スマートフォン市場が横ばいになった。2016年第1四半期における世界のスマホ出荷台数は3億3,490万台だった(市場調査会社IDC調べ)。市場の拡大は前年同期比わずか0.2パーセント増で、過去最低の伸び率だ。

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この実績は、スマートフォンが桁外れの成長をする時代がほぼ終焉を迎えたことを意味している。誰も止められないとみられていたアップルのiPhone販売台数は前年同期比16パーセント減だった。iPhoneが前年比マイナスとなったのは2007年に販売開始されてから初めてのことだ。確かにiPhoneは前四半期に320億ドルの収益をあげたが、そのアップルでさえ「ニューノーマル」(新たな常識)を実感している。

こうした状況には、いくつか理由がある。なかでも最大のものは、スマホを必要としている人は誰もがすでに1台持っていて、それがあまりにも性能がいいので頻繁にアップグレードする必要がないというものだ。

ヴェンダーは自社の立ち位置をよく理解しており、市場シェアを巡る争いはますます激しくなっている。少なくともいま現在、トップにいるのがどこかというと、それはサムスンだ。同社は8,190万台のスマートフォンを出荷したが、その規模は大手2社(AppleとHuawei)の合計を超えるという(IDCの最新レポートによる)。

韓国のサムスンが市場をリードし続けている理由の1つには、エントリーレヴェルから超プレミアムまで幅広いスマホのラインナップを揃えていることにある。これにより同社は新興市場と既存市場の両方をターゲットにできる。実際に、ハイエンドの「Galaxy S7」と「S7 Edge」の3月の販売は「堅調」であったとIDCレポートが伝えている一方で、(エントリーレヴェルの)「J」シリーズは低価格志向や新規の顧客に訴求したという。

アップルは小型で値段も安い「iPhone SE」(基本的には「iPhone 5s」のボディを使った「iPhone 6S」)を投入して同じような戦略を採用している。低価格志向の顧客に訴える製品ラインを拡張することで、アップルは成熟市場での利益を拡大させている。しかしその戦略が奏功したかどうかはアップルが次の決算発表をするまで誰にも分からない。

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IDCレポートでもう1つ興味深い情報がある。それは、あまり知られていない中国系ブランドのOppo ElectronicsとVivoが、比較的名の知れたLenovoやXiaomiといった企業を押しのけてスマートフォンヴェンダーの4位、5位となったことだ。

中国が世界最大のスマートフォン市場であることを考えると、この順位変動は特に驚くべきことではない。しかし、市場の成長はこの国でも減速している。IDCレポートによると、中国における昨年のスマホの出荷台数は前年比2.5パーセント増であったが、2013年に記録した62.5パーセントという数字からするとかなりの落ち込みだ。

当初、中国の消費者は誰もが安価な自国製のAndroidスマホを欲しがったため、ある時期Xiaomiが中国で最大のスマホベンダーになったのだと指摘されていた。

アップルは価格を意識した「iPhone 5c」で市場をある程度握れるだろうと考えたものの、中国人の考え方は違っていた。iPhone 5cはアップルのプレミアム製品と比較して常に劣っていたのだ。そして現在、IDCのデータが伝えているのは、中国の人が高級志向を強めているということだ。この国におけるスマホの平均販売価格は2013年の207ドルから昨年は257ドルに上昇した。

そのため、Huawei、Oppo、Vivoといった成功を収めた企業はすべて、スマホを250ドル程度で販売している。これによって各社のポジションが強化されたとIDCのシニアリサーチ・マネジャーのメリッサ・シャウは述べている。

しかし、それによって運が変化するとは言えない。「このダイナミックなスマートフォンの市場は、Xiaomiといった熱狂的な人気を博したブランドでさえ顧客ロイヤルティーを維持するのが難しいことを示している」とシャウ氏は述べている。スマホ市場は落ち着いたとはいえ、ハンドセットメーカーの運勢は変動し続けるだろう。