日本代表の新監督選定が、確実に進んでいるようだ。

 監督を選ぶ基準で大切なのは、直近のW杯の「検証」である。ロシアで何ができて、何ができなかったのか。その検証の先に、人選があるべきだ。

 もっとも、検証に時間をかけている猶予はない。9月には新体制で臨むべきテストマッチが組まれている。来年1月にはアジアカップも控えている。新監督には選手選考の時間も必要で、今月中には決めたいところだろう。

 個人的には日本人監督を推す。

 外国人監督にあって日本人監督に欠けているものを探すなら、ハイレベルな攻防での経験があげられるだろうか。チャンピオンズリーグ、ユーロ、コパ・アメリカといったコンペティションで采配をふるった監督は、勝負どころを見極める眼を日常的に養い、なおかつ勝負どころを見逃さずに動けるベンチワークを身に着けていく。

 監督としてのそうした経験は、Jリーグやアジアでも磨くことはできる。ただ、戦いのレベルによって、決断のスピードは上がりも下がりもする。世界のトップ・オブ・トップの選手たちが集う大会で采配をふるってきた監督たちが、鋭い勝負勘を持っていると言うことはできそうだ。

 とはいえ、「経験」を理由に日本人を選択肢から排除したら、いつまでたっても外国人に頼りきりである。より多くの経験を同時進行で積むことができる意味において、五輪代表とフル代表の監督を兼任させるのは有効なアイディアとして成り立つ。五輪世代からの選手の吸い上げもスムーズになる。森保一監督の誕生に、個人的に異論はない。

 気になるのはスタッフだ。基本的には監督に一任されるべきだが、スタッフにも組み合わせによる化学反応があっていい。それまで仕事をしてきた既知の関係ではなく、森保監督が馴染みの薄い人を協会が推薦してもいいのではないか。

 Jリーグはシーズン中であり、現時点で代表に関われない指導者も多い。ただ、Jリーグの現場で采配をふるっている監督たちのなかには、森保さんに負けない実績を築いてきた人もいる。引き続きオールジャパンの体制で臨むのであれば、そうした人材も取り込んでいきたい。日本人指導者にきちんとしたモチベーションを提供する意味でも、結果を残してきた人は登用するべきだ。

 期間も気になる。森保ジャパンの誕生となれば、東京五輪までは兼任で、その後は日本代表に専任で、という方針が思い浮かぶ。もちろんそれで構わないのだが、代表監督は結果責任を問われる立場だ。勝っても負けても2022年までの4年間を託す、というスタンスは違う。監督交代の決断を迫られた時に、チーム作りに遅れが生じないためにも、たとえば日本代表は森保さんともうひとりの二頭体制でもいいだろう。

 日本代表の監督人事でもっとも優先されるべきなのは、国籍でも、実績でも、経験でも、企業閥や学閥でも、誰かのメンツでもない。日本代表が勝つために最適な人材を選び、その仕事を客観的に検証していくことである。

 誰が日本代表を率いるのかは、重要ではない。
 
 日本代表が勝つことが、何よりも重要なのだ。