今、テレビの制作会社の間で「ネット6」という言葉が、よく飛びかっている。

日本テレビやフジテレビといった、いわゆる“キー局”やその系列の地方局に番組の企画を持っていき、企画が通れば番組を作る、というのがこれまでの制作会社のやり方だった。ところが最近は「ネット6に企画を持っていく」ということが増え、企画会議の席でこの言葉がよく使われるという。

ネット6(東名阪ネット6)とは、テレ玉(埼玉県)、チバテレ(千葉県)、tvk(神奈川県)、三重テレビ(三重県)、KBS京都(京都府)、サンテレビ(兵庫県)の6つの局が合同で制作するネットワークのこと。キー局や系列の地方局とは違うこれらの“独立局”が、ここ最近、独自性のあるコンテンツをたくさん生み出しているのだ。

このネット6ができた経緯について、当時を知るテレ玉の東京支社次長、遠藤圭介氏はこう語る。

「開局当初から私たちの局は、埼玉の情報番組を作っていました。そして『ドラマやバラエティはキー局が作るものだから、向こうに任せておけばいい』という感覚がありました。ですが、どこかに『地元の情報番組だけでいいのか? ドラマやバラエティを作れないのか?』という思いはありました」

そして、2006年、独立局が動きだす。

「ほかの独立局さんも同じ悩みを持っているのではないかと思い、聞いてみたら、やはり同じことを考えていました。そこで『6局でお金を出し合ってオリジナルの番組を作りましょう!』という話になりました。映画でよくある“製作委員会”の方式をテレビ番組でやろうというわけです。それから、細かい点を詰めて、2007年にバラエティやドラマの製作ノウハウがある制作会社さん、東名阪独立局6局、番組DVDを販売するメーカーさんの三者で製作委員会をつくって、独自の番組を作ることになったんです」(遠藤氏)

制作サイド全員で出資して番組を作るスタイルのメリットについて、現在ネット6の『今夜野宿になりまして』というバラエティ番組で演出を担当するIVSテレビ制作の柴山悟史氏に聞いてみた。

「いい番組を作るという姿勢は、キー局もネット6も基本変わりありません。ただネット6はわれわれも出資するメンバーなので、制作サイドの意見をより尊重してくれるんです」

さらに、このようなことも。

「ネット6の各社さんとも『低予算でも面白い番組を作りたい!』という空気があって、90年代のキー局の深夜バラエティって、こんな感じだったんだろうな、と思わせる現場なんです」(柴山氏)

その結果、方言を話す女のコが魅力の“方言美少女バラエティ”『方言彼女。』や、稲川淳二、紗綾などが毎回とっておきの怪談をする『稲川大百怪 噂の百物語』など、実験感あふれる番組の数々が作られている。視聴率は取れても画一化されてきたキー局のバラエティと比べると、クセのある番組ばかり。だが、その個性こそがウケている理由なのかもしれない。

■週刊プレイボーイ50号「今、地方局ネット6が熱い!」より