住宅大手の積水ハウスがいわゆるミニゴールデンクロス(13週移動平均線>26週移動平均線)を実現したのは、昨年11月9日(当日の高値:2219円)。だがこの日を境に同社株は総じて右肩下がりに転じ、3月初旬にはミニデッドクロスが発現し3月8日(前2019年1月期発表日)には1798円(年初来安値)と2割近く下落した。

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 こうした株価の動きは「お家騒動を映した」とされる。キッカケは17年の分譲マンション用地の取得を巡る、「地面師(他人の土地を自分のものと偽って売る詐欺師)」による土地取引詐欺だった。55億5900万円の損失が発生した。同社は10年来「和田勇会長/阿部俊則社長」体制が執られてきた。一度は「詐欺事件」の責任を取り和田会長が取締役相談役に退き阿部社長も会長に、新社長には仲井嘉宏常務が就くこと(1月24日)が取締役会で決められた。

 だがこれでは、事態は収拾しなかった。地面師問題で和田氏と阿部氏の対立が表面化したのである。先に仕掛けたのは和田氏「阿部氏の責任」を主張した。が阿部氏が反発「和田氏解任動議」に及び、和田氏が解任された事実が表面化したのである(和田氏は6月株主総会で取締役退任)。

 こうした業界トップ企業のお家騒動には、今後の「少子化⇒住宅減」が付け加えられ「縮小していくパイを食い合おうという中で、この種の出来事は大きなイメージダウンに繋がり大きなビハインドとなる。あくまで住宅に軸足を置き、多様化で遅れている積水ハウスの先々に疑問が禁じ得ない」とする論が起こっている。

 さて、今回の結末はどんな具合となるのか。「世の森羅万象を映す鏡」とされる株式市場に聞いてみた。具体的には前記の通り1798円まで下落した株価のその後の展開である。本稿作成中の時価は1900円台半ばにまで回復している。株価に絶対はない。だがこの限りでは「株価は、お家騒動を織り込んできている」と捉えることができる。担当アナリスト達の同社株に対する(平均)目標値も2313円。前記の2219円まで戻るようなら「件の醜態は一巡」と株価は判断したとみることができるのではないか。