近視を裸眼で1.0程度まで回復させるという「レーシック手術」。眼鏡やコンタクトレンズの煩わしさから解放されるとあって、手術を受けたり検討中という人も多いのではないでしょうか? その反面、術後のトラブルが多いのも事実で、メディアでも大きく取り上げられています。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、著者の徳田先生が、レーシック手術を受ける前に知っておくべきリスクなどの「闇」の部分を詳細に解説しています。

眼鏡とコンタクトレンズ

近視が手術で治る。私のような近視の人にはとても素晴らしいことのように聞こえます。実際、そのような触れ込みで広がった屈折矯正手術。なかでも、レーザーを用いたレーシック手術は多くの人々が受けました。手術で近視が矯正されて眼鏡やコンタクトレンズが要らなくなった人々が大勢いるのは事実です。しかし、手術という人間の行為は完全で無欠点ではありません。レーシック手術にも闇の部分があるのです。

近視や遠視、乱視は屈折のずれからおきます。屈折のずれを矯正するもので最もよく利用されているのは眼鏡です。日本には室町時代にキリスト教の宣教師フランシスコ・ザビエルが初めて伝えたとされています。その後、眼鏡はファッションの一部にもなりました。最近では、カラフルなものも出回っていますね。映画ファンの私は、往年の喜劇映画スターのハロルド・ロイドが掛けていた円形眼鏡が好きでした。現代では眼鏡はもはや医療器具と言うよりファッションの一つとなりました。

そのあとに開発されたコンタクトレンズもかなり普及しました。眼鏡をかけることが難しい状況にある人々にはよい商品となりました。角膜の表面に装着されるコンタクトレンズの開発は、その後の屈折矯正手術の登場につながることになりました。角膜そのものを矯正すればよい、と考えるようになるからです。それを可能にするためにはテクノロジーの発展が待たれていました。案の定、それは可能になりました。それは、超短波長のレーザーの開発によってでした。

エキシマレーザーの開発

そのレーザーとはエキシマレーザー。半導体製造でも用いられるほどのもので、精巧に組織を削ることができます。また、熱を出さないので、周りの組織にダメージを与えることはありません。これをコンピュータ制御でビーム射しますので、ミクロレベルの精密さで「かんな」のように角膜組織の形を変えることができるのです。実際のレーシック手術ではまず、角膜の表面を部分的に切り込みを入れてフタのようなフラップを作り、その内部の組織にレーザーを当て、最後にフラップを戻します。

欧米に続きレーシック手術は2006年に日本でも正式に認可されました。ただし、保険医療としては認可されていません。それは、眼鏡やコンタクトレンズが保険認可されていないのと同じ理由です。そのため手術費用はかなり高額です。施設により異なりますが、片目あたり10〜30万円程度かかります。

それでもこの手術はかなり人気を博しました。眼鏡をできるだけ避けたいと考える若い人々が中心です。また最近では、このレーシック手術も新しい技術を導入しています。ウェーブフロント・ガイドというタイプのものでは、あらかじめ光の乱れ具合を測定しておき、その程度を最小にするような方法でカスタマイズすることに成功しています。

レーシックの手術時間は約40分間と短く、日帰り手術で行われます。大部分の人は手術の翌日から裸眼での視力が1.0以上に回復します。回復が不十分なケースの場合、再手術が必要となったり、眼鏡やコンタクトレンズの装着が追加で必要となったりすることもあります。

レーシック手術の闇とは

しかしながら、手術は100%成功するとは限りません。レーシックも手術なのです。手術しても近視が残ってしまったケースもあります。また、矯正しすぎて遠視になってしまったりするケースもあります。角膜のフラップが手術後ずれたり、感染したりすることも報告されています。東京都内のある眼科クリニックでこの手術を受けた患者のうちから感染性角膜炎を発症したケースが多数出たことが報道されました。手術器具の滅菌消毒が不十分であったことなど、ずさんな管理体制が明るみになりクリニック管理者逮捕にまで至りました。

上に挙げた種類の合併症は、数%程度と比較的まれですが、ドライアイなどはかなりの割合で認められます。目が乾燥して違和感を感じたりします。乾燥がひどくなると角膜炎や結膜炎等をきたすこともあります。そのため、手術後も、眼科専門医の指導に従ってきちんと点眼を行い、定期的な検査を受けることが大事です。

最も重要なことは、このような合併症のリスクについてきちんと説明を受けてから手術を受けるかどうか判断することです。それぞれの合併症の可能性をきちんとした数字で説明してくれる眼科クリニックがオススメですね。日本眼科学会の講習を受けた眼科専門医で受けることをお勧めします。手術後の合併症の割合は術者によっても異なるからです。私の場合はそれよりも、他の人からの見た目ではなく人間としての内面を高めていくことを目指すべきと若者には話すようにしています。

文献

Kruh JN, Garrett KA, Huntington B, Robinson S, Melki SA. Risk Factors for Retreatment Following Myopic LASIK with Femtosecond Laser and Custom Ablation for the Treatment of Myopia. Semin Ophthalmol. 2016 Apr 6:0.

image by: Shutterstock.com

 

『ドクター徳田安春の最新健康医学』

世界最新の健康医学情報について、総合診療医師ドクター徳田安春がわかりやすく解説します。生活習慣病を予防するために健康生活スタイルを実行したい方や病気を克服したいという方へおすすめします。

<<登録はこちら>>

出典元:まぐまぐニュース!