顧客満足度調査で7年連続1位のスーパーマーケットがある。首都圏で店舗を展開する「オーケー」は、徹底したコストカットで、「良い商品を低価格で」を非常に高いレベルで実現している。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は、「ここまで徹底しているスーパーはほかにない」という――。

■特売がない「EDLP」方式を導入

顧客満足度7年連続業界1位――そんなスーパーマーケットをご存じだろうか。

東京・神奈川を中心に約100店を展開するオーケーの「顧客満足」が、日本生産性本部サービス産業生産性協議会の「日本版顧客満足度指数 スーパーマーケット部門」(2017年度)で1位となった。オーケーの1位はこれで7年連続。なお2位は会員制スーパーのコストコ、3位は関西で展開する万代だった。

なぜオーケーは顧客満足度で圧倒的な1位なのか。これは「良い商品を低価格で販売している」ということに尽きる。「良い商品を低価格で」というコピーはありふれたものだが、オーケーは非常に高いレベルでこれを実現することで、顧客からの評価を得ているのだ。

たとえば、18年1月にオープンしたばかりの東京都台東区・橋場店では、キリン「生茶」(2リットル×6本)が67%引きの349円、ニッポンハム「フレッシュ ロースハム」は54%引きの194円、ヤマザキ「ランチパック」は40%引きの105円で販売していた。これらは一例に過ぎず、ほかにも多くの商品が他店より圧倒的に安い価格で売られていた。

■家電販売店のごとく「他店より高ければ値下げ」

オーケーの特徴のひとつに、「EDLP(Everyday Low Price)」がある、特売期間を設けず、いつでも同じ低価格で販売するという手法だ。特売期間のある店では、期間中に混雑したり、品切れになったりする。「EDLP」ではそうしたストレスがなく、満足度が高い。

さらに、オーケーには入会金・年会費無料の「オーケークラブ」という会員組織がある。酒類を除く食料品については、「本体価格の103分の3(3%相当額)」を割引するものだ。通常の売価でも十分安いのに、さらに安値で買えるのだ。会員カード発行費用として200円が必要だが、日常的に利用する人であればすぐに元はとれるだろう。会員数は17年3月時点で約419万人だ。

そしてオーケーでは、競合店の価格を調査し、もし自店のほうが高かった場合には「競合店に対抗して値下げしました」と書いたPOPを掲げて値下げする。また客から「他店のほうが安い」と指摘された場合にもやはり値下げする。これにより地域で一番の安値を目指しているという。家電量販店では見かけるやり方だが、スーパーでここまで徹底するのは珍しい。

なぜオーケーは、他を圧倒するほどの低価格を実現できるのか。ひとつの理由は商品数を絞り込む大胆な「仕入れ」だ。

オーケーでは商品を仕入れる際に、「トップシェアかどうか」にはこだわらない。類似商品を複数仕入れるのではなく、「ヨーグルトなら、これだ」と商品数を絞り込み、そのかわりに大量に仕入れることで売価を下げている。これは売り上げアップにもつながる。

オーケーがある類似商品2種を1種に絞り、売価を約8%下げたところ、商品群全体の売上高が前年比で22%も増加した。また販売メーカーとの取引額は前年比で2.7倍に増えたという。

オーケーは自社のウェブサイトでこのケースを紹介しており、絶えず調整を繰り返していることがうかがえる。逆に、普段取り扱ってない商品をまとめて仕入れ、“売り切れ御免”で「特別提供品」のPOPをつけて安値で販売もしているのも特徴的だ。

商品の提供方法にも工夫がある。精肉や魚の一部商品は、トレー容器ではなくビニール袋に真空パック状態で陳列されている。刺し身パックにはツマが入っていない。弁当やサラダ、刺し身などにはしょうゆやソース、ドレッシングなどを付けず、別売りにしている。ビールやジュースはあえて常温で陳列し、冷蔵設備代や電気代を節約している。不要な経費を徹底的に省いているのだ。

■レジ袋は1枚6円、段ボールで持ち帰りもOK

またオーケーのレジ袋は「1枚6円」と他店にくらべて高い。これにより店側はレジ袋にかかる経費をまかなえるし、客はマイバッグを持参すれば金銭的負担は生じない。常連客であれば買い物の前にマイバッグを用意しておけばいいわけで、肝心の商品の安さを考えれば十分許容できるものといえるだろう。

店頭には荷物持ち帰り用の段ボールも用意されている。購入商品が多いときにはこれに詰めて持ち帰ればいい。店としては段ボール廃棄の費用と手間が省ける。客と店の両者が得をする仕組みだ。

店舗によっては、ショッピングカートの利用に一時金がかかる場合がある。利用の際には100円玉を入れ、使い終わって所定の位置に持っていくと返金される。従業員はカートの整理作業をする必要がなく、労働量が減るので人件費を抑えることができる。これも良い商品を低価格で売るための工夫だ。

スーパーでは新聞折り込みの「チラシ」に力を入れている店が多い。「特売」を知らせる重要なツールでもある。だがオーケーは特売をやらず、いつでも安いので、チラシは重要ではない。このためオーケーのチラシはサイズが小さく、デザインも立派なものとはいえない。おそらく配布部数も多くはないのだろう。

オーケーでは2004年から、生鮮品を除いたほぼ全ての商品で自動発注を取り入れている。自動発注は、「EDLP」だからこそ力を発揮する。特売形式は商品の在庫変動の波が大きく、需要予測を立てづらい。「EDLP」では波が小さくなるので、自動発注でも精度の高い発注ができる。これで発注作業の手間が省け、その分の人件費を抑えられる。

オーケーの売価が他店より圧倒的に安く、しかも驚異的な利益率の高さを実現しているのは、こういった経費削減の積み重ねによるものだ。17年3月期の売上高経常利益率は4.4%で、業界平均2.2%(新日本スーパーマーケット協会「2018年スーパーマーケット白書」より)の倍にもなる。売上高は大きく伸びていて、17年3月期は前年比7.7%増の3309億円だった。

■正直に「普段よりも品質が劣ります」と語るカード

そしてオーケーの強さは、安さだけではない。「オネスト(正直)カード」と呼ばれる仕組みがある。「相場が高騰しているため来月の買い付け分から値上げします」「長雨の影響で普段よりも品質が劣ります」といった情報を、店頭のPOPで客に知らせているのだ。この正直さで、客からの信頼の獲得に成功している。

高い接客力も、店と客の距離を縮めることに寄与している。オーケーでは10年から、接客力が高い店員に「ガーベラ記章」を贈呈し、接客力の向上に取り組んでいる。13年には個人の接客状況を審査する「エンジェルチーム」を発足するほどの力の入れようだ。

いかがだろうか。「良い商品を低価格で」を実現するために、ここまで徹底しているスーパーがほかにあるだろうか。顧客満足度が7年連続で1位というのもうなずける。他社がこれらすべてを短期間でまねることは困難だ。顧客満足度においてオーケーの独走はしばらく続くだろう。店舗網や業績の拡大も、当面続きそうだ。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)