ロシアW杯もいよいよ大詰め。残すは準決勝2試合と3位決定戦、決勝の4試合のみ。本命はフランスということになるが、その調子はあまり上がっていない。ベルギーそしてイングランド、クロアチアとの間は、詰まっている。混戦だ。残り4試合の会場となるモスクワ(ルジニキ)と、サンクト・ペテルブルクは、ここ最近、20度に満たない寒いぐらいの陽気だ。サッカーをする環境としては、おあつらえ向きの気候である。好試合必至。必見だ。
ロシアのけっして暑くない気候の影響もあるのか、従来に比べ、今大会は接戦、好試合に遭遇する率が高い。ベルギー対日本もそのひとつになるが、そういうわけで、観戦のモチベーションもいつになく高く保てている。日本を離れて1ヶ月も経つと、いくらサッカー好きとはいえ、現地の生活に飽きてくるものだが今回、それは全くない。これまで観戦した試合はすでに18を数えるが、お腹いっぱい感はない。あと4試合になってしまった悲しさの方が先に来る。決勝トーナメントはリーグ戦で延々と、やって欲しかったと思うほどだ。
いま、大会を振り返って思うことは、32ヶ国が参加して世界一を競う大会として、1ヶ月という大会期間は短すぎやしないかということだ。3試合しかないグループリーグ。それ以上に無理矢理感を感じるのは、決勝トーナメントだ。90分間1本勝負。延長があるとはいえ、即PK決着はあまりに味気ない。
どうしても比較してしまうのは、同じ32チームが参加して行われるチャンピオンズリーグの本大会だ。こちらのグループリーグはホーム&アウェーの2回戦制で、決勝トーナメントはホーム&アウェーの90分間2本勝負だ。ナンバーワン決定戦として、どちらがフェアな決定方法か、言わずもがなだ。
チャンピオンズリーグは、したがってフロックが少ない。番狂わせも少ない。実力が結果に反映しやすいトーナメントだ。そこで3連覇を飾ったレアル・マドリーは、まさに真の実力者である。その優勝には真の重みを感じる。
その一方で、3回も連続して優勝されると、第3者的にあまり面白くないことも事実。その優勝シーンを現場で見ながら、半月後に行われるW杯への期待が高まっていったことを覚えている。どこが勝つか分からないW杯の方が、きっと面白いトーナメントになるハズだと。
しかし、いまそのW杯のトーナメントの真っ只中にいると、つい無い物ねだりをしたくなる。チャンピオンズリーグが無性に恋しくなる。大会としてどちらが真っ当か。これについて、真面目に考察したくなる。
W杯の決勝トーナメントには、確かにどちらが勝つか分からない面白さがある。代表チームの試合数はクラブチームに比べ、断然少ない。サンプルが少ないので、どんな戦いになるかも読みにくい。やってみなければ分からない面白さがある。日本が戦った4試合などは、まさにそうしたW杯の特長を象徴する試合だった。
日本の好成績に水を差すような言い方になるが、もし、90分間の2本勝負だったら、日本は同じ成績を収められただろうか。ノーだ。チャンピオンズリーグ方式なら、グループリーグ突破の確率はぐんと下がる。90分の1本目では、知られてない強みを活かし、勝てるかもしれないが、相手に研究された2本目で勝つことは、至難の業になる。
02年、10年に続き、今回3度目のベスト16入りをはたした日本だが、チャンピオンズリーグ的な視点で眺めると、胸を張ることはできない。
とはいえ繰り返すが、それがW杯の魅力でもある。
どこが勝つか分からないW杯と、ほぼ実力通りに決着するCLと。32チームで争われる同じサッカーの大会でも、両者には著しい差が存在する。
1試合1試合に、重みを感じるのはW杯ではなくCL。一方のW杯は、お祭り的だ。ある1ヶ国で開催される1ヶ月の短期トーナメントであることも、お祭り的なノリに輪を掛ける。しかし、CLが毎年行われるのに対し、W杯は4年に1度だ。大会に重みがあるのはW杯だ。
つまり、重みがあるのにお祭り的。いったいW杯における成績は重いのか軽いのか。日本人は重いと考える人が大半だ。そこでベスト8に迫ろうかという成績を残せば、文句なくよくやったという話になる。一方、欧州の人々は、W杯をそこまでのものとは考えていない。運不運について、冷静に考える目を持っている。
浮かれるな。冷静になれ。チャンピオンズリーグ的な文化は日本にそう語りかけている。もう一度戦ったら、勝てるのか。勝てそうなのか。3度目のベスト16入りを経験した日本に求められるのはこの視点だ。W杯だけがサッカーのカルチャーではない。まさにお祭りの現場にいると改めてそう思う。アジアチャンピオンズリーグが欧州チャンピオンズリーグのレベルに遠く及ばない、悲しさを感じてしまう。問われているのは両者のバランス。それがないと、自身を客観的に見つめることはできにくいのだ。
PCMAX
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