これで3試合連続である。5試合連続ゴールとなる決勝点を決めた青木亮太の覚醒ぶりも目覚ましいが、こちらの“連続記録”はある意味でそれ以上にとてつもない。
 
 名古屋がここ3試合で挙げた計12得点すべてに、ガブリエル・シャビエルは確かな形で絡んでいるのである。
 
 27節の松本戦では先制のオウンゴールを誘うチェイシングから始まり、青木のアシストを呼び込むゴール前へのパス、自らの得点、佐藤寿人へのカウンターでのアシスト、そして青木へのアシストとなるフィード5得点に関与。
 
 続く28節町田戦ではシモビッチへのスルーパスとFKでのアシストがふたつ、そして劇的な後半アディショナルタイムでの直接FKを決めた。
 
 2試合・2得点・5アシストと「アシストのアシスト」がふたつ、これだけでも規格外である。
 
 しかし絶好調にして瞬く間に名古屋の攻撃の中心人物となった陽気なブラジリアンは、いわゆる“6ポイントマッチ”と呼ばれる2位・福岡との上位直接対決においても、その輝きを失うどころかさらに輝いてみせた。
 
 先制されて迎えた19分のコーナーキックを青木に合わせ、そのこぼれ球をシモビッチが決めて同点に追いつくと、後半にはDFの目を欺く見事なヒールパスで秋山陽介のアシストを引き出し、さらに78分にはまたもCKをニアのシモビッチに合わせ、方向が変わったボールをイム・スンギョムが頭で叩き込んでダメを押した。3-1の快勝劇は、やはり背番号44の左足によって演出された。
 
 G・シャビエルと名古屋の相乗効果は凄まじいものがある。そのゲームメイク力や得点に絡む能力もさることながら、チームを大きく変えたという点で見逃せないのが、セットプレーを武器に変えたことだ。
 
 彼の加入前の名古屋はセットプレーが泣き所で、そもそも今季の陣容には高さが揃っておらず、なおさらにキッカーの能力に左右されるところは大きかった。玉田圭司や田口泰士といった優秀なキッカーはいたが、G・シャビエルのキックは彼らを凌駕する精度と質があるのは結果を見るに明らかだ。
「セットプレーはどこまで行ってもキッカー。ドンピシャで合わせられたら防ぎようがない」とは歴代のGKやDFたちが常々ボヤいていた真理である。その真理を、これでもかと突いてくるのがG・シャビエルというわけだ。
 
 また、彼の加入と前後してセットプレーのメンバーが揃ってきたのもチームにとっては幸運だった。イム・スンギョムや新井一耀ら高さのある新加入組に加え、意外な存在感を見せるのが青木である。
 
 もともと身体能力が非常に高く、トレーニング中から素晴らしい跳躍力で驚かせてくれる選手。出身の流通経済大柏高は伝統的に空中戦の競り合いを重んじるところがあり、先輩の田口同様に「空中戦が強いね」と問うと、「流経出身っすからね。しこたま練習しましたもん」と言ってドヤ顔をするのがお決まりだ。
 
 青木は町田戦でも中央での競り合いに勝って得点を決めており、コーナーキックでは前述のようにニアでボールを逸らす役割もよく担う。こうしたセットプレーの威力倍増がチームに与えた影響は、ボールを保持するスタイルで攻め抜くためにも大きかった。相手が守備を固めても、精度の高いセットプレーの前では無力だからだ。
 
 流れとは関係ない場面でリードを奪い、あるいはビハインドを撥ね返せば、つまりは得点を奪いさえすれば、名古屋のサッカーは十二分に発揮されるようになる。相手が攻めに出れば出るほど、ボールは回しやすくなるからだ。
 
 しかしこれまで、こうした局面で流れのなかでの崩しにしか頼るものがなかったチームにとって、飛び道具でアドバンテージを稼げる現状のなんと戦いやすいことか。