英語保育園の1つであるインターナショナル・プリスクールにおける実際の教育を取材してきました(写真:ネスインターナショナル提供)

「我が子に最低でも英語は学ばせたい」これは多くの親たちが考えていることでしょう。芸能人が子どもをインターナショナルスクールに通わせているという事例も、最近多く耳にしますが、富裕層の英語教育はどのようなものでしょうか。

仕事柄、筆者も以前からその実情に関心があり、前回の記事『世界の富裕層が選ぶ我が子の留学先はどこか』(2018年7月20日配信)では、バリ島のグリーンスクールなど海外のインターナショナルスクールを紹介しました。

今回は日本にいながらにして、英語を習得させる手段として富裕層を中心に人気がある、インターナショナル・プリスクール(幼稚部)での英語保育園の実際の様子に迫ります。

英語保育園は、東京都内だけでも港区や世田谷区に続々と開園しており、富裕層の子どもたちの争奪戦にもなっています。親たちの職業は外資系企業や金融、商社などに勤める年収の高い人たちも多いといえるでしょう。

英語だけでなく中国語もマスターできる

世界12カ国に100校以上あるイートンハウスの東京校は、2010年にシンガポール出身のアンリ・タン氏が創業しました。港区六本木のミッドタウンに近い閑静なエリアにそのプリスクールはあります。

アンリさんは海外でのさまざまな仕事の経歴を経て、自身の子どもの誕生をきっかけに幼児教育の重要性を知り、英語と中国語を習得できる学校を東京で開講するに至ったそうです。


イートンハウス東京校の代表を務めるアンリ氏。入り口にはボルダリングができる遊び場もあった(筆者撮影)

代表のアンリさんによれば、校内には、現在約100名のさまざまな国籍の子どもたちがおり、日本人はその中で4割程度、ハーフの子どもも1割通っているとのこと。

まず学校に入って驚いたのが、入口に水遊びできる手作りの井戸のようなスペースがあったり、ボルダリングできる手作りの設備があるなど工夫して自然に親しめる設備を取り入れているといいます。

ミッドタウンからスクールへの道すがらきれいな公園があったのですが、そこでもアウトドアでのクラスを行っていました。「環境は第3の先生」というイタリア発祥の「レッジョ・エミリア・アプローチ」の教育法を取り入れているのが特徴で、定期的に長野県の軽井沢や白馬に1泊2日でキャンプに行くこともあるそうです。こういったサマーキャンプは定員をオーバーしてしまうほどの人気もあるそうです。


授業の様子を説明する壁に掛けられていたパネル(筆者撮影)

教える先生の国籍も、カナダ、オーストラリア、インド、スリランカ、フィリピン、シンガポール……など多様です。

アンリさんとその先生たちとのミーティングはとてもユニークです。校内には“Image of Chart”というプロジェクト管理シートのようなものがあります。

こう聞くと一般企業のようですが、実際その中身はとてもクリエイティブでした。

最初のプロセスとしては、「子どもたち自身がプロジェクトの内容を決める」ということ。

つまり、先生が子どもの興味・関心を把握して、コンセプトを立てることになります。一般の学校にあるように1日や月間の決められたカリキュラムがあるのでなく、つねにゼロイチで構築していきます。

たとえば、あるクラスでは、子どもが行列に興味があると先生が把握します。

そこから「行列」→「ものを並べる」→「いろんな生地のものを並べる」といった形で発展させていきます。半年・1年くらいかかるプロジェクトも良くあるそうです。子どもの興味も途中で変わるため、どういう風に継続発展させていくかは非常に大変で、先生同士のミーティングも重要と言えます。

また別のクラスでは、アングリーバード(Angry Birds 鳥を飛ばすアクションゲーム)に関心が高いということで、ゴム銃であるパチンコを作ることをテーマに設定。

最初の試作品はうまく飛ばなかったため、みんなでデザインを工夫し、ホームセンターで工具をそろえて作ったところ、成功しました。


パチンコ(SLINGSHOT)を使った授業の様子を説明したアンリさん(筆者撮影)

自分たちが選んだテーマだからこそ学びも大きい

そこで終わりではなく、その遊びの中で、次は飛ぶ軌跡を記録するべく、白紙に色の軌跡を残すように先生がアイデアを出して記録し、計測してグラフを作成したそうです。

約5カ月にわたったこのプロジェクトの中では、エンジニアリング、クリエイティビティ、ディスカッション、算数、物理を結果的に学んだことになります。しかも自分たちが選んだテーマなので、集中力も高く効果が得られるというのが、この学校教育のポイントといえるでしょう。

筆者が気になったのが、はさみなどの工具が先の丸い子ども用ではなく、大人と同じ本格的なものを使用していたこと。


子どもたちが授業で使う工具は大人が使う本格的なものだった(筆者撮影)

聞くと、「リスクのないものこそ、リスクがあると考えています」という明確な回答が返ってきました。

これは留学にも言えることですが、近年は危機管理を優先するあまり、若者の挑戦の可能性を減らしている傾向があると感じています。日本の教育が過保護になりすぎている部分も否めません。

次は、世田谷区にあるアメリカ式プリスクールの例です。

駒澤大学の近くにあるネスインターナショナルスクール駒沢校では、アメリカの「ファースト・ラーニング」をベースとした教育システムで、子どもの発達段階に応じたプログラムを運営しています。代表は櫛谷泰輔氏が務めています。駒沢校以外にも今年の10月に横浜たまプラーザ校、12月にお台場有明校が新規オープンする予定です。


外国人講師との授業風景(写真:ネスインターナショナル提供)

もともと英会話事業や留学事業を展開する会社が運営しているということで、特に日本人の子どもへの英語教育には力を入れている印象です。

ここもさまざまな国籍の先生が、ミュージック&ムーブメント、アート、ドラマチックプレイなどの楽しいアクティビティを通じて英語で保育をしていました。

教室にはカメラを2台設置してあり、オンタイムで保護者が我が子をスマホで見ることができるサービスや日々の報告などもアプリで簡単にチェックできるシステムは、子育て中の多忙な親にも喜ばれそうです。食事も無添加のものを提供し、アレルギー対応も厳しく管理をしていました。

今回、年中・年長の子どもを対象としたプログラミングの授業を見学しました。ロボットの動きを指示するという内容です。


ロボットがどう動くのかを学ぶ授業も展開していた(写真:ネスインターナショナル提供)

先生の説明はもちろん英語オンリーなのですが、遊びながら色の付いたシールを貼ったりするなど楽しげに子どもは次々と基礎を習得していきます。我々大人にとっては頭の痛い「英語」「プログラミング」をノーストレスで自分のものにできるのが、この時期に学ばせる魅力ではないでしょうか。

保護者からの声として、「レゴロボットのプログラミングやサイエンスを通じ思考力や判断力の形成がされていると思います。学んできた英語を教えてくれたり、『これは英語でなんて言うの?』と聞いてきたり。日常生活で英語を意識しているなと思うことが多々あります」(年中・男子の保護者)と特に英語やプログラミングを楽しみながら学べる点が好評なようです。

さらに「送迎の際、ネイティブ講師に英語で聞かれたことに対してすぐに答えられたり、海外旅行先でも積極的にコミュニケーションをとっている姿に成長を感じています」(年中・女子の保護者)という声もありました。


体を使った授業の一コマ(写真:ネスインターナショナル提供)

英語を通じた幼児教育が選ばれている

不確実な時代といわれる中で、クリエイティビティや問題解決能力が問われています。英語やプログラミングも必須スキルと言われている中、富裕層に限らずインターナショナル・プリスクールも選択肢の一つとなるでしょう。

もちろん、こういった英語教育の保育施設は従来型の認可保育園とは異なり、保育料も高いのは事実です。それは独自の授業展開や多国籍の講師の確保といった形で保育園を運営するための費用が多くかかるからです。

少子化の中で、教育にかけるお金の格差も生まれている中、いつどのように子どもたちに能力を身につけるか、コストパフォーマンスや留学の必要性と合わせてこれからも考えていく必要があります。