ビールが大好きで日常的にもよく飲んでいる私たち『ビール女子』。そんな私たちも、一般的な女性としてのイベントごと「結婚・妊娠・出産」が今後待っているかもしれない。いや、かもというか、結婚したいし、いつかは子供だってほしいと思うのもごく自然な流れです。

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普段、日常的にビールを飲む私たちだからこそ気になる『アルコールと妊娠の関係』。今回は行動派産科医として数多くのプロジェクトを通して妊婦さんや赤ちゃん、そのご家族に関わられている竹内正人先生にお話しを伺いながら、私たちにとって日ごろからちょっと心に留め置いたらよい妊活事情について考えてみました。

■そもそも、妊娠しているのにビールを飲むのはタブー?

妊娠に伴い、女性のからだは妊娠前の妊活期〜妊娠期〜出産後の授乳期まで様々な変化があり、その中でも特に、胎児が子宮にいる妊娠期は母親が食べたもの、飲んだものの影響を赤ちゃんがダイレクトに受ける時期、といえます。
そこでまず出てくる率直な疑問。

-赤ちゃんがお腹にいる妊娠期ってそもそもビールを飲んだらダメ?

晩婚化が進む昨今、晩婚化の一番問題視されるところは妊娠率の低下。これは女性差別でも男性差別でもなく、生物学的な事実です。医療が進歩した今でも、やはり20代から30代前半の比較的若い時期に出産するということが妊娠率を考える上では有効とのこと。

「もちろん、男性も年齢とともに妊娠率が低下する要因は抱えることにはなるけれど、絶えず生産される精子に対し、卵子は女性が生まれながらに持っている数だけ。

胎児のときにすでに700万個を持っていて、生まれるころには200万個、初潮のころで30万個と減っていくし少しずつ劣化もしていく。これが加齢に伴い徐々に減って閉経に至るわけだから、やはり女性の年齢は妊娠率に大きな影響を及ぼしますよ。」という竹内先生。

こういった年齢的な事情や様々な外部要因を全てまずは置いておいて、妊娠期はビールを一滴も飲まないべきか、ということがビール女子的には気になるところ。

とはいえ、様々な要因が絡まって奇跡的に結びつく一つのいのちを、他の要因を排除してアルコールの影響だけ調べるということは難しく、まだまだわかってないことも多いのだそう。

■まだまだラインを引くのは難しい、数字的なこと。

現に、日本産婦人科学会でもアルコール量にして15ml、ビール350ml缶一本未満だと胎児への影響は少ないとする資料を掲載していますが、あくまでも目安であり、○○ml以下なら安全という量は確立されていないという前提のもと[i]。

一方、全世界でもっとも信頼されている妊娠と薬のデータベース マザーリスクでは、1日にビール8杯以上を摂取していると胎児性アルコール症候群(以下、FAS)になる可能性が高まる[ii]が、1日ビール1杯〜2杯の軽度な飲酒の場合の胎児奇形率は非飲酒群との差は認めなかった[iii]などの研究報告もあり、1日1杯程度の妊婦の飲酒なら問題ないと結論付けています[iv]。

個人差もあるため、中々決められない妊娠中のアルコール摂取量。「実際に様々な知見もあるけれど、妊娠期についてはこれなら安全というラインを引くのは難しい」と竹内先生。

それでも、日本においては多くの女性が妊娠すると自然とアルコールを控え、結果的にFASになる胎児が生まれてくることはほとんど稀。それよりも、妊娠して数週間の間、赤ちゃんの器官がほぼできあがると言われている時期に妊娠に気付かずにうっかり飲み会でお酒を飲んでしまうことは注意が必要だそう。

うっかりでも数杯で赤ちゃんがFASになったというケースは日本ではほとんど見たことがないといいますが、常習的にアルコールを大量摂取している方は、赤ちゃんが欲しい時期になったら少し量をコントロールする必要がありそうですね。


[i]飲酒、喫煙と先天異常」-日本産婦人科医会・先天異常委員会委員 国立成育医療センター 周産期診療部 胎児診療科 左合 治彦
[ii] Obstet.Gynecol.,51:41,1978
[iii] J.Pediatr.,80:309,1987
[iv]医学のあゆみ Vol.222 No.9 2007.9.1