大げさに言ってしまえば、歴史の違いが結果に影響した一戦だった。U−20W杯の日本対ウルグアイ戦である。

 久保建英がもたらす興奮や期待と、南アフリカを下した初戦の結果によって、内山篤監督のチームはグループステージ突破を望まれている。成績上位の3位チームもベスト16入りできるだけに、現実的なターゲットとなっているのは間違いない。

 ただ、日本が今大会に出場するのは10年ぶりである。

 連続出場を誇っていた90年代後半から2000年前半のように、「前回大会の成績を超えなければ、自分たちの世代は評価されない」といったプレッシャーともモチベーションとも言えるメンタリティを、このチームは持つことができない。だからといって意欲が低いわけでなく、選手たちは野心を持って大会に挑んでいるが、その思いが対戦相手を上回っているかどうかば、また別の話になってくる。

 今大会のウルグアイは、南米王者として出場している。ファビアン・コウト監督は2011年のU−17W杯で準優勝を飾り、15年のU−20W杯でベスト16入りを果たした。国内での評価は高い。

 コウト監督の指揮下ではなかったが、13年のU−20W杯で決勝戦まで勝ち上がっている。若年層の大会における成果でも、監督の実績でも、日本とウルグアイには大きな開きがあるのだ。上位進出への思いは、彼らもまた強く太い。

 南米大陸のくせ者は、そもそも伝統国である。フル代表のW杯優勝はモノクロームの時代の栄光だとしても、ウルグアイのフットボーラーには輝ける遺伝子の継承者たる自覚と責任がある。

 その国のフットボールの歴史は、ゲーム中の決定的な場面で浮かび上がる。

 ウルグアイ戦の日本は、得点になってもおかしくないチャンスを作り出した。エースストライカーの小川航基が前半途中で負傷交代するアクシデントを、チーム全体の献身性で乗り越えていった。代わって出場した久保も、とくに後半は持ち味を発揮した。

 しかし、ゴールは奪えなかった。フィニッシュの精度が物足りなかったのは事実だが、ウルグアイがギリギリで踏みとどまったとも言える。前半38分に奪ったリードを保ち、後半の追加タイムに2点目をもぎ取るあたりは、堅守速攻を伝統とするウルグアイならではの試合運びである。

 ウルグアイらしさが強くうかがえるのは、2点目の得点者だ。左サイドバックの選手が、ゴール前まで走り込んで決めきっている。同点にされないために守備のオーガナイズを崩さず、それでいてサイドバックが好機のきっかけを見逃さないのは、したたかさと勝負強さの表われだった。

 話を日本に戻そう。0対2で敗れたものの、下を向くことはない。ウルグアイのクオリティは、今大会でもトップクラスだ。2失点目はいただけなかったが、ノックアウトステージ進出の可能性はつながれている。

 27日の最終戦で激突するイタリアは、フル代表と同じようにソリッドなディフェンスを強みとする。ACミランと代表で活躍したアルベリコ・エバニが統べるチームは、攻守における高さも特徴とする。

 日本対ウルグアイ戦の同日に行われた南アフリカ戦では、フィールドプレーヤーのスタメン6人が180センチ台だった。190センチ以上も2人いた。控え選手にも180センチ台が揃っている。メンバー構成を問わずに、リスタートは脅威となるだろう。南アフリカ戦の2点目も、191センチのFWがロングスローを頭で流し込んだものだった。

 負傷の小川が欠場することになれば、高さへの不安が増大する。ミスマッチが増えてしまう可能性がある。

 その一方で、日本にとってもリスタートは好機になるかもしれない。CKやFKの守備で、イタリアはゾーンを敷く。ゾーンの「間」にボールを入れることができれば、高さ不足とは関係なしに決定的なシーンを生み出せる。

 ウルグアイと同様に、イタリアも伝統国である。歴史の違いを乗り越える糸口のひとつは、リスタートにあると言えそうだ。