by Greg Rakozy

宇宙について語る上で欠かせないのが「地球外生命体は存在するか否か」ですが、そんな地球外生命体が存在するとすれば、分厚い氷の下に閉じ込められている可能性があると科学系ムービーをアップするYouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しています。

Aliens under the Ice - Life on Rogue Planets - YouTube

自由浮遊惑星とは、惑星程度の質量であるものの、恒星や褐色矮星、あるいはその他の天体に重力的に束縛されておらず、銀河を直接公転している天体を指します。いわば、自由浮遊惑星は暗くて広大な宇宙空間をひとりで気ままにさまよう惑星です。



自由浮遊惑星が漂う宇宙空間には季節という概念がありません。また、昼と夜の区別もつかないような真っ暗闇を漂い続ける可能性も十分にあります。その場合、天体の表面が暖められることはないため、カチコチに凍りついている可能性もあります。



しかし、そのような自由浮遊惑星が、銀河の端っこから地球外生命体を運んでくる可能性があります。



自由浮遊惑星(Rogue Planets)と呼ばれる天体には、異なる特徴を有するものが存在します。



例えば、準褐色矮星(Sub-Brown Dwarfs)は崩壊するガス雲から形成される天体で、褐色矮星の弟のような存在です。ただし、「惑星になり損ねた星」とも言える存在。



他にも、地球のような「地球型惑星(Terrestrial Planets)」が自由浮遊惑星となるケースもあります。



惑星系の形成過程で質量の小さな原始惑星が系からはじき出される形で自由浮遊惑星ができると考えられています。



この際、原始惑星は互いに軌道が接近し、質量が大きなものが小さなものを吸収したり、別の惑星が衝突したりすることもあります。



また、質量の大きな惑星(左端)が質量の小さな惑星の軌道に近づき過ぎると……



質量の小さな惑星が系から外れて……



はじき出されてしまうケースもあります。



惑星系の形成時に系からはじき出されなかったからといって、安全であるとは限りません。



惑星系は他の巨大な天体やブラックホールにより簡単に乱される可能性があるからです。



これらをふまえると、宇宙空間で誕生する天体の約半数が自由浮遊惑星となる可能性があります。



科学者たちの中には「宇宙空間で誕生する天体の約半数が自由浮遊惑星となる可能性がある」という説に反対する人もいますが、地球を含む天の川銀河だけでも、少なくとも何十億もの自由浮遊惑星が存在すると考えられています。



そんな宇宙に無数に存在する自由浮遊惑星のほとんどは、同じ運命をたどります。



どういった運命かというと、日ごとに小さくなっていき、それに伴い天体表面の温度が急速に低下し、マイナス270度程度まで冷えてしまうというもの。そんな自由浮遊惑星が海を持っていた場合、海面は地盤のようにカチカチに凍ります。大気を持つ場合も、温度の低下により空気が凍りつき、結局は天体の表面に氷の層を形成することになるとのこと。



しかし、この氷の層が「生命の避難所となる可能性がある」とKurzgesagtは指摘しています。



これが一体どういうことかを理解するために、「自由浮遊惑星となった地球」を想像してみましょう。



地球が太陽から離れて自由浮遊惑星となった場合、地球は暗い宇宙空間を浮遊することとなるので、太陽エネルギーがほとんど届かなくなり表面の温度は急激に低下します。



生命にとって不可欠な要素のひとつが「液体の水」です。「水は『物質』と『エネルギー』という重要な2つの要素を兼ね備えているため、生命のような興味深い化学変化を起こすことができる」とKurzgesagt。よって、我々人間の暮らす地球は、海の少なくとも一部を液体の水として維持できるように十分に暖かくなければならず、そのためには多くのエネルギーを必要とします。





しかし厄介なことに、地球のエネルギー収支の約99.97%は太陽由来のものです。



つまり、架空の「自由浮遊惑星となった地球」が存在する場合、その星は太陽由来のエネルギーを取り除いた0.03%の「地球由来のエネルギー」のみで生命を育まなければいけなくなるわけです。



その時重要になってくるのが、地熱です。



地球の核は太陽の表面と同じくらい熱い巨大な金属球です。この核は、非常にゆっくりと凝固していく過程で、多くの熱を放出します。



核が高温であり続ける限り、地球は地熱エネルギーを地表へと送ることが可能となり……



その結果、生命に欠かせない「液体の水」を作り出すことが可能になります。



惑星の核が冷えて固まるまでに、何十億年という膨大な時間がかかるため……



これだけの時間があれば「自由浮遊惑星となった地球」で人間のような知的生命体が繁栄するには十分なのでは、とKurzgesagt。



また、もしも「自由浮遊惑星となった地球」が非常に高密度で高圧の水素ガスを持っている場合、ガスは凍らず、惑星から逃げようとする熱を十分に閉じ込める働きをするため、惑星表面まで液体の海が存在することが可能になります。



その他、自由浮遊惑星が地球で言うところの「月」を持っている場合、海が凍りづけにならずに済むくらい暖かい気温の惑星になる可能性があります。



自由浮遊惑星が月のような衛星(もしくはそれ以上の質量の衛星)を持つ場合、衛星が十分に大きければ潮力が生まれ、「自由浮遊惑星となった地球」単体では得られない追加のエネルギーを得ることが可能になります。この潮力は天体に少しずつ矢印方向の力をかけるため、パンの生地をこねるように惑星全体を暖かく保つ助けになる可能性があるとのこと。



しかし、「自由浮遊惑星となった地球」が生命を持つ最も可能性の高いシナリオは……



厚さ1km以下の氷の下に液体の海がある場合です。



人類は既に太陽系でこの条件に当てはまる惑星を複数観測しているため、馬鹿げた仮定ではありません。



それでは、暗く冷たい海の底で生命はどのように生きることとなるのでしょうか。



地球の真っ暗な海の奥深くの場合……



火山活動する地域にはブラックスモーカーと呼ばれる熱水噴出口があります。ブラックスモーカーは地球のマントルから熱水および鉛・亜鉛・銅・鉄などの硫化物を排出し、これが海水と反応して黒色に変化します。



そしてブラックスモーカーから排出されたミネラルを摂取し……



バクテリアが有機物を生成します。



この有機物を、甲殻類や二枚貝、カタツムリ、魚、タコ、ワームといった生物がエサとします。ブラックスモーカーのような熱水噴出口は信じられないほど多様な生物群の居住地となるだけでなく、何十億年も昔の「地球上における生命のスタート地点」である可能性すらあるというわけです。



これに対して「自由浮遊惑星となった地球」の海底の場合……



地球の海底と同じような反応が起き、人間の想像がおよばないレベルの複雑な生態系が形成される可能性もあります。



また、海面が氷で閉ざされた世界は、「環境が非常に安定する」という利点を持ちます。



なぜなら、隕石やガンマ線が降り注いでも氷の層に覆われているため生物が絶滅する心配はないからです。海面が氷に覆われている場合、惑星の核からのエネルギーがなくならない限り、ほとんど同じ環境を維持可能となります。



そのような環境が存在する場合、最も発見される可能性が高い生命がバクテリアと微生物です。



しかし、生態系を形成するのに十分な時間があれば、より複雑な生物が生まれている可能性も十分にあります。



そして、そのような環境で知的生命体が生まれることは「不可能ではない」とのこと。



ただし、このような環境は、天井には分厚い氷の壁、地面は硬い岩盤が存在するため……



エネルギーを貯蔵するための植物を育てることができません。その結果、木・石油・石炭といった人類がエネルギーを生成するために欠かせない物体が存在しない世界となります。



木・石油・石炭などが存在しなければ、金属を有用な形や物に加工することはできません。



すると、知的生命体であっても石油や石炭のエネルギーを扱えないため、分厚い氷の層を破ることができない可能性が高くなります。



その場合、知的生命体たちは外の世界を知ることはないかもしれず、自分たちの住む惑星だけが世界のすべてと錯覚してしまう可能性もあります。そうなれば、氷の上に信じられないほど広大な宇宙が存在するにもかかわらず、それらを一切知ることなく、何百万もの世代が暗い海の中だけで生き死にを繰り返すこととなります。



そして星の核が活動を停止すると、海が凍り、文明と生態系がそのまま凍りづけとなって残り続ける可能性もあります。



同じように惑星から離れられない生命やそれらが育んできた文明が、凍りづけとなって宇宙の至る所に残っている可能性すらあります。



このような世界が誰も知らないうちに太陽系を通過している可能性をKurzgesagtは指摘。そして、未来のどこかのタイミングでそのような氷で閉ざされた世界に人類が足を踏み入れることになる可能性も十分に考えられる、とムービーを締めくくっています。