(台北 6日 中央社)立法院(国会)は5日、与党・民進党が推進してきた「移行期の正義促進法案」を可決した。法案は、過去の権威主義的な統治の下で行われた人権侵害やその結果の真相究明などを目指すもの。だが、法案の適用範囲などを巡り、野党・国民党などからは反対意見が噴出している。

法案には、政治資料の公開、権威主義の象徴の排除、過去の司法の是正、党財産の処理などの内容が含まれている。今後は、行政院(内閣)の下に独立した専門の委員会が設置され、これらについて調査や報告を行う。調査の拒否や妨害を図った者には過料が科せられ、政治資料の破棄や隠匿も処罰の対象となる。権威主義的な統治が行われていた時期は、1945年8月15日から1992年11月6日までと定義された。

蔡英文総統は昨年5月の就任以来、移行期の正義の取り組みを積極的に推し進めてきた。二・二八事件から70年を迎えた今年2月28日には、同法案を今国会で成立させる考えを示した。蔡総統は5日夜、自身のフェイスブックページを更新し、「多くの年配者や遺族たちはこの瞬間を心待ちにしてきた。われわれの社会、国家もそれは同じだ」と法案可決の喜びをつづった。

国民党のスポークスマン、洪孟楷氏は、適用の時期は明らかに国民党を標的にしていると反発。専門の委員会が行政権と司法権を同時に保持していると指摘し、違憲ではないかと主張した。また、行政院に委員会を設置することは、五権分立の精神に反すると強く非難した。

国民党に所属する台湾原住民(先住民)アミ族の廖国棟・立法委員(国会議員)は、日本統治時代に迫害を受けた先住民が対象にされていないと批判。タイヤル族の血を引く無党団結連盟の高金素梅・立法委員は、民進党は法案から先住民を排除し、再び踏みにじっていると訴えた。

(蘇龍麒、葉素萍、劉麗栄、劉冠廷/編集:楊千慧)