location:箱根ターンパイク

もくじ

深堀りレビュー
ー FFは、リアグリップが命
ー ゴルフ7.5 リアサスに見るグレード分け
ー メガーヌ4 4WSに見るグレード分け
ー おさらい メガーヌの4コントロール

比較試乗
ー 4コントロール時代の走り方は?
ー マルチリンクでサルーン的 TSIハイライン
ー メガーヌ 走行モードで4WS変化 オススメは?

スペック
ー メガーヌGT/ゴルフTSIハイラインのスペック

深堀りレビュー

FFは、リアグリップが命

最近、複数の自動車メーカーの複数の技術者氏から、立て続けに「FFのシャシーでもっとも大切なのはリアグリップ」という話をうかがった。その意味するところは、すなわち「フロントを思いどおりに動かす方法はいくつもあるが、それができるのもリアが安定してこそ」ということだろう。

VWゴルフTSIハイライン:140ps/25.5kg-m/331.9万円

 

ルノー・メガーヌGT:205ps/28.6kg-m/334万円

 
そんなことを思い出した理由は、ルノー・メガーヌとVWゴルフという、欧州Cセグメントの “不動の定番” と “最新勢力” の2台を同時に乗ったからである。

現在最新の欧州Cセグメントである4代目メガーヌのリアサスペンションは、3世代連続で定番のトーションビーム方式を採用する。同方式はシンプル構造で低コストながら、半独立式による適度な路面追従性とロール剛性、そしてパッシブトーコントロール機能によるスタビリティが確保できることがメリットだ。
 

ゴルフ7.5 リアサスに見るグレード分け


トーションビームはそもそも、1970年代に発売された初代ゴルフで世に出て、90年代終盤から世界のFFがこぞって採用しはじめた方式である。しかし、当のゴルフは5〜6代目で一時的に独立マルチリンクに切り替えた。その理由は間違いなく、リアにマルチリンクを採用した初代フォード・フォーカスの走りが、世界的に絶大な評価を受けたからだった。

こうした経緯からも「FFでもっとも大切なのはリアグリップ」という冒頭のシャシー技術者氏たちの物言いが実感として納得できる。


しかし、さらに進化した現行ゴルフ7でトーションビームが復活して、しかも搭載エンジン性能やグレードによってリアサス形式を使い分けるようになった。たとえば、日本仕様のゴルフでいうと、1.2TSI搭載車のリアサスは安価なトーションビーム、1.4TSI搭載車以上のそれは高度な4リンク(≒マルチリンク)となる。

こうした事実からも分かるように、トーションビームは今なお現役バリバリの技術だが、求める性能によっては、なんらかの工夫も必要……ということだろう。
 

メガーヌ4 4WSに見るグレード分け

新型メガーヌのリアサスがルノーもすっかり使い慣れたトーションビームであることは前記のとおりで、今後登場予定の “R.S.” も同様であることも明らかになっている。

そのいっぽうで、新型メガーヌでは、VWのマルチリンクに相当(?)する独自のリアグリップ確保の新技術を投入した。ここまで書けばお察しの方も多いだろうが、“4コントロール” と名づけられたルノー独自の後輪操舵=四輪操舵システムのことである。

低速旋回中の写真。後輪と前輪とが逆位相になっている。
ボディ側面とタイヤの向きを比べると蛇角がついているのが分かる。

 
ルノーの4コントロールも性能やグレードによって有無を使い分ける。日本仕様でも1.2ターボの “GTライン” には4コントロールは装着されず、現時点では今回連れ出した高性能版の “GT” にのみ標準装備となる。
 

おさらい メガーヌの4コントロール


ルノーの4コントロールの制御は、おおざっぱには「低速は逆位相で小回り性と俊敏性アップ、高速は同位相で安定性アップ」というものだ。ただし、逆位相と同位相が切り替わるボーダー速度は走行モードによって異なり、標準の二ュートラルモードやコンフォートモードでは60km/h、スポーツモードでは80km/hが、逆位相と同位相のボーダーとなる。


四輪操舵でも逆位相は賛否両論あるケースが多い。実際、メガーヌGTでも、わずかな操舵量で嬉々と反応するクイックな身のこなしが印象的なものの、同時に少しばかり人工的な手応えは好き嫌いが分かれるだろう。

いっぽうで、高速域での同位相については “百利あって一害なし!” が世の定説であり、それはメガーヌGTでも例外ではない。実際、高速域で同位相が入ったときのメガーヌGTは、なによりリアがドシッと安定した感が如実である。後輪操舵がなくてもステアリング自体がかなりクイックな設定なのだが、少なくとも高速域ではリアの方向安定性がゆらぐような兆候は微塵もない。
 

比較試乗

4コントロール時代の走り方は?

従来のルノーは「リアが滑ってからのコントロール性」が最大のグルメポイントだったが、4コントロールの時代になったら、その認識もあらためる必要があろう。新型メガーヌGTでは意図的に弱オーバーステアに持ち込むことは不可能に近いし、そうした運転をしてももはや無意味でしかなくなった。


メガーヌGTの乗り心地は、その “GT” の名に相応しい引き締まったものだが、同時にその操縦性から考えると、意外なほどしなやかでもある。このクイックネスとリアグリップを四輪操舵なしで実現しようとしたら、バネもタイヤもさらに相当な幅で締め上げなければならなかっただろう。「新型メガーヌGTに求められる走りと快適性を両立するには、4コントロールは必須だった」との開発担当氏の言葉にウソはなさそうだ。
 

マルチリンクでサルーン的 TSIハイライン


リアにマルチリンクサスを採用するVWゴルフのTSIハイラインは、装備内容や価格を考えると、まさにメガーヌGTとドンピシャ競合する好敵手である(というか、正確には、後発のメガーヌGTがゴルフTSIハイラインを強く意識している)。

マルチリンクで基礎能力を高めた高いシャシーに、メガーヌGTより控えめなエンジンを積むゴルフTSIハイラインの味わいは、スポーティというより、高級安楽サルーンのそれである。上屋はピタリと安定しつつ、路面の凹凸を下半身の動きだけで御しきってしまうフラットライドはいまだにハイレベル。そしてリアグリップも1.4TSI程度のスピードでは、まだまだ限界が見えないのが心強い。

ゴルフの走行モード選択画面。ステアリング、パワートレインの設定を変更できる。可変ダンパーは搭載していない。

 
ゴルフにもメガーヌGT同様に、車両各部の制御を統合コントロールするモード切り替え機能がつく。しかし、可変ダンパーもないTSIハイラインで明確に変わるのは、基本的にパワステとパワートレインくらいのもので、正直なところ、モード切り替えのメリットはあまり感じられない。
 

メガーヌ 走行モードで4WS変化 オススメは?

メガーヌの走行モード選択は、4WSの制御も変わる。
「Perso」では、パワートレイン:ニュートラル、4WS:スポーツなんていう設定も可能。

 
対して、4コントロールの制御まで変わるメガーヌGTは、走行モードによる味わいの変化は大きい。パワステが軽く、さらに低速では逆位相が効きまくるコンフォートやニュートラルモードは肉体的負担が少ないが、ルノーらしい人車一体感を重視するなら、少なくとも四輪操舵だけはスポーツモードが好ましい。スポーツモードでは80km/hという高速まで逆位相なのだが、同時に後輪の操舵角が全体に小さいようで、速度を問わずにクイックさよりズシッと重厚な安定感が先立って、比較的自然な手応えと、それなりに俊敏なレスポンス、そして高速での絶大な安定感が共存する。


よって、個人的には、どんなシーンでも四輪操舵だけはスポーツモード固定がオススメである。もっとも、コンソールのR.S.ボタンを押すだけでは、すべてがスポーツモードになり “山坂道専用” になってしまうが、各制御が個別設定できるパーソナル(Perso)モードを使えば、パワートレインを標準のニュートラルモードにしたまま、四輪操舵だけをスポーツモードにすることも可能だ。

こうしたセッティングはあくまで一例で、各部の制御の組み合わせをじっくり吟味しながら自分好みに追求していくのも、新型メガーヌGTにおける知的な楽しみのひとつだ。
 

メガーヌGT/ゴルフTSIハイラインのスペック

スペック ルノー・メガーヌGT

■価格 3,340,000円 
■全長×全幅×全高 4395×1815×1435mm 
■0-100km/h加速 7.1秒 
■燃費 - 
■CO2排出量 - 
■車両重量 1430kg 
■エンジン 直列4気筒1618ccターボ 
■使用燃料 ガソリン 
■最高出力 205ps/6000rpm 
■最大トルク 28.6kg-m/2400rpm 
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ 

スペック フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン

■価格 3,319,000円 
■全長×全幅×全高 4265×1800×1480mm 
■0-100km/h加速 - 
■燃費 18.1km/ℓ 
■CO2排出量 128g/km 
■車両重量 1320kg 
■エンジン 直列4気筒1394ccターボ 
■最高出力 140ps/4500-6000rpm 
■最大トルク 25.5kg-m/1500-3500rpm 
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ