息詰まる投手戦、8回に県岐阜商が相手ミスに乗じて貴重な1点で逃げ切り

被安打3、与四球1、11奪三振の県立岐阜商・高橋純平君

 創部31年にして初めて愛知県大会を制した誉が、前日、津西に完封勝ちした(試合レポート)名門県立岐阜商とぶつかった。ともに、投手の評判がいいので、投手戦が予想された。

 戦前の予想通りに、好投手戦となった。県立岐阜商の高橋 純平君は最速で150キロを超えることもあるというスピード派で、前日も津西を3安打完封している。また、愛知県大会を悲願の優勝で東海大会初出場の誉の左腕内田君は、スライダーとカーブの切れがよく、相手打線を巧みにかわしていかれるタイプだ。この日も、立ち上がりから、いい感じで入れて自分のペースでの投球をすることができた。

 そんな二人の投げ合いは、お互いにテンポよく相手に対して攻めの投球をしていくのだが、打者も追い込まれないようにと早いカウントで打っていき、試合そのものもスピーディーな展開となった。ただ、どちらも投手がいいリズムで投げていて、チャンスらしいチャンスもないまま中盤に差し掛かっていった。

 初めてスタンドが湧いたのが県立岐阜商の5回だった。この回の県立岐阜商は、先頭の加藤惇君が左前打で出ると、大野君が丁寧にバントで進めて二死二塁として、ここで8番高橋純君が右前打。二塁走者は思い切って本塁を狙ったが、中村君の好送球もあって本塁タッチアウトとなった。

 0対0の均衡は続いた。6回も県立岐阜商は、無死で坂下君が安打したものの、得点につなげられなかった。こういう試合になると、守りのミスが致命傷になりかねないかなという展開である。そんな思いが頭をかすめ始めた8回、誉は無死で失策の走者を出した。もらったチャンスの芽だけに、得点につなげたいところだったが、ここは高橋純君が踏ん張った。

好投した誉の内田君

 そしてその裏、県立岐阜商は一死から高橋君が振り逃げで出塁する。内田君のスライダーがちょっと切れすぎて、捕手のミットをかすめた。続く坂下君がきっちりとバントを決めて二死二塁としたところで、ワイルドピッチがあって三塁へ。そして、村居君の一打は、当たりそこない気味の内野ゴロだったが、全力疾走する村居君に野手も焦ってわずかに送球がそれて一塁セーフ。その間に三塁走者が帰り、これが貴重な決勝点となった。

 9回の高橋君は、これまでにも増してエンジンがかかり、最後の打者に対しては三振を狙うべくして奪った、見事な投球だった。緊迫の投手戦は、こうして決着がついてしまった。高橋君は9回を投げて、被安打3、与四球1、三振はそんなに獲りに行っているという印象ではなかったのに結果的には11個奪っていた。

 また、内田君も打たれた安打は5、与えた四球も一つだけ、7三振を奪う好投だった。試合後、県立岐阜商の小川信和監督は、「いい勝ち方ではなかったかもしれませんが、一生懸命やってきたことを野球の神様が認めてくれたということでしょうか。ラッキーな形で1点が入りましたが、打ちぞこなったと思っても気持ちを切り替えて一生懸命に走ったのがよかったと思います」勝利を喜んだ。

 また、高橋君に関しては、「昨日よりもフォームのおさまりがよかったと思います。だから、ボールも走っていたのではないでしょうか。身体のおさまり具合がよく、フィニッシュもきちっとしていました」と、いい形で調整できてきたことを強調していた。

 初の県大会優勝で東海大会進出を果たし、センバツ出場へ向けて千載一遇のチャンスでもあった誉だったが、1点及ばず、やや悔いも残った。矢幡真也監督は、「やっぱり、残念ですね」と、肩落としていたがそれでも、「こういう結果ですが、誰を責めるというものではないです。一生懸命やってきての結果ですから…。捕手も、ここまであのスライダーをよく止めていましたからね。内野もよく守っていました」と、尾関学園時代からの歴史を通じて初めてとなる、ここまでの結果を残した選手たちをねぎらいかばっていた。

(文=手束 仁)