歴史ゲームの三国武将・戦国武将の顔はどうやって決めてるの? メーカーに聞いてみた
いまや一大ジャンルとなった三国志や戦国時代の武将たちが登場する歴史ゲーム。けれども登場する武将たちは資料に残されているような顔はしておらず、イケメンや美女ばかりです。
その方がキャラクターとして人気が出やすいのはユーザーとして理解できるものの、いったいどうやってその“顔”を決めているのでしょうか?
気になったので、ゲームセンターで対戦型カードアクションゲーム『英傑大戦』をサービス展開している株式会社セガさんにお邪魔して、どのように顔のグラフィックを決めているのか聞いてきました。
若い頃の信長をイメージしてデザイン
- 早速お聞きしたいのですが、『英傑大戦』の信長は肖像画とかなり違いますが、どのようにしてデザインを決めていったのでしょうか?
- 本作の織田信長は、『英傑大戦』の以前に作られた『戦国大戦』のデザインを継続して使っています。
信長と言えば肖像画のように口ひげを生やしたイメージが一般的ですが、『戦国大戦』ではライバルとして登場するキャラクターが武田信玄や上杉謙信などの熟練の武将たちでした。それに対抗する新興勢力、若い勢力ということを強調するために、信長は若い姿でデザインされています。
例えば頭の髷(まげ)は茶筅髷(ちゃせんまげ)と呼ばれているもので、信長が若く、やんちゃしていた頃の髪型として、「信長公記」に書かれています。そういった記録をベースにデザインしています。
キャラクターが映えるところを取り上げる
- まず設定している年齢から違うんですね。ということはそもそも肖像画がベースになっているわけではない?
- そうですね。茶筅髷以外にも虎の皮(ルイス・フロイスの『日本史』に記述あり)を着せたり、信長は複数の家紋を持っているのですが、そのなかでもアゲハ蝶の家紋をマントがなびいて見えるようにして貰ったりといったお願いを概要書を通じてイラストレーターさんにしています。
それ以外にも背景にある永楽銭(イラスト右側)や、帝から拝領した十六葉菊の家紋を頭の部分に、また鷹狩のイメージから鷹がいて、その後ろに安土城を描いたりと、盛り盛りに要素を入れてもらっています。しっかり収まっているのは、イラストレーターさんの実力によるものですね。
- 甲冑にも家紋が描き込まれていますね。これはイラストをじっくり見ないとわからない。
- 弊社の場合は肖像画ひとつからイメージするというよりも、家紋やエピソードなど、いろんなところからそのキャラクターの魅力になりそうなものをピックアップして取り入れています。
とくに極端な例で言えば、平清盛については肖像画を全く反映させていません。
武将の善の部分をピックアップ
- 平清盛と言えば坊主頭の肖像画や像が有名ですね。
- 平清盛は晩年の姿、平家物語をベースにした作品だと悪玉のように描かれることが多いですが『英傑大戦』ではすべての武将がユーザーの味方になる可能性があるので、その武将の善の部分をなるべくピックアップするようにしています。
もちろんヒール(悪役)が似合っているキャラ――呂布とか董卓はそういった部分を強調することがありますが、できれば明るい部分を取り上げたいと考えているので平清盛は若い頃をイメージしてデザインをお願いしました。 - たしかに全く印象が異なります。この平清盛は船に乗っているようですが、これはどういう設定なのでしょうか?
- 平清盛は父親の時代から海を支配して栄えた一族なので、烏帽子や甲冑を海賊風にアレンジしてくださいとイラストレーターさんにお願いしました。背景もその流れです。
と言っても「絶対にこれを入れてください」という指示ではなく、「このイメージからアイデアをふくらませてみてください」といったお願いをすることが多いですね。
立ち絵は一発で決まることも
- キャラクターのポーズはどうやって決めているのでしょうか?
- 平清盛の例だと、2本の剣の持ち方の違いでポーズの提案がいくつかありました。片方は日本の武士の刀なのですが、もう片方は平清盛が日宋貿易を始めたことからその象徴として中国の剣、宋剣を持たせています。
例えばこちらの “C案(画像右下)”だと「貿易で得た剣をスッと抜いて見せるのはちょっと意味が違ってみえるね」という話が出て、「じゃあ上に掲げて宝物としての見せ方にしよう」という話がされて、現在の案に決まりました。 - ポーズを決める流れはつねに複数の案から選ぶ感じですか?
- そんなことはなく、どちらかと言えばイラストレーターさんが悩まれたときに複数の案が出てくることがあります。
いつもは剣の持ち方などは指定せず、おまかせすることが多いのですが、平清盛の場合はそれぞれ異なった剣を持たせるということで、イラストレーターさんが気を使って「どういうのが一番イメージに近いですか?」と提案をしてくれました。
イラストレーターさんが気にされていたように剣の見せ方はこだわりたかったので、理想のものが提案されてきたのはうれしかったです。 - まさにイラストレーターさんの実力によるものですね。提案の時点でポーズ即採用みたいなことはあるんでしょうか?
- イラストレーターさんのこだわりで、「もうこの武将はこの立ち絵が一番なんです」という案でくると、それがそのまま採用されることもあります。
平清盛だと「快晴の下、船上に立ち、自信満々の表情をしているイメージ」とのシチュエーションをお願いして、その通りに描写していただいていますが、イラストレーターさんが絵を描いていく中で「こういうポーズの方がいいんじゃないか?」という提案がされることもあります。
そのときはけっこう(提案が)顕著です。ラフを提出されたときに自分のアイデアの方にだけ色がついて、しっかり描きこまれています。普段のラフより気合が入っている感じで、もう完成稿かというくらい。 - 本命を採用させるための「捨て案」ですね(笑)
- もちろんそういうときはイラストレーターさんもこっちの意図を汲んでくれた上で、キャラクターのイメージを理解したから自信を持って出してくれている場合が多いので、それを退けることはほとんど無いですね。
あと、平清盛は主人公格の一人としてポスターやムービーにも使われるキャラクターだったので、多くのパターンを比較できたのはすごく良かったです。
肖像画のイメージにこだわることも
- これまで聞いた感じですと、『英傑大戦』では肖像画はあまり参考にされてないのですか?
- そういうこともなく、たとえば安倍晴明。彼は肖像画をベースにデザインしてもらっています。
安倍晴明は多くのゲームに登場している影響もあり、陰陽師のイメージをなかなか崩せない人物でした。
ゲームだと“長烏帽子(ながえぼし)”をかぶっていることが多いのですが、肖像画や京都の銅像を見ると全部“萎烏帽子(なええぼし)”と言われるちょっと特徴的な烏帽子をかぶっているんですね。
なので、ほかのゲームとの差別化をしたいと思ったので、「この萎烏帽子でなんとかデザインしてくれませんか?」という提案から始まりました。
その難しさからか、ラフ段階では烏帽子のデザインが異なっておりました。イラストレーターさんの目線だとやはり長烏帽子の方がカッコよくデザイン出来るということでしょうね。でも、ここは私の意思を通して「肖像画の烏帽子に出来るだけ近づけて欲しい」と話を進めて、最終的にこのようにポスターの真ん中を張るかっこいいキャラクターになりました。
- よく見る烏帽子とは違って、凹んでいるのが特徴的ですね。
- あと、この萎烏帽子をおした理由がもう一つあって、『英傑大戦』には他にも烏帽子をかぶっているキャラクターが多く登場します。その中で埋もれてしまわないように差別化することが大切だと考えていて、安倍晴明以外にも、さきほどの平清盛のように海賊風にアレンジする等、一工夫を入れるお願いは毎回しています。
イラストレーターさんも今までたくさんの安倍晴明を見てきていると思うので、そのパブリックイメージに寄りすぎずデザインすることはすごく大変だったと思います。
そういった中で、パブリックイメージを壊せないキャラクターが諸葛亮孔明ですね。
ユーザーに伝わらないイメージ化は避ける
- 孔明と言えばやっぱりこの扇は外せませんよね!! どのゲームでも皆これ持ってます。
- 羽扇(うせん)と呼ばれているものです。このイメージは崩せないですね。
孔明は特徴的なアイテムが多いです。そして、ほとんどの媒体の孔明が身に着けているのがこの冠ですね。
『英傑大戦』は結構アレンジを加えている方ですけど、この後ろのくるっと巻かれている冠と、羽扇が諸葛亮孔明らしさを出すポイントになっています。
なので、無理に奇をてらいすぎて「諸葛亮に見えない」と言われないように注意しています。ユーザーに伝わらないデザインになってしまうことは避けるべきなので。
杉浦善夫さんは第1弾の劉備も描かれていたので、諸葛亮の背景に劉備を描いてもらって、画面全体の豪華さというか魅力アップをはかりました。
カードでは見えにくいですが、ユーザーさんはすぐに気づいてくれましたよ。
キャラクター同士の関係性というか背景を盛り上げることで、カードとしての価値を高めることも考えています。
写真が残っていると逆に難しいことも
- では逆に写真が残っているような幕末のキャラはどうしてるんですか?
- 幕末の時代になってくると写真があるので、佐久間象山などはぶれずにデザインが進んだキャラですね。
有名な写真をベースに描いて貰ったのですが、写真の模写にならないように、苛烈というか熱血っぽいキャラクターの感じを入れて貰いました。
幕末の人物は誰でも見たことある写真が残っているので大変ですね。坂本龍馬はあの有名な写真の総髪(オールバック)のイメージを残しつつうまくできないかなと考えて、龍馬らしさを残しつつキャラとしても派手になるギリギリのラインを攻めてもらっています。
- それでも髪型や服装も含めてなんだか坂本龍馬感がありますね。(耳にピアスをつけているのを見て)当時、ピアスはあったんですか?
- 当時の日本人は付けていなかったと思います。イラストレーターさんのアイデアです。開国派として洋風の物、ガンベルトのようなものも取り入れて和洋折衷な感じでデザインされています。
右手の銃も実際に高杉晋作から貰ったもので有名なので持たせました。
龍馬の発注時はあえて顔写真を参考資料に入れずに、キャラとしての坂本龍馬を表現してもらうようにしました。
近代になればなるほど、その人の逸話とかエピソード、持っていたアイテムが残っており、それこそ高杉晋作とか三味線を持たせるだけで表現できてしまうので、そこが楽でもあり大変でもあるところです。
アニメキャラやVTuberと被らないよう気をつけている
- イラストレーターさんがデザインに困ったときはどうしてるんですか?
- よく相談されるのは、衣装について「史実ではどうなっているか?」とか「甲冑の構造が知りたい」といった内容です。
そういう場合はこちらで写真や絵を探してきて、説明しつつ、アレンジが必要な場合は方向性を提案することもあります。
イメージの共有で難航しそうな場合は、こちらが求める方向性の既存キャラクターをいくつか挙げつつ、デザインなどは被らないように注意しながら進めています。
デザインの被りでいうと、アニメの人気キャラやゲームのキャラは常にチェックするようにして、イラストレーターさんの判断の手助けになるよう準備しています。
いま大変なのはVTuberですね。炎上を避けるために流行りのVTuberがどういうデザインをしているのかを確認して、いざというときに被らないようこちらでも判断できるようにしています。
ただ、『英傑大戦』は歴史モノなので、必ずその人物を象徴するものが加えられており、既存キャラクターと丸被りみたいなことにはなかなかならないです。 - ありがとうございました。肖像画をベースにしているのではなく、肖像画もひとつの要素として武将それぞれのエピソードや特徴からキャラクターをデザインしていることがよくわかり、大変勉強になりました。
『英傑大戦』は2022年12月から新バージョンが稼働中!
- 取材にご協力頂いたゲームセンター向け対戦型カードアクションゲーム『英傑大戦』は、2022年12月21日から新バージョン『英傑大戦 廻天の五芒星』が稼働開始しています。
『英傑大戦』がどんなゲームなのかは、ライブドアニュースのYouTubeチャンネル『ゲームさんぽ』で動画が公開されていますので、こちらをチェックしてみてください。
- この記事だけでは紹介しきれなかった様々な武将が登場しています。
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