お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指す【脱貧困診断】。今回の相談は、小谷せつ子さん(仮名・32歳・製造会社勤務)からの質問です。

「32歳、ずっと奨学金の返済をしていて貯金はほぼゼロです。今年の3月で奨学金の返済が終わるので、これから貯金ができるようになります。

家賃は、8万4000円(家賃手当1万5000円)、手取り30万円、賞与ナシ。結婚の予定は今のところありません。今までは生活費を抑えながら、ただただ奨学金と借金(生活が回らなくなってしまったときに借りていました)返済をすることだけを考えてきました。どうやって貯金について考えていいのか、そのため何から始めて、いくら貯金すればいいのかもわかりません。

奨学金として返済していたお金は毎月6万8000円です。アドバイスをお願いいたします」。

30代は、今の生活を心地よく過ごすために使うお金と、将来の安心のために貯めておくお金のバランスが大切ですよね。貯金ばかりして日々の生活がさもしいのも、生きていてつまりません。でも、ついつい使っちゃって、結局「なぜかお金がない」というのも困ります。森井じゅんさんに教えていただきましょう。

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貯金より大切な借金の完済

奨学金の返済が終わるとのこと、おめでとうございます!  一人暮らしをしながらの毎月の返済は簡単なことではなかったと思います。まずは、ご自身を労ってあげてください。

相談者さんは、これまで毎月手取りの20%以上を奨学金の返済に回してきたのですね。これまでと同じ生活をしていくのであれば、単純計算で毎月6万8000円の余裕ができることになりますね。このお金をどう使うか、が今後のテーマになってきます。

貯金より先に考えなければいけないのは、借金の返済です。

相談者さんは奨学金のほかに、生活費のための借金があったとのこと。そちらも完済できたでしょうか?もし、まだ返済中ということであれば、そちらの完済を、まず考えていただきたいと思います。

個人の家計で「貯金」か「借金の返済」かという選択肢があった場合、貯金よりも借金の返済を優先することをおすすめしています。

なぜなら、貯金によって受け取ることのできる利子(=プラスのお金)と、借金によって支払わなければならない利息(=マイナスのお金)を比べた場合、利息であるマイナスの方が圧倒的に大きいからです。多くの借金の利息の成長は、雪だるま式です。一方で、貯金により受け取れる利子は微々たるものです。

何かあった時のための資金は必要ですが、本来は借金を返済してからが貯金・貯蓄のスタートラインです。

できるならば、まず借金の返済を考えてみて下さい。

「とりあえず貯金」だとお金は貯まらない

生活費のための借金を完済したら、相談者さんは単純計算で、毎月7万円弱のお金が浮くことになりますね。そのときに一番気を付けていただきたいのは、この浮いた部分が「とりあえず貯金」にならないようにということです。実際お給料でもボーナスでも「とりあえず貯金しておこう」と言って口座においておき、生活費やその他もろもろのために引き出している人が驚くほど多いです。

「とりあえず貯金」とは、貯金をしているつもりになって、口座に放置しているお金のこと。つまり、生活費や貯金を一緒の口座で管理することです。これがいちばん危険。本人は「お金を貯めている」気分になるのですが、きちんと管理できないので、結果「なぜか貯まらない」という事態を引き起こします。

お金がきちんと管理できていないと、無意識に「満足感のない無駄遣い」をしがちです。こうしたダラダラ支出の怖いところは、ひとつひとつが小さな浪費であっても、長期的に見ると大きな浪費になっていることです。

相談者さんは、これまで奨学金の返済のために細かい出費にも慎重になっていたことと思います。返済がなくなったからといって、余裕を感じてダラダラ支出になってはもったいないです。

まずはお金を分けることからはじめてください。

お金は4つの項目に分けて管理する

以前にもご紹介しましたが、私は、用途別・目的別に4つの口座を持つことをおすすめしています。

4つの口座とは、

1)生活費口座
2)臨時出費口座
3)目的口座
4)将来用貯蓄

の4つです。

1)の生活費口座は、生活費のための口座です。自分に必要な生活費を把握し、ここに振り分けましょう。
2)の臨時出費口座は冠婚葬祭や故障家電の買い替えなど、臨時的に必要となるものです。ざっくり、何かあった時のためのお金を積立てる口座です。
3)の目的口座は、欲しいもの・やりたいことのための口座です。買いたい洋服やバック、旅行など。奨学金の返済でこれまでできなかったこと、楽しい想像にワクワクしながらこの口座も膨らませてください。

そして、4)が「貯金」です。将来に向けての貯金です。ここのお金は基本的には何があっても手を付けないもの、としてください。

貯金額は手取り年収が何年で貯めるかでイメージする

では、この4)に毎月手取り額の何%を振り分けていけばいいでしょうか。

いちばんイメージしやすいのは、「手取り年収が何年で貯まるか」です。

相談者さんは、今まで、手取り額の中から、毎月6万8000円を奨学金返済に充ててきました。これは、手取りの20%以上となります。しかし、生活費のために借金をしたことがあるということ。つまり6万8000円の貯金を続けていくと、今と同じ生活は回らないということになりますね。

奨学金の返済よりも、少し抑えた月6万円を貯金するとどうでしょうか。この場合、5年で手取り年収360万円が貯まります。一方、手取りの15%・4万5000円であれば7年弱、節約などを頑張って、手取り月給の25%・7万5000円を貯金していくと、4年で手取り年収が貯まります。

相談者さんはこれまで、奨学金の返済を最優先にやってこられたと思います。これから先はもちろん貯金も大切ですが、お金を使う事も楽しんでいただきたいと思います。貯めることだけ考えすぎずに、ダラダラ支出にはならないよう、しっかりお金を管理することを目指してください。使うお金、貯めるお金のメリハリをつけていくことが、満足感のある貯金につながります。

「用途によってお金を分けてプールする」ことが大切。



■賢人のまとめ
「とりあえず貯金」はダラダラ支出のもと。まずは用途別・目的別にお金を分けましょう。貯金は、「手取り年収が何年でたまるか」でイメージして、手取りの15%から25%を目途に頑張ってみてください。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。