お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指す【脱貧困診断】。1月からスタートするつみたてNISAについて、森井じゅんさんに教えていただいています。今回は、つみたてNISAを始める口座を開く場合に、気を付けなければいけないポイントについてです。

「つみたてNISAについての質問です。証券会社でも銀行でも取り扱いがあるようですが、自分のメインバンクやゆうちょで始めたほうが安全ですか?それとも証券会社で新規で始めたほうが得ですか?取引先の種類や選ぶときのポイント、注意点を教えてください。これまで貯蓄以外のことはしたことがありません」(アパレル関連会社勤務・29歳)

さっそく、森井さんに詳しく教えていただきましょう。

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つみたてNISAはネット銀行やネット証券会社でも始められる

つみたてNISA口座の開設は、対面型の大手銀行や大手証券会社だけでなく、ネット銀行やネット証券など選択肢はいろいろあります。

現在では、口座開設でキャッシュバックやポイントが付くなど、それぞれの金融機関でさまざまな口座開設キャンペーンも展開しています。

対面で相談をしたいというのであれば、ご自身のメインバンクの窓口で相談してもいいでしょうし、新しいことを始めるなら新しいところと取引してみたいというのであれば、新規の金融機関で開設してもよいでしょう。

運用したい商品がある金融機関を探す

これまで説明してきたように、つみたてNISAの対象商品は、安全性やコストを重視したものに限定されています。長期の資産形成に適すると金融庁が認めた低コストの投資信託とETF(上場投資信託)に限るため、現在131本が対象です。

そして、各金融機関が131本すべてを取り扱っているわけではなく、独自の選定基準で選んだものをラインアップしています。つまり、金融機関によって、取り扱っている商品が違うということです。

特に対面型の金融機関では、選びやすいよう、取扱商品が絞られていることが多いです。ご自身がどんな商品を運用したいのかを考え、その商品を取り扱っている金融機関を選ぶことをオススメします。

そして、サービスの違いもしっかり確認しましょう。

たとえば、積み立て可能な最低金額は、金融機関により異なります。月1万円以上を積み立て額としているところもあれば、1000円以上と設定している金融機関もあります。さらにネット証券では100円から積立額を設定できるところもあります。

また、金融機関によっては、ボーナス時期に自動で積立額が増やせるサービスもあります。

できるだけ少額から始めたいと考えているなら、最低金額の設定値がいくらなのかも、選定ポイントになるでしょう。

そして、口座開設のスピードも金融機関により異なります。また、つみたてNISAの資金をどこから引き落とすことができるのかも、金融機関により違います。具体的に言うと、銀行口座や証券口座からの引き落としになります。

相談者さんのように、これまで投資をしてこなかった方は、つみたてNISAのためにわざわざ銀行口座から証券口座にお金を移動させるのは面倒に感じるかもしれません。その場合には、直接指定した銀行口座からお金が引き落とせる金融機関を選ぶのがよいでしょう。

また、一部ですが、クレジットカードの引き落としに対応している金融機関もあります。ご興味があればネット証券などを確認してみてください。

いずれにしても長く付き合える金融機関を慎重に選ぶことが大切です。

つみたてNISAの手数料は金融機関によって違いはある?

つみたてNISAで扱う投資信託は、購入手数料がゼロとされています。つまり、どの金融機関で買っても購入時手数料はがかからないのです。

また、信託報酬については、商品ごとに決まっているため、同じ商品であれば金融機関が異なることで差が出るということはありません。

ただし、ETFの手数料は購入時手数料が商品金額の1.25%以下とされていて、これは金融機関により変わってきます。ETFを運用したいと考えている人は、ここも吟味する必要ありますね。

また、つみたてNISA口座を開設したあと、別の金融機関で取り扱っている商品が気になり始める、ということもあるかもしれませんね。

つみたてNISA口座は、ひとつの金融機関でのみ開設できます。しかし、1年に一度だけ、金融機関を変更できます。開設時、慎重に金融機関を選ぶことはもちろん重要ですが、2度と変えられないわけではないので、その点は深刻になりすぎなくても大丈夫です。

つみたてNISAは投資初心者に向いていますか?

ここまで説明してきたように、つみたてNISAは安全性や低コストに重きを置いた制度です。投資初心者でどれを選んだらいいか分からない、という方も絞られた商品のラインアップから選ぶことは、そこまで難しくないでしょう。

また、つみたてNISAは年間40万円が上限です。つまり、月額でいうと、3万円強が上限です。まとまったお金がないから投資は……と躊躇していた人にとってもハードルが低いです。

前回お話したように、毎月同額を購入するという積み立て型のスタイルは、購入単価が平準化されるので、高値掴みのリスクを和らげることもできます。つまり、投資のタイミングを見計らって始めなくても、一定程度のリスクは回避できるのです。

何より、少額の積み立て型というのは、コツコツ貯蓄が得意な人に向いている制度です。これまで貯蓄をしてきたけど、投資をしたことがない、という人には始めやすいでしょう。

しかし、つみたてNISAも投資です。つまり、貯蓄よりもリスクがあります。

確かに、運用可能な対象商品は金融庁が指定する条件をクリアしたものに絞られています、しかし、損失が出ないという保証ではありません。ましてや、将来の利益が約束されているわけではありません。

「つみたてNISAで投資できるのは金融庁が認めた商品だから大丈夫」のような誤解は絶対にしないよう、気を付けて欲しいと思います。

投資に使えるお金があれば、やってみたい。でも、なんだかんだと毎月カツカツだからやめておこうかな……。



■賢人のまとめ
つみたてNISA口座はひとつの金融機関でしか開設できません。どこを選ぶかは、自分にとっての利便性、そして、投資したい商品があるかどうかで決めるとよいでしょう。始めるのであれば、長く付き合える金融機関を慎重に選びましょう。しかし、投資は投資。リスクもあります。「つみたてNISAだから大丈夫、儲かる」というものではないことを、くれぐれも心に留めておいてください。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。