唐突だが、「399×499=199,201」の計算ははたして正しいか、間違いか──。電卓を使わず、5秒以内に答えてみていただきたい。

きっと「そんなのムリ」と思う人が大半だろう。逆に、ヤマ勘ではなく、5秒できちんと答えられれば、「数字に強い人」と見なされること間違いなしである。

実はこの問題、誰にでも簡単に検算できる。それには「九去法」という検算法を使う。九去法とは、文字どおり「9を取り去る方法」だ。これをマスターすれば、たとえば部下から提出された書類の数字を見て、パッと計算ミスを指摘できるようにもなる。確実にあなたの株は上がるだろう。

九去法は足し算、引き算、かけ算、割り算で、少しずつやり方が違うが、ここではその威力を最も発揮するかけ算で説明する。

図にある「399×499=199,201」が正しいか、間違っているかを検算してみよう。まず左辺の数字から「9」を取り去ると「3」と「4」が残り、「3×4=12」となる。この数字を最終的に1ケタになるまで、各ケタを足し算していく。12の10の位の「1」と、1の位の「2」を足し「1+2=3」となる。

一方、右辺の数字からも「9」を取り去り、残りをすべて足せば「1+2+0+1=4」となる。最終的に残ったこの左辺と右辺の数字を比べ、「3≠4」なので「399×499=199,201」は間違いであるという答えが導き出せる。たったこれだけのことだ。慣れれば5秒でできるようになる。

九去法は9を含まない数字でも使える。たとえば「1,726×125=218,750」の正誤を判断する場合はどうするか。まず、左辺と右辺ともに足して9になるものを消していく。左辺の「1,726」は「7」と「2」を足すと9なので消す。残りの「1」と「6」を足して「1+6=7」となる。

「125」はどれも9にならないので、そのまますべてを足して「1+2+5=8」。そして「7×8=56」となるが、56に9はないので、このまま「5」と「6」を足して「11」。これを1ケタにするために各ケタを足せば「1+1=2」となる。

一方、右辺の「218,750」は「2と7」「1と8」を足すと9になるので消す。残りは5と0なのだから、「5+0=5」。この結果、「2≠5」であるから、「1,726×125=218,750」は間違いということになる。

このように九去法は、「9」と「足して9になる数字」をどんどん消していけばいいという簡単な方法なのだ。ここで使う計算は、小学生レベルのものである。

要は九去法を知っているか否かだけの差で、あなたは「数字に強い人」に変身できるというわけだ。ちなみに、どうしてそうなるかを説明しようとすると、少し難しいので省略する。

家で子どもの勉強を手伝っているときに、気分転換で話題に出せば、「お父さんスゴい!」となること請け合いだ。奥さんもあなたを見直してくれるだろう。

(志進ゼミナール 塾長 小杉拓也 構成=田之上 信)