日本の「エリート外国人」が「メジャーへの回帰というレアな旅を完結」へ

 昨年まで阪神に6年間、在籍したカブスのマット・マートン外野手について、ESPNが特集記事を組んだ。「マット・マートンは日本からメジャーへの回帰というレアな旅を完結させることを望んでいる」とのタイトルで、マイナー契約でメジャーキャンプに招待選手として参加している好打者について取り上げている。

 マートンは2009年以来となるメジャーの舞台を目指し、2005年にメジャーデビューを飾ったカブスに8年ぶりに復帰した。記事では「マット・マートンは6年にも及ぶ日本での成功から、MLBへの帰還というゴールを果たすべくカブスの春季キャンプに参加している」と紹介。ただ、キャンプ序盤に虫垂炎の手術を受けたため、現在は遅れをとっているという現状についてレポートしている。

 記事によると、マートンは当初、日本でプレーするのは1年程になると考えていたという。しかし、「結果としてそれは6年間続き、『エリート外国人』となった」と指摘している。

 マートンは06年にはカブスで144試合に出場し、打率2割9分7厘、13本塁打、62打点をマークした好打者。実力者であることは確かだが、MLBで輝かしい実績を持っていても、日本では成功できない打者もいる。特集では、なぜマートンが1年目の2010年に日本記録(当時)のシーズン214安打をマークするなど大きな成功を収められたのかについて、以下のように分析している。

日本では「つらい経験」も…メジャー復帰へ「やり残したことがある」

「これまでの外国人選手たちとは異なり、マートンは決して長距離砲という選手ではなかった。マートンは常に洗練された打者であり、球場全体を使った打撃ができる選手であった。どんなカウントからも変化球を投じる投手が多い日本で、そういったマートンの本領はいかんなく発揮された」

 一方で、阪神時代には本塁への激しいタックルや、チームメートの左腕能見に対する発言で物議を醸したという事実も紹介。これについては、本人も「つらい経験だった」と振り返ったという。

 マートンは34歳にしてメジャー復帰を目指す理由について、ESPNの取材に「日本に長くいすぎてしまったかもしれないという時期になっていた。現在の自分の目標は、その瞬間を大切にして、毎日戦っていくということだ。やり残したことがあると思っている」と答えている。

 記事では「マートンは30代半ばを迎え、高額な年俸に見合う成績を残すことがより困難となり、MLBへ最後の挑戦をかける場合の時間も残り僅かになっていた。彼はファンに感謝し、チームメイトに手紙を書き、感謝の気持ちとともに阪神に別れを告げた」と言及。同じように日本から再び米球界に挑み、成功を収めた例として、元広島の右腕ルイス(レンジャーズ)の名前を挙げている。

カブスで昇格できなければ「他球団からの興味を示されることも十分に考えられる」

 さらに、かつてカブスでは赤毛で知られていたマートンが丸刈りでキャンプに臨み、関係者を驚かせたというエピソードも紹介。日本での経験で逞しさが増したことは確かだろう。

 マートンを獲得したカブスのセオ・エプスタイン球団本部長は「彼は米国でも成功していたかもしれない。しかし、彼は日本を気に入り、また日本も彼を気に入った。家族からのサポートも得て過ごしていたが、今、彼はカムバックを望んでいる。メジャーリーガーとして大成することは彼にとっても素晴らしいことだ」と話しているという。

 もちろん、メジャー昇格を果たせるかは分からない。カブスの外野には実力者が揃い、ハードルは高い。ただ、記事では仮にカブスでメジャー切符を手にできなくても、マートンにはチャンスがあるとの見方を示している。

「もし、カブスのロースターに入れなかった場合、マートンはマイナー行きを受け入れるのだろうか。この質問にマートンは直接答えることはなかったが、彼は最高の舞台でプレーするために必要な準備をしていくとしている。仮に(本拠地の)リグレー・フィールドに立つことが叶わなかった場合、マートンは他球団からの興味を示されることも十分に考えられるだろう」

 記事の中で、「自分はいつだって他人と異なる存在であるということを誇りに思っている」と話しているマートン。8年ぶりのメジャーの舞台へ、戦いは始まったばかりだ。