デザイナーであると同時に、渋谷にある「FabCafe」のチーフクルーとしてカフェ運営を担う相樂園香。自身のクリエイティヴを活かすだけでなく、デジタルファブリケーションに関わる人たちのものづくりをサポートしている相樂にとって、液晶ペンタブレットは「コミュニティのハブになる、すべての人のための新しいクリエイティヴツール」だと語る。

「FabCafeの若きデザイナーが目指す、誰もがクリエイティヴになれる場所づくり」の写真・リンク付きの記事はこちら

相樂園香 | SONOKA SAGARA
株式会社ロフトワーク デザイナー、FabCafeチーフクルー。大阪芸術大学卒。幼少期からデザインに没頭し、大学ではグラフィックデザインを専攻。FabCafe運営のためロフトワークに入社し、FabCafeのウェブサイトや装飾物のデザイン、デジタルファブリケーションにまつわるワークショップの企画運営などに携わっている。

「実は、FabCafeができるって聞いたとき、とても悔しかったんです」

取材時、彼女が開口一番に語ったのは、ものづくりのコミュニティへの思いだ。

学生時代からデザインの楽しさに没頭していた相樂園香は、いつの日か、誰もが気軽にデザインを楽しめるカフェのような空間で、すべての人のクリエイティヴをサポートするコミュニティをつくりたいと考えていたという。そんなときにFabCafe(ファブカフェ)の存在を知った相樂はその熱い思いを直談判し、ロフトワークの社員としてFabCafeの運営に携わるようになったという経緯がある。

クリエイティヴエージェンシーのロフトワークが運営するスペースとして、デジタルファブリケーションを体験できるFabCafe。人が集い、出会い、語らうカフェ空間にレーザーカッターや3Dプリンターといったマシンが設置され、厳選されたシングルオリジンのエスプレッソドリンクやパティシエによる手作りスイーツが味わえるなど、さまざまな人たちが集う場所として活気に満ちている。

相樂は、そんなFabCafeのウェブサイトやイラストなどのデザインまわりを担当する一方で、カフェ運営を担うチーフクルーとして内装や店内の小物や制作物のデザイン、ホールオペレーションやデジタルファブリケーションの運営サポート、ワークショップなどを担当している。

幼少期から絵が好きだった相樂は、大阪芸術大学に進学しグラフィックデザインを専攻した。そこでIllustratorやPhotoshopといったデジタル加工技術と出合った相樂がデザインツールを最大限活かすために最初に手にしたのが、ワコムのペンタブレットBamboo(現Intuos)だったという。

「大学のころの手描きの作品はほぼすべてペンタブレットで描いていて、マウスで絵を描いたことはほとんどないです。パス取りやトリミング作業、紙に描いたものをスキャンしてIllustratorとペンタブレットで加工したりと、いまではほとんどのクリエイティヴ作業をペンタブレットだけでやっています。何かをつくること、デザインすること。それらに自分の直感的な感覚を落としこむためにも、それを助けてくれるツールのもつ意味は大きいですね」

新卒でロフトワークに入った相樂だが、デジタルファブリケーションを本格的に学び始めたのはFabCafeに入ってから。その運営を通じて、グラフィックデザインだけではなく、三次元のオブジェやものづくりの楽しさにも目覚めたという。

「立体物をつくるために、イラストデータをもとに木材をレーザーカッターで切り、ボルトを使わずに互いに組み合わせる『相欠き』などの手法で組み立てたりしています。立体的なものをつくるためにはものの構造を正しく理解することが必要で、常にデザインの基礎を意識しています」

いまではFabCafeにまつわるほとんどのものをデザインしているという相樂。例えば、自ら焼いたパンを自身で撮影し、その写真にイラストを施してウェブサイトにアップするなど、デザイン工程のすべてをDIYで実践している。デジタル上だけではなく、アナログな作業も含めて、デザインのすべての工程に携わることの楽しさがそこにはあるという。

デジタルファブリケーションは、デジタルで加工したものをリアルな物質に出力するため、デジタルだけではわからない物体の歪みやズレに思考を凝らす必要がある。そして相樂にとってはそれは同時に、楽しみでもあるのだという。

例えば、iPhoneにレーザーカッターでデザインし、そこに漆のパネルに金箔の柄を貼ったワークショップを企画。相樂自身が講師も担当した。二次元のイラストで完成するのではなく、レーザーカッターとデジタル、そして伝統工芸の漆の手作業がミックスされた、ものづくりのあり方。自分が普段身につけるものを自分自身の手でつくり、加工する過程を経ることで、デザインをより身近に感じられるのだと言う。


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Cintiq 22HD touchには、カスタマイズ可能なファンクションキーのほかに、指先のスクロールでブラシサイズなどを変更できるトラックパッドが背面に備えられている。描画以外にも直感的な操作を可能にする機能のひとつだ。

イラストやデザインだけでなく、そのデータをレーザーカッターや3Dプリンターなどを通して立体の制作物やファブリケーションに活かす作業環境において、彼女が手にしたCintiq 22HD touchはどのような役割を担っているのだろうか。

「液晶画面にそのまま描くことができる感覚は、まるでキャンバスに描いているみたい。小さいころに紙に絵を描いていたときを思い出します。これまで使っていた板型のペンタブレットは画面と手元とが別々になっていましたが、手元と画面が一体化していれば、『ハイテクツール』であっても、デジタル嫌いな人も感覚的に操作できますね」

ノートパソコンひとつで作業していたときは、小さな画面に収めようと作業していたために細かなところまでチェックできず、なんども出力しながら微調整をしなければいけなかったとか。大画面液晶で作業できれば、手描きの感覚をそのままクリエイティヴに落としこめるので、自分が抱いたイメージとの距離が近くなったという。

その日FabCafe内に設置していたCintiq 22HD touchは、データ化したイラストをその場でレーザーカッターや3Dプリンターで出力できる環境をも生み出しうる。そして実現されるのは、誰もが手ぶらで来店しその場でイラストを描き、描いたものがその場で出力できるような場所だ。

「これならば、誰でも簡単にイラストに触れることができ、知識や経験がない子どもからお年寄りまでのすべての人がクリエイターになれる環境をつくれるはずです」

デジタルとアナログが融合した新しいものづくりの場づくりを通して、自分自身のクリエイティヴを磨くだけでなく、多様な人たちのクリエイティヴのサポートをする日々を過ごしている相樂。

「まだまだデザイナーとしては駆け出しだと思っていて、最近はワークショップなどでも、いろんな技術やスキルを勉強しています。いつか、自分自身の作品を発表して、いろんな人たちに見てもらいたいですね。もちろん、FabCafeで出会う人たちと毎日新しいものづくりの現場に携われることも楽しく、誰かが何かをつくることの楽しさも支援していきたいです」

つくる喜びを多くの人と共有しながら、自身のクリエイティヴに活かしたいと語る相樂にとって、FabCafeの運営やデザインに携わることは最高にフィットした場所だ。

誰もがクリエイティヴに携わることができるいま、FabCafeというコミュニティと、そしてクリエイティヴを支えるツールを通して顔を出した小さなクリエイティヴの芽を、相樂は感じ取っているのだ。

[Cintiq 22HD touch|Wacom]

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