執筆:山本 ともよ(管理栄養士)
医療監修:株式会社とらうべ

新しい年を迎えて心機一転。

「今年はもっと健康的な生活を送ろう!」

そう決意した方もいるかもしれません。

先日あるTV番組で「ベジタリアンだから健康だ」という話題がありました。ベジタリアンと言えば、肉や魚などを食べない食生活。

ただ、それは本当に健康的なのでしょうか?

ご一緒に詳しく見ていきましょう。

ベジタリアンにも種類がある

ベジタリアン(vegetarian)という言葉は、「健全な、新鮮な、元気のある」という意味のラテン語「vegetus」に由来するとされています。日本語では菜食主義(菜食主義者)と呼ばれます。

ベジタリアンの定義は流動的です。同じ菜食中心の食生活でも、目的の違いが関係しているからでしょう。

宗教、健康、生命の尊厳のほかに、環境問題や食料問題といった地球環境保全や途上国援助など、さまざまな理由で実践されています。

ここでは、食事内容から主要なベジタリアンを分類してみましょう。

ラクト・オボ・ベジタリアン(乳卵菜食)


植物性食品と乳製品・卵を食べる。

ラクト・ベジタリアン(乳菜食)


植物性食品に加えて乳・乳製品などを食べる。

ヴィーガン、ピュア・ベジタリアン、ダイエタリー・ヴィーガン


植物性食品のみの食事をする。

ベジタリアン=健康とは限らない?

健康や美容に関する不調を機に、ベジタリアン生活を始める人が多くいます。

食事は身体の状態に大きく関わるため、「不調を起こす偏った元の食生活を見直す」という点では大変有意義で、不調の改善にもつながる可能性はあります。

しかし、健康的な身体は、五大栄養素と呼ばれる「炭水化物」「タンパク質」「脂質」「ビタミン」「ミネラル」をバランスよく摂ることで保たれます。

つまり、いずれかの栄養素に過不足がある食事は、健康的とは言えません。これはベジタリアンであるか否かにかかわらず言えることです。

ベジタリアンのメリット・デメリット

穀物や野菜類には食物繊維やビタミン・ミネラルが多く含まれるため、この摂取量が増えれば身体の調子を整えるように働きます。

また、それまで肉や魚をたくさん食べていた人が野菜類が中心の食事となり摂取カロリーが減れば体重が減り、「身体が軽くなった・すっきりした」と感じられるでしょう。

一方で、野菜中心の食生活は肉・魚に多く含まれるタンパク質、ビタミンB群、カルシウム、鉄分などが不足しがちになります。

これらの栄養素は、ある程度身体に貯蓄できます。しかし、長期にわたる不足が続くと不調を起こします。

ベジタリアンに起こりやすい栄養不足

タンパク質、カルシウム、鉄分などが不足すると、筋力低下、肌荒れ、貧血、骨粗鬆症などを引き起こします。

これらの状態は初期には「日常の中でなんとなくつらい」という程度ですが、それが長く続くとめまいや吐き気、骨折といった重篤な症状を起こします。

また、ビタミンB群やカルシウムは神経系を正常に保つ働きがあるため、身体にとどまらず、イライラや集中力の欠如、さらにはうつ状態などの精神的症状にもつながります。

これらの症状が必ずしもベジタリアン生活が原因とは限りませんが、少なからず関係はしているでしょう。

健康的にベジタリアンを続ける方法は?

当然ながら、健康のためにはバランスの良い食生活が基本です。

欧米にはベジタリアンが多く、健康的に継続されています。これは、乳卵菜食が多いことが関係しているかもしれません。

肉や魚でなくても、卵や乳製品、大豆製品で必要な栄養素を補うことは可能です。

決してベジタリアンの生活が身体に悪いわけではありません。どんな食事方法であっても、正しい知識とそれを実践する努力、そして自分の身体の状態を正しく感じる心が重要です。

<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供