サッカー選手にとって、母国の代表チームでプレーするのは大変な名誉だ。ただ同時に、計り知れない負担を抱えることになる場合もある。

 マンチェスター・ユナイテッドに所属する元イングランド代表のマイケル・キャリックは、代表での戦いに疲弊していたと明かした。

 2015年11月のスペインとの国際親善試合まで、イングランド代表で34試合プレーしたキャリック。だが主要大会に出場したのは、2006年ドイツ・ワールドカップ(W杯)での1試合だけだ。
 
 英紙『Daily Mail』によると、キャリックは英国営放送『BBC Radio』で、「長い間プレーさせてもらったけど、正直言うと、イングランド代表に身を置くのが辛かった」と述べた。

「ユナイテッドで3週間のプレシーズンキャンプを過ごしてもまったく気にならないのに、代表の合宿ではいつも、ほとんど鬱に近い状態だった」

「本当に辛かった。(2010年の)南アフリカW杯が終わって、もう無理だと思ったよ。みんなは『選ばれたことに感謝しろ』って言うだろう。僕も自分が恵まれた立場にあるのは分かっていた。だけど、辛かったんだ。もうやっていけないと思った」

 さらにキャリックは、「おそらく僕はぎりぎりの……そう、時々鬱のようになっていたんだ」と、続けている。

「FA(イングランド・サッカー協会)に、『頼むからもう僕を代表に選ばないでくれ』ってお願いしたこともあったほどさ」

 南アフリカW杯後、しばらく代表から遠ざかったキャリックは、2012年に復帰を果たし、2014年ブラジルW杯予選では6試合でプレー。出場権獲得に貢献した。だが、本大会には招集されなかった。

 キャリックは今シーズン限りでの現役引退を発表しており、シーズン後はユナイテッドのコーチ陣に加わり、後進の指導にあたる予定となっている。

 精神的に苦しんだ経験を持つ選手は、キャリックの他にも少なくない。華やかに見えるプロ・サッカー界だが、メンタル面のケアを欠かさないことが大切だ。