アジアカップの開幕を前に、日本サッカー界に驚きが広がった。1月8日、楢粼正剛と中澤佑二が現役引退を明らかにしたのだ。Jリーグと日本代表を牽引してきた経験者では、川口能活小笠原満男を含めた4人が、相次いでピッチから去ることになる。

 いずれも実績を積んできた選手だ。自らの引き際を決める権利が、彼らにはある。クラブやカテゴリーを変えたり、時間を限ったりすればまだまだ十分にできるはずだが、こればかりは本人の気持ち次第だ。決断は尊重されなければならない。それにしても、ワールドカッププレーヤーが同じタイミングで4人も現役引退となると、率直に寂しさは募る。

 同じタイミングは、偶然ではないのかもしれない。クラブでは対戦相手の選手として、日本代表ではチームメイトとしてともに戦ってきた選手たちは、お互いの存在を支えにしているものだ。「アイツが、あの人が、頑張っているんだからオレも」といった思いが、ときに挫けそうな心を奮い立たせる。

 盟友の引退に驚き、衝撃を受けたのは、他でもない彼らだったかもしれない。他人事ではなかっただろう。恩師や家族、ファン・サポーターと同じくらいに大切な心の支えを、失ってしまったような感覚に陥ったのではないだろうか。

 同時に、彼らは日本サッカーの「これから」を考えてもいたのではないかと思う。直接的なもので言えば、自らが退くことで後進に道を譲る、ということである。

 ピッチに立つ時間が限られていたとしても、彼らの存在はクラブにとってかけがえのないものだ。代わりは見つけられない。喪失感は大きい。だが、それがまた後に続く者の自覚や成長を促すところはある。

 もう少し距離を広げれば、これまでとは立場を変えた日本サッカー界への貢献である。指導者になるにせよ、フロント入りするにせよ、解説者としてマイクの前に立つにせよ、彼らの行動や言葉には確かな説得力がある。その影響力が、これからはより広範囲にもたらされる。

 時代を彩った彼らのような選手の引退は、とても、とても、感傷的な気持ちを呼び覚ます。だが、現役引退はセカンドキャリアのスタートである。これから先の活躍を期待したいし、彼らなら確かな貢献をしてくれるはずだ。