6日の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選第3戦・イラク戦(埼玉)まで3日。2日から埼玉県内で合宿に入っている日本代表だが、3日にはキャプテン・長谷部誠(フランクフルト)、エースナンバー10・香川真司(ドルトムント)ら8人が新たに合流。20人でトレーニングを行った。
練習前には西川周作(浦和レッズ)、東口順昭(ガンバ大阪)の両GKと、柏木陽介(浦和)、永木亮太(鹿島アントラーズ)の両ボランチがヴァイッド・ハリルホジッチ監督に指示を受けた。その後には「メンタルプレーヤー」として再招集された川島永嗣(FCメス)も呼ばれ、チーム統率役としてのメッセージを与えられたという。その後、ミーティングを経てトレーニングが始まり、前日合流組は5対5のゲームなど実戦的な内容を消化。川島を含めた当日合流組はランニングや軽いパス回しなどを1時間程度行うのみだった。
全体練習が終わった後、ハリルホジッチ監督は清武弘嗣(セビージャ)を呼び、ペナルティエリア手前から何本かボールの出し入れをして最終的にシュートまで持っていく特別練習を15分間課していた。かつてセレッソ大阪の先輩・森島寛晃(現強化担当)が「真司にあってキヨにないのはゴール」という鋭い指摘をしたことがあったが、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ人指揮官も彼に同じような印象を抱いているはず。だからこそ、あえてトップ下からゴール前へ出て行って得点するパターンを何度も繰り返させたのだろう。
前日のメディア対応で清武は「左(サイド)で出るんですかね」と半信半疑の表情で語っていただけに、すでにハリルホジッチ監督からイラク戦のトップ下起用を告げられていることもあり得る。実際、香川の方は「特にまだ(イラクの映像を)見てないので。まあイラクどうこうよりは自分たちじゃないですかね」とコメントした通り、万全の準備をしている様子はなく、11日のオーストラリア戦(メルボルン)に照準を合わせている可能性も高い。清武自身は「今回2連戦では6ポイントほしい」と貪欲さを前面に押し出しており、それをゴールという結果で演出してくれれば理想的だ。
特別練習は槙野智章(浦和)と植田直通(鹿島)にも課せられた。槙野はシリル・モワンヌ・フィジカルコーチとダッシュを何本も行い、コンディション面の追い込みをかけていた。一方の植田は手倉森誠コーチとヘディング練習にまい進。途中でハリルホジッチ監督も顔を出して、アドバイスを送っていた。すでに吉田麻也(サウサンプトン)と森重真人(FC東京)の両センターバックがイエローカードを1枚ずつもらっているめ、イラク戦に2人が出場した場合、オーストラリア戦で揃って出場停止になる可能性もゼロではない。その最悪のシナリオを想定し、イラク戦では合流が4日になる吉田を温存して槙野と森重のコンビで行き、屈強なフィジカルを誇るオーストラリア戦で吉田・植田という高さのあるコンビを送り込むというシナリオも十分、考えられる。彼らの特別練習はそのための準備かもしれない。
いずれにしても、欧州で出場機会を失っている香川や本田圭佑(ミラン)、岡崎慎司(レスター)に重要な2連戦の全てを依存するわけにはいかないのは確か。キャプテン・長谷部も「初戦は絶対に勝たなければいけないし、2試合目も勝ちに行くって監督も言っていた。やっぱり初戦(UAE戦=埼玉)で敗れていますから。タイ戦(バンコク)はしっかりといい形でプレーができたけど、それを取り戻すためにやっていかないといけない」と強調していた通り、今回は結果が第一。誰が出ようとも、勝利を是が非でも手にしなければならない。
「イラクがオーストラリア、サウジアラビアと戦った試合を見ましたけど、2試合とも全く違うチームだった。オーストラリア相手にはブロックをしっかり作っていい守備をしていたので、そういうやり方をしてくる可能性も高いと思いますし、逆に後がない状況なので前に出てくる可能性ももちろんある。その両方を準備したい。自分たちが主導権握る時間は長いと思うけど、先制点が取れなくても焦らずじっくりとやることが必要かなと。イラクは後半の最後になってくると多少ルーズになってくるんで、我慢しながら最後のところで仕留められたらいいなっていうのはありますけどね」と長谷部が語るように、チーム全員が同じゲームプランを描きながら戦えれば、勝利は自ずから手に入るはず。トップ下が有力視される清武がその主要な担い手になってくれれば最高だ。
文=元川悦子
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