ポスティング制度は「NPB球団に不利」と指摘

 ソフトバンクが2季ぶりリーグ優勝を決めるなど、シーズンは大詰めを迎えた。昨季10年ぶり日本一となった日本ハムは、今季は序盤から調子が上がらず。最下位ロッテに4.5ゲーム差をつけた5位と低迷している。昨季より一足早くオフを迎える日本ハムの周囲は、早くも大谷翔平投手の去就を巡り、慌ただしさを増しているようだ。

 高校時代からメジャー志向のある大谷は、早ければ今季終了後にもポスティングシステムを利用してメジャー移籍する可能性が噂されている。先発投手に本格復帰して以来、大谷が先発する試合にはメジャー球団のGMやスカウトらが大挙。先日は日本の報道を受けて、アメリカでも「今オフに大谷はメジャー移籍するようだ」と報じられ、大きな注目を浴びている。

 キャッシュマンGM自ら北海道訪問をし、獲得意志のアピールをしたヤンキースの地元ニューヨークでも、大谷のニュースは尽きることはない。地元紙「ニューズデイ」電子版では「オオタニの事例はタナカを思い出させる」というタイトルで特集記事を組み、現在NPBとMLBが改定交渉を続けているというポスティング制度について、日米球団それぞれの立場から“解説”をした。

 かつては最も高い入札金を提示した球団が独占交渉権を手に入れ、選手との契約交渉を行った。2011年1月にレンジャーズは入札金として5170万ドル(約57億2500万円)を日本ハムに支払い、ダルビッシュ有投手と6年6000万ドル(約66億4400万円)の契約を結んだ。だが、その年の12月にポスティング制度が改定され、移籍金として上限2000万ドル(約22億1500万円)を支払う意思表示をした球団は、選手と直接交渉を行えることに。新制度の適用1号となったのは、そのオフにヤンキースへ移籍した田中将大投手だった。ヤンキースは楽天に2000万ドルを支払い、田中とは7年1億5500万ドル(約171億6300万円)の契約を結んだ。

 記事では、新制度に改訂した理由について「MLB球団がNPB選手獲得資金の高騰を防ぐため」とし、「最高クラスの選手を米国に送る、NPB球団が受け取る代償金が減った」と指摘している。NPB球団が受け取る金銭が減った分、選手は大きな契約を結べるようになった。だが、現行のMLB労使協定では、特に23歳の大谷の場合、大型メジャー契約は結べない。これでは「どう転んでもいい思いをするのはMLB球団だけ」と解説した。

「アーロン・ジャッジが2年後にNPB移籍を選ぶようなものだ」

 米国内では、現行のポスティング制度と労使協定の下で大谷がメジャー移籍を果たした後で、新ポスティング制度が決まるのではないかという話もあるという。記事では、先日のNPBオーナー会議で巨人の老川オーナーが言及したMLBとNPBによるポスティング制度の改定交渉の内容にも触れている。選手が結んだ契約の15パーセントをNPB球団が手に入れるが、契約が1億ドル(約110億700万円)を超えた場合は2000万ドルが上限として設定されるという案だというが、「これはNPB球団にとって、さらなる減収に繋がる」と分析。同時に「巨人はNPB最大のチームで、ポスティング制度をなくして、トップスターは国内に留めておくべきだという考え方。人気選手の国外流出を許す理由はない」と深い考察で指摘した。

 大谷がメジャー流出することで、日本のファンが受けるインパクトはどれくらいなのか。世界最高峰リーグと言われるメジャーを間近で見るアメリカのファンは、なかなか想像しがたいものだろう。そこで、記事ではこんな問いかけがされている。

「逆の状況を想像してみよう。アーロン・ジャッジが2年後にNPB移籍を選ぶようなものだ。あるいはクリス・ブライアント。あるいはカルロス・コレア。日本の宝と言われたヒデキ・マツイを思い浮かべる人もいるだろうが、彼は読売にポスティングされていない。マツイはFAとして29歳で巨人を離れ、ヤンキースとサインした」

 それぞれの思惑が入り乱れるポスティングシステムだが、どんな形で決着を見ることになるのか。オフは日米双方の動きに注意しておきたい。(Full-Count編集部)