国外の素材を原石の段階で獲得、注目集まる新たな試み

 ソフトバンクの新たな育成戦略となるかもしれない。23日、ヤフオクドーム内で、新たに加入が決まったWBCキューバ代表のリバン・モイネロ投手、そして同じくキューバ人のオスカー・コラス投手の入団会見が行われた。ともに育成契約で、三笠杉彦球団統括本部副本部長は「今季からデスパイネが加入したこともありますし、それだけではなく、中南米地域にスカウトを置いて、有望選手の発掘をやってきた」と獲得の経緯を説明する。

 ソフトバンクは2014年オフに、日本ハムの通訳や、ドミニカやベネズエラのウインターリーグ球団で働いていた経歴を持つ萩原健太氏を、中南米スカウトに起用。即戦力の助っ人だけでなく、同地域の若手選手の調査、発掘も行ってきた。デスパイネ獲得により、キューバとのパイプも構築。今回のキューバ人2人の獲得は、国外の若い素材を原石の段階で獲得し、自前で育て上げるという、新たな試みとなるだろう。
 
 モイネロは今春のWBCにも出場しており、3試合に中継ぎとして登板して3イニングで7個の三振を奪っている。21歳にして、WBCのキューバ代表に選ばれている時点で、その潜在能力の高さを伺わせる。左腕から投じるストレートは最速149キロ。「WBCにも出ていましたし、左の中継ぎとして期待している」と三笠副本部長。178センチ、69キロと、まだ細身ながら、チームで不足気味の左の中継ぎ候補で、早い段階での支配下登録の可能性も感じさせる。

 その一方で、高い将来性を誇るのが、18歳のコラス。「もの凄いポテンシャルを持っている」と三笠副本部長が語るように、まさにダイヤの原石といえるだろう。186センチ、95キロと恵まれた体格を持ち、昨季のキューバ国内リーグに野手として23試合に出場。79打数22安打、打率.278で4本塁打を放っている。投手としての経験は浅いようだが、最速148キロを誇るという。

コラスが二刀流でプレーする可能性は? 本人は「大谷のようになれたら」

 実際に、日本ハムの大谷翔平のように「二刀流」としてプレーする可能性はあるのだろうか。コラス自身は「彼(大谷)のように自分もなれたらいい。打者としても、投手としてもいい選手だ。打者として出来るところを見せたいし、投手としても質のいいピッチングが出来る」と投手、野手双方でのプレーに意欲を見せる。

 実際のところ、ソフトバンク球団は野手としての素質を高く評価しているが、三笠副本部長は「適性を見てから」と、しばらくは投手、野手両方でプレーさせてみる方針だ。

 育成選手のため、まずは福岡・筑後市にあるファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で力を磨くことになる2人。「日本というのは素晴らしい国だと思っていたし、文化の違いなども含めて、日本でプレーしたいと思っていた」というモイネロと、「日本のプロ野球は質が高い、いいリーグだと思っていた。そこで吸収したいと思っていた」と語るコラス。カリブ海の島国からやってきた若き才能は「ジャパニーズ・ドリーム」を掴むことが出来るだろうか。

福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani