●格安通信で注目したい数字

格安通信はかつて、ITに関心の高い40代男性が数多く契約し市場を牽引してきた。今や認知度も大きく向上し、幅広い年代で使われるようになっているが、足元はどういった層がユーザーになっているのか。

○調査結果から見る

MMD研究所の調査によると、格安SIMの利用者は12.1%(調査対象は43212人)に及ぶとしている。うち7.4%は格安SIMをメインに利用しており、ここにソフトバンクのサブブランドとなるワイモバイルを加えると10.8%となり、メインとしての利用は初の1割超えになったと報告する(UQ mobileについては格安SIMの扱い)。

今や男女問わず、幅広い年代に普及した格安SIM。幅広いとはいえ、顕著な動きはあるもので、MMD研究所は足元、60代以上の高齢層、10-20代若年層が動きを見せているという。前者は2016年10月対比で5ポイント増加、後者は同3ポイント向上したとしている。

スマートフォンの購入価格、契約データ容量も見てみよう。MMD研究所によると、SIMフリースマホは購入者の66.2%が3万円以内のものを選んでいるという。MVNOのセット販売端末として、もともとミドルハイ、ハイエンドモデルのラインナップが少なかったという事情も考慮すべきかと思うが、いずれも3万円以内で買えるファーウェイのP9 lite、富士通のarrows M03がランキング上位に来ているあたり、iPhoneを抜きにしてコストパフォーマンスに優れたスマホが支持を集めているといえそうだ。

契約データ容量は2〜3GBが最も多い。3GB以下では全体の73.7%に達する。ただし、MVNOごとによって、データ容量ごとの契約者比率のばらつきは大きい。このあたりは、キャンペーンなど各社の施策によって分かれているところかもしれない。

まとめると、ハイスペックモデルを選ぶほど、スマホには関心はなく、ヘビーユーザーにも該当しない、ごく一般的な層が増えていることが見えてくる。そしてそこには、10-20代若年層に加え、60代以上の高齢層も関心を示し始めているというのが、MMD研究所の調査からわかる結果だ。

●今後注目しておくべきこと

○MVNOは「安心・安全」への取り組みに注力

これらから、MVNOに求められるのは「安心・安全」を訴えかけていくことである。通信に関心の高い利用者であれば、補助は少なくて済むが、そうもいかないのが現状とうわけだ。実際、どのMVNOも安心・安全を重視した取り組みを進めている。

不安の解消・低減につなげるために、電話やチャットでの応答のほか、リアル店舗での対面販売を強化とサポートを行っている。それ以外の面でも、格安SIMに関するウェブコンテンツや小冊子の作成(NTTコミュニケーションズ)や、端末の1週間無料貸し出しサービスの実施(イオンモバイル)など、取り組み方は各社各様だ。

逆にいえば、この安心・安全への取り組みを進めている結果として、MVNOではサービス差別化まで手が回っていないのではないかと思われるほどだ。

○格安通信を巡り今後注目しておくべきこと

MVNOの求心力が高まることで予想されるのは、大手通信会社(サブブランドを含む)との競争の激化だ。先日、NTTドコモは「docomo with」という新プランを発表した。2万円半ばと3万円半ばの対象2機種、いずれかを定価購入することで、永続的に月額1,500円の割引きが得られるというプランだ。この端末の価格帯は、先に挙げた「MVNOで人気になっている端末の価格帯」と一致する。

ドコモ自体は、MVNOやサブブランドへの対抗策ではないとしているが、結果的に流出を防ぐ策となり、MVNOからの見方は対抗策に過ぎない。ドコモに続き、今後、他の大手通信会社がどういった施策を打ち出してくるのかは注目されるところだ。

「ミドルスペックのスマホの人気」「60代以上の高齢者への広がり」(10代への施策は学割ですでに大手は実施済みのため)といったMVNOにまつわるキーワードを頭の隅に置きながら、大手の施策と照らし合わせてみると、大手の本音が見えてきそうだ。