[画像] 「アクロバットすぎる相撲」で話題の宇良が角界入り

 遠藤や逸ノ城の活躍で人気が復活した大相撲に新星が入門した。関西学院大学の宇良和輝(22歳)だ。

 身長172cm、体重107kgの小兵ながら昨年(2014年)の全国学生相撲・個人体重別選手権で無差別級3位となったこの男、大型力士に対して足取りや居反りという奇手を繰り出し、ネット上で「決め技がスゴすぎる!」と注目を集めていた。 

 同年6月には、バラエティ番組『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日系)でも「マンガみたいな取組」として取り上げられ、その衝撃の大技が話題に。師匠の木瀬親方(元幕内肥後の海)でさえ「これは相撲なのか!?」と感じるほど、アクロバットな取り口なのだ。

奇技「居反り」を繰り出し世界大会1位に

 宇良の名が全国に知れ渡ったのは2013年の全国選抜大学・実業団対抗相撲和歌山大会である。1回戦を足取り、2回戦を伝え反りで連勝、勢いに乗ると3回戦をすくい投げ、4回戦を突き倒し。準決勝では2012年の学生横綱・中村大輝(日体大から今年八角部屋に入門、春場所で前相撲デビュー)の背後に回り足取りで下した。決勝は大道出羽海部屋(昨年のアマチュア・学生横綱。東洋大から今年出羽海部屋に入門、春場所で幕下付け出しデビュー)に突き倒しで敗れたものの、見事に準優勝を果たした。

 同年10月、ロシアで開催された「スポーツアコード・ワールドコンバットゲームズ」(格闘技・武道の世界大会)の相撲競技、軽量級男子(85kg未満)では堂々の優勝。準決勝では低い態勢から相手の懐に潜り込み、得意の「居反り」で難敵を撃破。決勝は足取りで世界一に輝いている。同日の無差別級では元幕下力士に敗れたが、“異能力士”として脚光を浴びた宇良は、小学校の先生になるという目標を捨てて角界入りを選んだ。

「バック宙」のできる相撲取り

「誰にもマネができない相撲を取りたい」という宇良はレスリング経験を活かした練習メニューをこなしていた。ウエイトトレーニングのほか、軽量を活かす相撲をめざし、両腕を背後で組み、頭をつけての前方連続回転をこなす。しかもマット上では体操競技のような練習をするなど「バック宙のできるお相撲さん」なのだ。

 大学1年時に65kgしかなかった体重は、たんぱく質中心の食事で40kgもアップしたが、かの横綱白鵬も16歳のデビュー時は身長175cm、体重68kgしかなかった。天性の身体の柔らかさを活かして大横綱に登り詰めたことを思えば、大化けの期待を持たずにいられない。

 宇良が入門を決めた木瀬部屋は、現幕内の常幸龍、徳勝龍、十両の臥牙丸、明瀬山、英乃海、徳真鵬と6人もの関取を抱える大所帯で、稽古相手には事欠かない。土俵にマットを敷いた連続回転の練習風景が見られるかもしれない。

 序ノ口の取組の前に行われる「前相撲」からのスタートとなる宇良は、2月12日の記者会見で「2年で関取になりたい」と目標を口にした。小兵力士として人気を集めた舞の海(元小結)は幕下付け出し後1年で新十両となり、その舞の海の活躍に刺激され入門した智ノ花(元小結、現玉垣親方)も、同じく4場所で新十両を手にしている。

フィッシャーマンズスープレックスが土俵で飛び出す!?

 宇良のデビューで、もっとも期待されるのが「反り技」だ。

 宇良が得意とする「居反り」とは、相手の懐に潜り込み、腰をかがめて後ろに反って倒す決まり手であり、プロレスの「フィッシャーマンズスープレックス」のような大技だ。長い大相撲の歴史において幕内では二度しか出ておらず、その一度は智ノ花が1993年の1月場所で決めている。

 居反り以外にも「伝え反り」(2002年9月場所で朝青龍が決めたのみ)、「たすき反り」(64年間出現せず)は幕内の決まり手となったことがあるが、「外たすき反り」「掛け反り」「撞木反り」はいずれも幕内で出現したことはない。レスリングの飛行機投げに近い「撞木反り」は、2011年の全国学生相撲選手権準決勝で宇良が決めた大技であり、近い将来、これら「幻の決まり手」が本場所の土俵で見られるかもしれないのだ。

 かつて舞の海が曙を破って座布団が飛んだように、小さな力士が大きな相手を倒す、そんなシーンは相撲ファンを熱狂させてやまない。

「あれだけ大きな身体をもちながら変化(立合いで相手の攻撃を見て、相手の左側か右側へ体を交わす戦法)ばかりしている逸ノ城の相撲はつまらない。宇良には是非とも、逸ノ城を反り技で投げ飛ばしてもらいたい」(相撲ファン歴30年の好角家の声)

 常識にあてはまらないアクロバットな相撲で、是非とも角界に新風を巻き起こして欲しいものだ。

(取材・文/後藤豊)