7月の会見では自信満々の前澤友作社長だったが…(撮影:梅谷秀司)

10月1日にスタートトゥデイから社名変更し、“第2の創業期”をスタートさせたZOZO。だが、その船出は不安を伴うものとなった。

国内最大のファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するZOZOは10月31日、2019年3月期の中間決算を発表した。売上高は537億円(前年同期比25%増)、営業利益は100億円(同27%減)の増収減益となった。

主力のゾゾタウン事業は出店ブランドも増え、手数料収入が拡大した一方、足を引っ張ったのが今年始めたPB(プライベートブランド)事業だ。同社のPB「ZOZO」の商品は、無料配布中の採寸用ボディスーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」での計測データに基づき、オーダーメード生産に近いかたちで顧客の体型に合ったサイズを届けるのがウリ。今年1月以降、ジーンズやシャツ、ビジネススーツなど商品のバリエーションを拡充してきた。

PBの売り上げ目標は未達に

しかし、4〜9月末までのPBの累計売上高は6.5億円で、計画した約16億円には届かなかった。通期計画の売上高200億円も未達となる可能性がある。ゾゾスーツの開発・仕様変更や、無料配布に伴うコストもかさみ、会社全体の利益を大きく圧迫した。


「また発送が延期されたんですよね」。ZOZOのビジネススーツを7月7日に注文した20代の会社員の男性はため息をつく。同商品が発売された7月3日、前澤友作社長は「(初回受注分は)8月にお届けする」と語っていたが、想定を上回る受注があったためか、男性が注文した時点では9月末から10月上旬のお届けと案内された。

それが10月4日に「お詫び」と書かれたメールが届き、「当初の予定より商品の生産に時間を要している」ため、発送が11月上旬に遅れる見通しになったという。遅延のお詫びとして、500円分のクーポンも送られてきた。

PB事業が計画未達となった要因の1つは、こうした発送遅延が相次いだことだ。生産工程上の問題が生じ、多数の商品が受注が入っても発送できない状態となっている。さらに、ビジネススーツは発売当初は注文が殺到したものの、数カ月先の納期を提示した影響で、その勢いも徐々に失速。前澤友作社長は決算説明会で「(生産委託した海外の)工場とのデータのやりとりがうまくいかないなどプロダクト面の不具合があったが、すべての遅延は年内に解消する予定」と釈明した。

ビジネススーツは通常3万9900円のところ、2万1900円のお試し価格で提供しており、ZOZOブランドの宣伝効果を狙った破格の値段設定でもあった。それに加えてお詫びクーポンを配布することで、PB事業黒字化のハードルはさらに高くなってしまう。同様の事態を防ぐため、今後は社内に立ち上げた実験用の生産ラインで商品製造のテストを徹底したうえで、大量生産につなげる計画だ。

アパレル各社はオーダー生産に注力

前澤社長は説明会で、近い将来、PBの全商品を対象に、ゾゾスーツでの計測なしでもぴったりのサイズを届けられるようにする見通しも明らかにした。ゾゾスーツで集めたデータなどを基に、身長や体重などの情報を入力すれば最適サイズを推測できる新技術を開発中という。


7月に発売したZOZOのビジネススーツ。生産工程で問題が発生した影響で発送が遅れている(写真:ZOZO)

PB発売時は、ゾゾスーツの近未来的な仕様と、「自分にぴったりのサイズの服が自宅で注文したらすぐに届く」という斬新な販売手法が注目を集めた。ただ、オーダー生産は不良在庫を抱えるリスクが少ないため、アパレル各社も力を注いでいる。紳士服大手のコナカはベンチャー企業と協力し、全身をスマートフォンで4枚撮影すればサイズのデータを取得できる仕組みを確立。より簡易な採寸技術を導入する動きもある。ZOZOがゾゾスーツ発表から1年足らずで新たなサイズ提案の手法を発表した裏には、こうした競合の動きに対する焦りもありそうだ。

もっとも、採寸技術は手段にすぎない。PB拡大に向けては、商品の品質やデザインの差別化でどこまでZOZOブランドの顧客を増やせるかがカギとなる。前澤社長自身、「服自体に注目が集まらないといけないのに、どうしてもゾゾスーツにスポットが当たりがちだった」と語り、製品開発に注力する意向を改めて強調した。

「計測、パターン生成、製品製造とすべてを自分たちの力でやっていくのが、将来的に大きな強みとなる」(前澤社長)。中期計画では2020年度にPBの売上高を2000億円まで伸ばし、ゾゾタウン事業に次ぐ第2の収益柱とする目標を打ち出す。生産態勢の準備不足で出足はもくろみを外れたが、販売手法のインパクト以上に消費者を引きつける商品価値を打ち出せるかが、今後の成長を左右する。