リニアの建設に参加する企業には、それぞれが「強み、弱み」がある。目的は、あくまで、
「2027年までにリニア中央新幹線について、東京―名古屋間を開通させること」
 であり、そのために各社やJR東海が話し合い、強み、弱みを加味した上で、担当箇所を決めることの何が問題なのか、筆者には理解できない。失敗が許されないプロジェクトである以上、各企業に得意分野、技術力に秀でた分野を担当してもらうというのは、当たり前の話だと思う(ただし、前述の通り現行法では違法になる)

 事前にプロジェクトにおける担当分野が決まらなければ、各社はその仕事に向けた技術開発や、人材育成ができなくなってしまう。逆に、防衛装備品同様に、各社が事前に技術開発をし、さまざまな準備のためにリソースを費やした挙句、落札できないとなると、「将来のプロジェクトのための投資」が行われなくなってしまう。

 結局、現在の日本では「日本の国防を維持する」「リニア新幹線を開通する」といった、「公共の目的」よりも「カネ、カネ、カネ」が重要とされているわけである。もちろん、一般に流通している自動車などを調達するならば、製品品質は「市場」が保証してくれている。一般競争入札を行い、一番安いところから買えばいい。

 とはいえ、防衛装備品やリニア新幹線の大工事は、絶対に違う。
 このまま「カネ、カネ、カネ」が続くと、わが国の技術力はひたすら衰退する一方だ。「カネ」よりも大切なものがある。それは、モノやサービスを生産する力、すなわち「経済力」であり、経済力の基盤たる技術力だ。さらに、技術力は経験の蓄積によってしか拡大しないという「基本」を、日本国民は思い出す必要がある。

 同時に、技術力強化やプロジェクト推進を妨害している独占禁止法は、早急に改正しなければならないと確信している。早急に改正しなければならないと確信している。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。