香川県丸亀市がふるさと納税の返礼品として、名刀「ニッカリ青江」の模造刀を用意して、話題となっている。

「ニッカリ青江」とは、南北朝時代の備中青江(現在の岡山県倉敷市)で作られた日本刀(大脇差)だ。丸亀藩主である京極家に代々受け継がれ、現在は丸亀市立資料館に所蔵されている。近年、人気ゲーム「刀剣乱舞」で刀剣男士として擬人化され、人気を集めている。

その「ニッカリ青江」の模造刀が、ふるさと納税の返礼品って? いったいどういうことだろう。

「ニッカリ青江」のきっかけは、斬れた石灯籠?


丸亀市ふるさと納税返礼品「脇差:ニッカリ青江」模造刀(画像提供:讃岐大的場工廠)

2018年5月10日、次のような画像付きのツイートが投稿されている。

「香川県丸亀市にふるさと納税すると、『脇差:ニッカリ青江』のハイクオリティ模造刀がもらえるぅー!」というコメントもある。これには6000を超えるリツイートがあり、3000を超える「いいね」が付けられており、今も拡散中だ。

そこでJタウンネット編集部は丸亀市に電話で確認することにした。

丸亀市役所の広報担当者は、「平成30年度、つまりこの4月から、10万円を寄付された方には、『脇差:ニッカリ青江』模造刀を返礼品として用意しております」と答えてくれた。この模造刀は、高松市の工房が制作したもので、県内で行われたイベントなどで販売され、評判になっているとのこと。工房を紹介してもらい、電話で話を聞くことにした。

答えてくれたのは、「讃岐大的場工廠」の金正人(こん・まさと)さんだった。

「私は、FRP造形(型取り造形)・発泡スチロール造形など、物づくりの仕事を個人でやっています。『ニッカリ青江』をつくるきっかけは、実は石灯籠だったんですよ」と金さん。

「ニッカリ青江」という名前は、にっかり笑う女の幽霊を切り捨てたところ、翌朝確認したら実は石塔を真っ二つにしていたという伝説が由来だ。その斬れた石灯籠を作って店頭に飾りたいという依頼が、丸亀市のある店からあった。斬れた石灯籠は好評で、写真を撮りたいとお客さんが殺到したという。


制作中の「脇差:ニッカリ青江」模造刀(画像提供:讃岐大的場工廠)

「そこで今度は、刀もつくりたいと考えまして、所蔵している丸亀市立資料館や、イベントが開催された香川県立ミュージアムに通いました。展示されていた高精細な写真資料を仔細に見て、刃紋や銘、細かい傷、裏面の『鍛え割れ』まで、克明に再現しました」

「市立資料館や県立ミュージアムの学芸員さんには、何度も質問させてもらいました」と金さん。細く薄く長い刀身をFRP用樹脂で仕上げるのは、なかなか大変だったようだ。模造刀を作るのは、完全な手作業、一振り完成するのに、約1週間はかかるという。

丸亀市のふるさと納税返礼品には、写真上のように刀掛けが付いている。この刀掛けもFRP樹脂製だ。

また返礼品の中には、2万円を寄付した人のために、前述した「斬れてる石灯籠」のミニサイズ版も用意されている(写真下)。

ふるさと納税の際、寄付の使いみちとして、「丸亀城を守り後世に残す事業」を指定すると、丸亀市外の人に限り、お礼品とは別に「丸亀城主証」がもらえる。「丸亀城天守」「中津万象園」「猪熊弦一郎現代美術館」が1年間無料で利用できる。詳しくは丸亀市ホームページでご確認を。


丸亀市ふるさと納税返礼品「斬れてる石灯籠」ミニサイズ(画像提供:讃岐大的場工廠)