秋葉原駅と末広町のほぼ中間、外神田3丁目に店を構える『志奈そば 田中 second(セカンド)』。

元イタリアンシェフが営むこちらの店では、「丸鶏を軸としたアジ煮干し、鰯、日高昆布」の中華そばや「イタヤ貝とヒマラヤピンクソルト、沖縄海塩」の塩だれ中華そば、「バーニャカウダー風のアンチョビソース」のアンチョビ塩まぜそばなど、これまでの中華そばやラーメンとはまた少し違ったアプローチのメニューが並んでいます。

その中で、ひときわ目を引くのが『至高の塩かけそば 〜房総の恵み〜』(至高のかけそば)。お値段は1000円。具はありません。

メニューの紹介文にはこのようにあります。

房総産の伊勢海老、アワビ、サザエ、旨味とコクをしっかりと出した贅沢で最高級なスープに仕上げました。
麺とスープのみでお楽しみください。
こちらの麺は北海道産ゆめちから 国産米粉を、甘味の強いもの、粘りの多いもの、香りが高い粉を3種類ブレンドさせ、加水をあげて、モチモチと心地よい啜(すす)り心地の麺にしました。
しっかりと高級スープを受け止めてくれて、贅沢なスープをしっかり旨味を吸ってくれる麺に仕上げました。


くどいようですが、麺とスープのみで具は無いんです。そして、こちらの『至高のかけそば』は夜営業のみの提供、限定30食となっています。「至高」と銘打たれたこの“かけそば”、いったいどんな味わいなのでしょう。

実食

運ばれてきたのは、金色のスープと麺。

湯気が顔をかすめると、“海”が凝縮されたかのような香りに包まれます。なるほど「房総の恵み」とは言い得てます。海の香りってその個性ゆえ、鮮度やおいしさの山を越えてしまうとご存知の通り心地の悪いものになってしまうのですが、このスープはまさにおいしさのピークにある香りそのもの。

口に含むと、伊勢海老でしょう甲殻類特有の香ばしさがまず口を包み、アワビ、サザエなど貝類の濃厚な旨味がその後押しをします。旨味が強い食材特有の甘味が主体で、非常にまろやかで深い深い旨味です。海系のダシが本当に好きな身としては、ここで思わずため息。

そして麺。口に入れた瞬間、普段のラーメンをイメージしていたばかりに混乱しました。柔らかい、とても柔らかいんです。シコシコプリプリ、なんて表現をされる麺とは全く別。違う食材です。加水率を上げたと説明されるゆめちからと米粉で構成された麺は、ただ柔らかいのではなく、それでも輪郭がハッキリしていて「もちり」とした弾力が在る、繊細で奥深い味わい。
強引なのを承知であえて例えるとするならば、一番近いのは生パスタ、でしょうか。

旨味のグラデーション豊かなスープと、柔らかさと弾力のバランスがギリギリの麺。すすってはスープを味わい、すすってはスープを味わい、時折、息をつき、そして「このループがずっと続けばいいのに」と思います。

しかし、物事の例外にもれずこの至福の時間にも終わりは訪れます。

普段のラーメンだと、食べ終わった後のお冷をゴクゴクと飲むところまでがワンセット、“楽しみ”のワンセットだと思っていました。しかし『至高のかけそば』においてお冷は不要でした。いつの間にか「この旨味を水で流したくはない」という未練に支配されていたのです。

金色の余韻に包まれたまま、『志奈そば 田中 second』を後にしました。夜の外神田を歩きながら「次はいつあのかけそばを食べられるだろう」などと考えている自分に気が付き、「美味しいものは怖いな」とも思いました。

大変、ご馳走様でした。

志奈そば 田なか セカンド
東京都千代田区外神田3-4-1
https://goo.gl/maps/MBsD5BJ5FBF2

営業時間
(火)〜(金)
11:00〜15:00(L.O.)
17:00〜20:45(L.O.)

(土)
11:00〜20:45(L.O.)

(日)
11:00〜18:00(L.O.)

月曜日定休日