堅実な副収入をつくるにはどうすればいいのか。3年前に不動産投資をスタートさせた43歳のワーママは、現在5つの物件を保有し、年200万円を稼いでいる。20代から貯蓄も続けており、金融資産は5000万円を越えているという。なぜ会社員を続けながら。不動産投資に手を出したのか。リスクとリターンの実際について聞いた――。

※本稿は、雑誌「プレジデントウーマン」(2018年8月号)の特集「貯めてる女性たちの『1日・1週間・1年』」の記事を再編集したものです。

■会社に勤めながら40歳で不動産投資をスタートした女性

首都圏に在住の会社員・沙織さん(仮名・43歳・既婚・子ども1人)は、独身時代からキャリアや収入増につながる資格取得や日々の節約に励み、コツコツと貯金してきた。20代半ばにはすでに貯金額が500万円。その後、会社員の男性と結婚したことで年間に積み増す額も増え、現在ではなんと貯金額は約5000万円となった。

なぜ、そんなに大きな額を貯められたのか。聞けば3年前から「会社員大家さん」となったという。今、1年間に積み増している540万円のうち、約200万円は不動産収入によるものだ。

「知り合いの不動産投資家が“仕事時間は午前9時から11時だけ”と言っているのを聞いて羨ましく思ったのが不動産投資を始めたきっかけです。残業で退社するのが23時もザラという私としては、そうした高効率の仕事やライフスタイルにとても憧れました。また、周りを見渡してみると、親の相続だったり、転勤のために持ち家を賃貸に出したり、意外に不動産投資をする人は多い。そこで自分もやってみようと、40歳のときに決意しました」

実際に始めると、その面白さにどんどんはまっていった、という沙織さんが、この3年間に購入・所有した物件は次の通り。

■5件の物件を購入 年間収入は約200万円

●所有物件:関東に5件の区分マンション
●実質的な家賃収入:月額合計18万円
●実質利回り:9〜20%(物件による)

実際の家賃収入は、5件で月約30万円(物件ごとに3〜7万円)。管理費や修繕積立金、固定資産税、リフォーム、交通費、手土産などの費用が月約12万円なので、毎月約18万円の利益が出る。実質的な家賃収入は1年間で約200万円になる。この家賃収入を沙織さんはそのまま貯金している。

■200万円を投下して利回り12%を実現

実際の購入例を見てみよう。物件は、関東地方のある駅から徒歩5分、築25年のワンルームマンションだ。

●家賃収入:月額3万5000円×12カ月=年額42万円(A)
●管理費・修繕積立金・固定資産税・保険の合計:年額15万円(B)
●修繕のためにキープしておく金額:年額3万円(C)
★手取り:(A)−(B)−(C)=年額24万円

このワンルームマンションの購入価格は諸費用を含めて約200万円。24万円(手取り)÷200万円(物件価格)×100=12%で運用していることになる(実質利回り)。もし、思わぬ安値で買えた場合は、さらによい利回りになる。沙織さんの所有する物件のなかには、現金払いを条件に100万円未満で買えたことで、利回りが20%を超えているものもあると言う。沙織さんはこう語る。

「今の時代、銀行に200万円を預けても、こんなに利息はつきません。1物件で見れば、実質的な家賃収入は年24万円と小さなものですが、仮に4件所有すれば、年100万円弱の手取り収入が得られます」

■どんな物件をどんな基準で選ぶのか、5つのルール

実質利回りを9〜20%と高収益を維持している沙織さんだが、物件をどのように購入するのだろうか。購入する物件の基準とルールも明確に決めている。特に以下の5項目は厳守する。

1)借金せず、現金で買える物件(200万円以内)
2)実質利回りが10%を下回らないもの
3)賃貸の需要のある地域であること
4)駅から徒歩15分以内
5)管理費が高額でない

「あくまでも本業は会社員。不動産投資は“趣味”なので、借金をしてまで買うのはNGとするのがマイルール。現金で買えることが大原則です。また“現金ですぐに支払う”というのは、売却を急いでいる人には有効で、思いがけず安く買えることがあります。管理費が高すぎると当然、利回りも下がります。空室リスクを避けるためにも、その地域に賃貸需要があるかどうかを調査しておくことは必須。そのためには、ふだんから雑誌やネットで“住みたい街ランキング”などをチェック。実際にその街に出かけることもあります。さらに駅から遠いと借り手がつきませんから、駅から徒歩15分以内という条件を守ることも重要です」

もちろん、こうした自分なりの基準に合う物件に出合うのは簡単なことではない。だから「at home」「SUUMO」「Yahoo!不動産」「HOME’S」「楽待」といった不動産投資サイトを頻繁にチェックしているそうだ。こうしたサイトを使って物件をリサーチするとともに、「全国地価マップ」のサイトで路線価をチェックすることで、実際の価値よりも安く売りに出されている「お買い得物件」を探すのだ。

■「失敗すれば全財産を失うから、やっぱりこわい」

沙織さんがこの3年間の「不動産投資」で感じた魅力は次のようなものだ。

1)心にゆとりが生まれる
第2の収入があることは、安心につながる。不動産投資のリスクヘッジは「会社員である」ことだが、同時に会社員であるリスクを不動産投資でヘッジしているとも言える。
2)自分に決定権がある
どの物件を購入するか、いくらで貸すか、どうリフォームするか、あらゆる決定事項を上司にお伺いを立てることなく、すべて自分で決められることに自由さを感じる。
3)視野が広がる
人との出会いはもちろん、経済のニュースをチェックしたり、リフォームの参考にインテリア雑誌を読んだり、いろいろな方面から新しいことを知ることができるように。

とはいえ、沙織さんはリスクに関しても十分に理解している。「投資には、リスクがつきもの。失敗すれば全財産を失う可能性もあるから、やっぱりこわいです」と浮ついたところは一切ない。

だからこそ、想定されるリスクをすべて挙げて、それを解消するための手段や方法をあらかじめ用意しておくことも必要と言う。

「想定されるリスクとしては、まず家賃滞納が挙げられます。実際、過去に外国人の方に家賃を滞納されたことがありました。いくら連絡しても『ニホンゴワカリマセン』の一辺倒。保証人の方がしっかりした方でしたので、そのときは何とかなりましたが、弁護士にも相談しましたね。また予想以上に部屋を汚されてしまい、多額のリフォーム費がかかるのもリスクのひとつ。これは契約前の入居申込書を見る段階で、入居者の属性を見極める力が必要。経験とともに養われていく力ですが、時には不動産屋さんなど専門家のアドバイスもいただきます。さらに、地震や津波などのいわゆる災害リスクもありますが、これは保険でカバーするしかないですね」

リスクに対しては、専門家の助言や保険のほか、貯金や第2の収入も重要。その点、沙織さんの場合、会社員であることがリスクヘッジになっているのだ。加えて、前述した購入物件の基準以外にも、自分なりの“不動産ルール”を決めて、そのルールに従って購入すれば、リスクを軽減することができるそうだ。

■部屋の中、外までくまなく、物件選びの11項目チェック

具体的に物件の目星がついたら、現地まで足を運び、さらに以下の11項目のリストをチェックしていくのだ。このリストから「1つでも外れるものがある」場合は、どんなに魅力的な物件でも絶対に買わない。“自分が住んでもいいと思えるかどうか”という視点も欠かせない。

□ オートロックであるか
□ 洗濯機置き場が室内にあるか
□ 収納があるか
□ ベランダからの景色に問題はないか
□ ポストが封鎖されている部屋が多くないか
□ 他の部屋の住人の雰囲気はよいか
□ 共用部分の掃除は行き届いているか
□ 騒音や異臭はないか
□ 過去に事故がなかったか
□ 駅からの徒歩ルートは安全か
□ 近くにコンビニエンスストアはあるか

購入したあとも、リフォームや清掃などの業者任せにせず、自分でできることは頭と身体を使ってやるようにしているという。

「退去した人が、旧型のテレビと布団を残していったことがありました。業者に問い合わせると、処分費用が3万円と言われたので、休日に自分でやることに。リサイクル費用に約4000円、交通費が約6000円かかりましたが、休日に2万円で働き、よい汗を流したと思えば大したことではありません。それにしてもテレビは重かったです……」

■43歳で貯蓄は5000万円でも「会社員を辞める気ない」

20代前半で500万円だった貯金額は、会社員の収入増加や不動産投資が順調なこともあって、43歳の今、5000万円に到達した。「元手」の資金があるだけに今後はさらに購入物件の額を上げることも可能だ。また、会社員の夫がいるので、自分は腹をくくり脱サラして不動産投資ビジネス一本でいくという手もあるかもしれない。

しかし、沙織さんは「会社員を辞めるつもりはない」ときっぱり言う。

「会社員と大家さん、両方やることで、リスクを補い合っていますし、そもそも今の会社員としての仕事にやりがいを感じているので、ずっと続けるつもりです。もちろん不動産投資も無理のない範囲で続けたい。お金を貯めるのは、夫や私に何かあったときに子どもが困らないようにしておきたいから。ただ、何か新しいことをしたいという思いは、いつもあります。もしかすると、まだ天職に出合っていないかもしれない。ですから今後、何か面白いことに出合ったときに、すぐに投資できるように、お金は貯めておきたいですね。貯金の目標額は特に決めていませんが、今後も今のペースで貯めていけたらいいなと思っています」

(フリーライター 池田 純子 写真=iStock.com)