現行のフルハイビジョン放送に対して解像度が4倍の「4K」、16倍の「8K」の実用放送が12月1日に始まる。国内各社で対応に濃淡があるが、チューナーと呼ばれる専用の受信機を内蔵したテレビも市場に出てきた。こうした高精細な映像の普及に伴い、一方で関心が高まりそうなのが音質。実際、外付け音響機器や高級スピーカーを搭載したテレビも増えており、音質もテレビの製品競争力を左右しそうだ。

 4K・8K放送の受信には、対応するチューナーが必要となる。放送開始までにチューナー内蔵テレビを発売するのはシャープと三菱電機、東芝。パナソニックやソニーは外付けチューナーなどの販売にとどまる。その中で、チューナー搭載テレビを発売する「積極派」は映像以外の価値も模索している。

 シャープは4Kテレビに加え、世界に先がけチューナー内蔵の8K液晶テレビを17日に発売する。「レコーダーやサウンドバーを含めた8Kワールドを展開する」(石田佳久副社長)と、テレビ以外の商品を含めて8Kの価値を訴求する。

 8K放送では前後左右から立体的な音声が流れる音響技術にも対応する。そこで2019年2月、立体音響に対応した外付けの音響機器を発売する。音にも立体感を持たせ、より没入感を高める。

 三菱電機は10月、チューナー入り4K液晶テレビを発売した。画質のこだわりに加え、レコーダーや最新規格のブルーレイプレーヤーも内蔵。さらに独自の音響技術「ダイヤトーン」によるスピーカーも特徴だ。「高精細の映像に負けないくらい、音もクリア」(担当者)だという。

 これまでメーカー各社は画質に加え、額縁の薄さなどデザイン性を競ってきた。一方、スピーカーの設置スペースが減るといった副作用もあり、音質の向上は必ずしも進んでいなかった。だが今後、4Kや8K映像が普及すれば、高精細な映像に対する音質の落差が気になり、音質へのこだわりが高まる期待もある。

 4K・8K放送の開始後、テレビ販売が伸びても「既にテレビの価格下落が進み、利益が出にくい」(電機メーカー幹部)のが現状だ。画質だけでは差別化が難しい今、音質を含めた総合的な価値を提供できるかがメーカーには求められている。
(文=平岡乾)