通信料金と端末代金が一体となっていた、従来までの料金プランを廃止する方針を公表した政府。ところがこの「完全分離プラン」導入時に、MNO事業参入を目指す楽天が除外されるのではという報道があり、業界に波紋が広がっています。政府が考えている完全分離プランの“対象外”とはどこまでなのか? ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』にて、この問題の注目すべき点を解説しています。

「完全分離プラン、楽天は除外」報道で混乱━━石田総務相「対象外は極めて限定」の真意はどこに

3月20日、一部で「総務省が、完全分離プランを導入する際、楽天だけは除外する方向で検討している」と報じた。

しかし、ITmediaの田中聡編集長が総務省の総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課に問い合わせしたところ「事実無根。3月5日に(電気通信事業法の改正案を)国会に提出したばかり」として、即座に否定されていた。

注目が集まったのは22日の石田総務大臣の定例会見だ。

楽天の除外についての質問で、石田総務大臣は「法案では、完全分離の対象について、競争への影響が少ない携帯電話事業者は、省令で定める基準により除かれることとしておりますけれども、法案はこれから国会でご審議いただく段階でございます。現段階で具体的に基準を検討している事実はございません。ただ、一般論として申し上げれば、通信料金、端末代金での競争をそれぞれ促進するためには、広く完全分離を適用することが必要でありまして、対象外となるものは極めて限定的とすると考えております」との回答だった。

ここで気になるのが「対象外」が、どこまで適用されるのかと言う点だ。

新規参入し、ユーザーがゼロの状態からスタートする楽天を「競争への影響が少ない事業者」と捉えることも充分に可能だろう。しかし、一方で、すでにMVNOで100万以上のユーザーを抱え、そうしたユーザーをMNOに移行する計画をたてており、他のMVNOにとって驚異的な存在と考えれば、「競争への影響がある携帯電話事業者」として位置づけることもできるだろう。

いかにもお役所的なあいまいな表現に終始していることもあり、この言葉だけでは判断が難しいと言える。

ただ、楽天が完全分離プランから除外され、端末購入時の通信料金の割引、契約期間拘束が提供できるとなれば、他の3キャリアからの反発は必至だろう。もちろん、行政が市場の公平な競争をゆがめる施策を展開する事に対する反論も相次ぐのは間違いない。

ただし、仮に楽天が除外されたとして、楽天としては、3キャリアと比べて低い料金プランを提供しつつ、端末に対しても高額な割引を適用し続けるというのは、経営的に無理が生じるはずだ。高額な通信プランだからこそ、端末の大幅な割引が適用できるのであって「低料金で端末も大幅割引」というのは、いずれ破綻するのが見えている。

今回の「対象外となるのは極めて限定的」という言葉遣いに対して、小林史明元総務省政務官は「ポケトークなどのIoT系などでは」というツイートをしていた。確かにこうした機器では端末代金と通信料金が一緒で販売していることも多い。

果たして「対象外」にはどこまで含まれるのか。今後の国会の行方が気になるところだ。

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