連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第24週「光の射(さ)す方へ」第134回 3月13日(月)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:中野亮平


134話はこんな話


昭和49年、キアリスが映画をつくることになった。

守ることは停滞やない


栄輔(松下優也)のエイスが自己破産したわけを紀夫(永山絢斗)は「時代に踊らされてしまったのやろ」と分析、キアリスの経営を考え直そうとする。だが、スピードが大事と息巻いてきた健太郎(古川雄輝)は、見直しや縮小と言われても納得できない。
「守ることは停滞やないと思っている」と紀夫は説得するが・・・。

あのゆりさんが


潔(高良健吾)とゆり(蓮佛美沙子)の家に住まわせてもらった栄輔は、家にずっといて主婦業をしているゆりに「もったいないなと思って、あのゆりさんが」と不思議顔。以前、社員にも言われていたし、よっぽどデキる女だったのだなあ。
「子供を産んで育てる家庭を一番に」と言うゆりだったが、近所の子供に英語を教えていた。子供も育ったいま、彼女なりに新たな道を模索している。ゆりってたくましい。
栄輔が、子供をひざにのせて、最初は戸惑った顔、徐々にリラックスした顔になっていく流れがほのぼの。

ゴッドファーザー


レリビィで流れてきた「ゴッドファーザー」(72年)のテーマ曲に反応する明美(谷村美月)。仕事帰りに映画を見ることがあるという。独身だから、お酒飲みに行ったり映画観に行ったりするのだなと納得しつつ、栄輔と観に行ったんじゃないかと勝手な妄想をしてしまった。
「おっちゃんがスパゲティーつくるところが美味そうなんや」と映画を紹介する明美。パスタやミートボールやカクテルのレシピを真似しようとする映画ファンは実際多い。
「ゴッドファーザー」はざっくり言うと家族のお話なので、キアリスファミリーを築き上げた「べっぴんさん」とも共通するところもないこともない。

熱い思いは映画の大好物です


すみれは、映画をつくることにする。
経費がないが、自分たちで出資することにした。さすが。
妙に芝居がかった男・キャメラマンの亀田(上地雄輔)が登場し、みなにアドバイス。
キャメラマンは社長ってキャメラマンが目の前にいるのに、失礼な武ちゃん(中島広稀)。
そんな武ちゃんだが、紀夫が一番頼りにしてるひとと言われ、助監督に。そのとき、すみれの顔がアップになって、なんとなく微妙な表情をしているような・・・。

すみれ、君枝「うちの孫で」
すみれ、君枝「藍いいます」
ハッピーアイスクリーム(同時に同じ事を言ったあとに言う言葉)になってしまい、あちゃーって顔になるふたりが素朴。

脚本家が明美。映画にも詳しいし、ってたまに観ているだけなのに。ある分野に詳しくないひとたちの気楽な感じにリアリティがある。ものづくりにプライドをもったひとたちなのだから、映画の世界にも敬意をもって取り組んでほしい。

脇役の栄輔に劇的な部分が背負わされ、主役たちにドラマがない。映画づくりも、引退間近のお年寄りの手慰みみたいで切実感がなく、ドラマの引きとしては弱い。最後のふんばりどころなので、がんばって美しい終わり方をしてほしい。
(木俣冬)