アデレードのクルツ監督が「客寄せのためだけなら…」と懸念

 “人類最速の男”ウサイン・ボルトが、オーストラリアAリーグのセントラル・コースト・マリナーズでトライアルに参加している。

 マンチェスター・ユナイテッドファンを公言するボルトは、以前にもドルトムントや、J1川崎フロンターレの練習場に足を運んできた。本人としては、本気でサッカー選手を目指しており、マリナーズでのトレーニングにも熱心に取り組んでいる最中だ。

 陸上男子100メートル世界記録保持者のボルトには、スペインやフランスのチームからオファーが届いていたが、言葉の問題からオーストラリアを選んだと、クラブの公式サイトが伝えた。

 しかし、「AP通信」によれば、同じAリーグのアデレード・ユナイテッドを率いるマルコ・クルツ監督は、ボルトのこのチャレンジを快く思っていないようだ。話題作り先行のボルト獲得を懸念し、こう批判した。

「リーグの力を高めたいのなら、クオリティーを上げる必要がある。そして、ボルトはここにいる選手よりも上のクオリティーを持っているに違いない。私にとってはそこがポイントだ。スタジアムにもっと多くのサポーターを呼び寄せるためだけなら、正しい道とは思えない」


サッカー選手としての才能に疑問符

 また、ボルトがベンチに入れば、その椅子が確実に埋まってしまう。結果的に、オーストラリア国内の若手選手にチャンスが回ってこなくなる可能性もあるという。

「リーグの目標は、オーストラリアの若手選手を育てることであるべきだし、(彼らのポジションに)スプリンターを投入することではない。ボルトの次のステップは分かっているし、きっとプレーのクオリティーもあるに違いない。足は十分速い。だが、ボールの扱いが上手いのかどうかは分からない。スプリンターとして完璧であることは知っているが、サッカー選手としてはどうだか分からない」

 本田圭佑のメルボルン・ビクトリーへの移籍で日本でも何かと話題のAリーグだが、ボルトの加入が決まれば、さらなる話題を集めることになる。だが、こうした国内から挙がった批判の声も無視はできない。こうした声を黙らせるには、ボルト自身がテストをパスし、その実力をピッチの上で証明するしかない。


(Football ZONE web=AP)