者の歩数を4割も減らすことができたという。


検知機能で、確認映像の頭出しも簡単にできる。

NTTドコモではRAMROCK社とともに、「みまもりCUBE」を介護施設で展開するため、
・複数台パッケージ
・専用のサーバー
これらを開発し販売をしている。


「みまもりCUBE」5台の映像を確認することもできる。

■介護施設の効率化を目指す「ケアマネジメントプラットホーム」
「ケアマネジメントプラットホーム」は、介護業務そのものを効率化する。
具体的には、
IoTセンサーによる見守り
・スマートフォンによる介護記録
この2つを組み合わせたサービスだという。

IoTセンサーによる見守りとは、
介護施設で入居者の状態を常時モニタリングする。
こうすることで、介護者は見まわるための移動での負担や時間を軽減することができる。

スマートフォンによる介護記録とは、
・申し送り情報
・バイタル情報の記録
こうした入居者の情報をスマートフォンアプリで記録し、チームで共有することで引き継ぎなど、介護記録に関わる時間を短縮することができる。


介護業務の効率化を目指す「ケアマネジメントプラットホーム」。

現在の介護施設は、「介護施設ソリューション」の導入がまったくと言ってよいほど進んでいないという。

そのため、
・入居者のバイタル情報を記録
・ノートに書きうつして、規定フォーマットに入力
・同じ内容を介護記録にも記入
・さらに介護記録用のソフトウェアに入力する
このように、同じ作業を2度、3度と行なう必要がある。
さらに看護師に申し送りする場合は、そこからメモをとる必要もあるという。

「ケアマネジメントプラットホーム」を導入できれば、情報の共有化での負担を大きく軽減できるのは間違いない。

NTTドコモでは、現在「ケアマネジメントプラットホーム」は実証実験の段階だが、ゆくゆくは商用化を目指しているという。

介護現場での「介護施設ソリューション」普及が遅れてきたのは、スマートフォンなどの通信機器とペースメーカーなどの医療との干渉が懸念されてきたことも、要因としてある。

しかし現在は、総務省からもスマートフォンの安全性について発表もあり、介護現場で使用しても問題がない状況にある。

今後は、スマートフォン・携帯電話のNTTドコモだけでなく、
「介護事業のNTTドコモ」
そう認知さるのも、遠い話ではないだろう。


ITライフハック 関口哲司