欧州遠征を行う日本代表26人。その顔ぶれから浮かび上がるのは、監督が、いまだ試行錯誤を繰り返していることだ。とりわけ指摘したくなるのは、そのストーリー性の乏しさになる。

 代表チームの最終ゴールはW杯本大会だ。ハリルジャパンで言えば2018年6月。そこに日本としてベストなチームを送り込むことが、代表監督に課せられた使命だ。強化策は、そこから逆算して考えられなければならない。最終的なメンバーに辿り着いた経緯について、代表監督は、ファンをどれほど納得させることができるか。チーム作りに筋が通っているか。計画性があるか。

 監督の評価は結果がすべてと言われるが、結果に対して運が及ぼす影響が3割あると言われるのがサッカーだ。プロセスは無視できない要素になる。偶然性が高い結果なのか、必然性が高い結果なのか。それは、ベストは尽くされたのか否かの判断材料でもある。さらに言えば、よい監督か、悪い監督かを棲み分ける材料にもなる。

 今回のメンバーで、とりわけストーリー性に疑問を抱きなくなる選手は大島僚太と柴崎岳だ。

 大島を選出した理由について、ハリルホジッチは「Jリーグでいいプレーを見せているからだ」と、サラッと一言、述べるに留まった。しかし、大島が代表でプレーしたのは、過去に2度のみ。

 1度目は、W杯アジア最終予選の第1戦、対UAE戦(2016年9月・ホーム戦)であり、2度目は昨年12月に行われた、東アジアE-1選手権の第2戦、対中国戦だ。いずれの試合も、大島を語る場合には、曰く付きの試合になる。

 対UAE戦は、W杯アジア最終予選の初戦。その前年(2015年)に行われたアジアカップ準決勝で敗れている相手との一戦は、まさに大一番だった。その一戦にハリルホジッチは、初代表の大島をスタメン出場させた。

 ストーリー性に乏しい唐突感のある起用とはこのことだった。そしてその選択は失敗に終わる。大島はPKを献上するファウルを犯し、試合にも1対2で敗れた。一部の短絡的なメディアは、大島を戦犯に祭り上げ、ハリルホジッチも彼を、その4試合目以降は招集すらしなくなった。ハリルホジッチに潰された選手。大島にはそうした隠れた肩書きが付いて回ることになった。

 東アジアE-1選手権の招集は、それ以来だった。海外組を招集することが時期的に困難だったため、招集したメンバーは国内組のみ。A代表というより、候補選手の集合体。これまでの経緯を踏まえれば、大島はそこになんとか引っかかった格好だ。

 その中国戦。大島は先発を飾ったものの、前半30分、負傷退場を余儀なくされた。すなわち、大島には代表選手としてプレーした時間がこれまで計105分間しかない計算になる。

 そんな代表経験に乏しい選手が、本番まで残り3ヶ月を切ったこの段階で、日本代表に再び招集された。大島はハリルホジッチからいったいどんな評価を受けているのだろうか。所属の川崎では、多少怪我があったものの、その間、堂々としたプレーでチームを牽引。昨季のJリーグ優勝の立役者になった。川崎といえば、小林悠、中村憲剛の名前がまず挙がるが、川崎らしさを象徴する選手と言えば、彼らより順番的には大島の方が先に来る。

 Jリーグチャンピオンの看板選手。常時、代表に選ばれているべき実力者をハリルホジッチはこれまで、あえて呼ばなかった格好だ。理由は分かりやすかった。ハリルホジッチはかねてから、川崎的サッカーに否定的な目を傾けてきたからだ。ハリルホジッチに潰された選手という肩書きに加え、ハリルホジッチの好みの反する選手という肩書きも、大島は同時に背負っていたのである。

 今回のメンバーに大島の名前があるのは、ある意味で順当。しかしながら、過去の経緯を踏まえれば意外だ。ハリルホジッチは変節を余儀なくされたと言われても仕方がないだろう。しかし、その点に関する説明はなし。「Jリーグで活躍しているから」に留まった。