17歳の息子が一晩家に戻らなかった時、「何かあったのではないか」と真剣に心配する親はどれぐらいいるだろうか。このほどオーストラリアでその直感を働かせた父親が、危機一髪のところで息子の命を救うという出来事があった。『CBS News』『Inside Edition』『Fox News』などが伝えている。

【この記事の動画を見る】

豪ニューサウスウェールズのレイク・マクアリーに暮らすトニー・レスブリッジさん(51歳)は14日の朝、前日の夜からニューカッスル近くの街に友人らと出かけた息子のサミュエル君(17歳)が帰って来なかったことに「ひょっとしてなにか深刻な事態が起こったのでは」という直感が働いた。

その日は眠ることなく考え悩んだ末、トニーさんは翌朝の15日に息子が行方不明になっていることを警察に連絡し、捜索願を出した。さらにレイク・マクアリーのスカイライン航空グループの共同所有者でありパイロットでもあるリー・ミッチェルさんにも連絡し、急きょヘリコプターの出動を依頼した。

「警察に届けを出した時、彼らは息子が家出をしたと思ったようです。ですが私は『帰宅もせず電話にも出ないなんて息子らしくない。これはきっと何かあったに違いない』と感じていました。17歳の少年が家に帰ってこないのはありがちだろうし、警察も多忙なのは十分承知ですが、すでにまる一晩経っていたし、手遅れの事態になっては困るという気持ちがありました。」

息子の安否を心配するトニーさんの要請を受けたリーさんは、「どうにかしてヘリコプターを出動させてほしい。手持ち分が1,000豪ドル(約88,000円)しかないが費用はそれで足りるだろうか」と問われたという。通常、ヘリコプターのチャーターには1時間1,200豪ドル(約106,000円)の費用がかかる。しかしトニーさんの事情を聞いたリーさんは「それで結構です」と伝え、早速ヘリコプターを出動させた。

リーさんが操縦するヘリコプターには、サミュエル君のおじにあたるマイケルさんが乗り込んだ。空からの捜索を始めておよそ15分後、サミュエル君のものと思われる車を発見した。その車は道路から18メートルほど離れた木々の中に突っ込んだ形となっており、激しい衝突をしたためか車体がひしゃげていたようだ。道路よりも低い位置に車があったことで路上からの発見は難しく、まさに空上からの捜索が功を奏したといえよう。レイク・マクアリーにあるサミュエル君の自宅から12マイル(約19.3km)ほど離れていたその地点は、実は5年前にも自動車事故があり、発見が遅れた運転手が5日後に死亡した場所でもあった。そのニュースをトニーさんは覚えており、「息子をそんな目に遭わすわけにはいかない」という思いからの機転を利かした必死の捜索活動であった。

サミュエル君の第一発見者となったマイケルさんは、ヘリの中からサミュエル君の車を発見した時に恐怖でいっぱいになったという。「いったい、あの車の中で甥がどんな状態になっているのかと思うと、確認するのが怖いという思いがありました。でも、車に近付いてみたらサミュエルが頭を動かしたのが見えたのです。その瞬間、恐怖から歓喜に変わりました」と安堵の言葉を漏らした。事故から30時間後に切断した車体から救助されたサミュエル君は、多発骨折ですぐに病院へと搬送された。マイケルさん同様、救助隊員らも「彼が生きていたのは本当に幸運です。我々はこれまでに何年も捜索・救助活動にあたっていますが、必ずしも喜ばしい結果になるとは限りません」とこのたびの奇跡を喜んだ。

トニーさんは、急な要請を聞き入れ捜索活動にあたってくれたスタッフらに感謝し「息子の命に値段などつけられませんが、1,000豪ドルで救出できたのならば、それはそれで大満足です」と話している。

このニュースを知った人からは「お父さん、よくやったね!」「息子への父の愛が、直感で危険を知らせたんだろうね」「警察は事件の場数を踏んでいるとはいえ、やはり子供のことになれば親の方がよくわかっていると思う」「パイロットがトニーさんに協力してくれたからこそ息子さんが発見できたのだから、ここは父親とパイロットを褒めるべき」といった声があがっている。

画像は『CBS News 2018年1月16日付「Aussie dad with hunch hires copter, finds injured son」(AP/MICHAEL LETHBRIDGE)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)