8月25日に発表された日本代表のメンバーには、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の揺るがせざる思いがにじんでいる。9月1日と6日のワールドカップ最終予選で、躓くことは許されないという決意が。

 メンバーを発表した会見の冒頭で、指揮官は「シンガポール戦は絶対に忘れられない」と話した。昨年6月のW杯1次予選でシンガポールをホームに迎えた日本は、スコアレスドローを演じた。結果的に1次予選は首位通過を果たしたものの、カンボジアやアフガニスタンといった格下相手にも、力の差を見せつけることはできなかった。初戦で狂ったリズムが、最後までかみ合わなかった印象である。

 リオ五輪代表からの招集が大島と浅野のふたりだけとなっているのも、今回の2試合はロシアW杯への「線」ではなく、重要な「点」として位置付けているからに他ならない。「最終予選でリスクは取れない」と指揮官は話す。現時点でチームが備える実力と経験のすべてを注いで、UAEとタイから勝点3を奪うという決意が浮かび上がる。遠藤航ではなく山口蛍という選択肢になったのも、これまでの経験が重みを持ったからだろう。

 香川真司と清武弘嗣を発表したタイミングで、ハリルホジッチ監督はバックアップメンバーに触れた。「最終予選では年齢が少し上の選手でも、もし何かあったら常に頭に入っている」と説明した選手は、35歳の中村憲剛である。これもまた、最終予選は絶対に勝ちぬくとの意欲を示したものだ。

 サプライズと言うほどではないものの、太田宏介の復帰は興味深い。左サイドバックには長友佑都がいて、酒井高徳も控えているなかで彼を呼び戻したのは、リスタートのキッカーとしての期待を込めたものと読み取れる。長友を押しのけてスタメンに名を連ねるとは考えにくいが、ハリルホジッチ監督は太田を使うオプションを練るのではないだろうか。

 ハリルホジッチ監督が記憶に刻むシンガポール戦に、奇しくも太田は先発している。彼自身にとってもリベンジを果たす機会となるだろう。

 今回の最終予選は、6月のキリンカップ以来の集合となる。およそ3か月の空白期間があり、なおかつ選手によってコンディションが異なる。海外組の何人かは、1日のUAE戦の2日前に合流する。

 助走なしで迎える最終予選で、ポイントはふたつに絞られる。チームのコンセプトを呼び覚ませるか、選手のコンディションを整えられるか、である。