自動翻訳ソフトの歴史は結構古いが、初期のものは高価なうえに精度が低く、あまり使い物にならなかった。しかし2000年を過ぎたごろからは精度もどんどん上がり、価格もこなれてきた。現在では無料のWebサービスとして気軽に利用できるものが増えている。

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ピックアップしたアプリは「Google翻訳」と「エキサイト英語翻訳」。どちらもWebサービスとして定評があり、スマホ用のアプリも用意されている。仕事や英語の勉強に、あるいは海外旅行の際などに重宝するだろう。どちらも無料なのもうれしい点だ。

まずは2つのアプリの特徴を紹介していこう。

■ 多言語に対応した翻訳アプリ カメラ入力も可能! 「Google翻訳」

Google社による翻訳アプリ。最大の特徴は多言語対応であるところだろう。サポートするのは英語、フランス語、ドイツ語、中国語などはもちろん、アラビア語やスワヒリ語、アゼルバイジャン語など80言語に及ぶ。世界一周で利用しても問題なしだ。

入力方法が多岐にわたるのも特筆すべき点。音声入力/出力や手書き入力ができるほか、カメラ入力も可能だ。これはカメラで外国語を撮影すると翻訳してくれるというユニークな機能。特に海外旅行などで便利に使えそうだ。ただしカメラ入力は、今のところAndroid版のみの機能となっている。

ほかにもSMSを翻訳してくれたり、よく使うフレーズを保存しておけたりと、実用的な機能が満載。あらかじめ言語パッケージをダウンロードしておけば、ネットにつながっていない状態でも翻訳ができるのが心強い。

■見やすくてシンプル! 再翻訳機能もユニーク 「エキサイト英語翻訳」

簡単操作で素早く翻訳してくれるのが特徴。「エキサイト英語翻訳」という名前のとおり、英語に特化したアプリとなっている。翻訳結果をメールやSNSなどに直接送れるのも便利だ。

面白いのは、例えば英語を日本語に翻訳したものを、再度英語に翻訳する再翻訳機能を搭載していること。しかも繰り返す回数は無限にできる。訳文のチェックに使える機能だが、文章によっては訳文がおかしな日本語になっていくのも面白い。また端末を横向きにすると、訳す前の英語(または日本語)と訳した後の日本語(または英語)を2つのウィンドウで表示するモードになる。どの単語がどう訳されているのかなどを確認するのに便利だ。

履歴の保存と検索や、フォントの大きさの変更、背景のカラーの変更などもサポート。Android版であれば、ほかのアプリで表示されているテキストを、共有機能で翻訳することも可能だ。

■果たして実力はいかに? 実際に文章を訳してみた!

2つの翻訳アプリを比較するため、同じ文章を訳してみた。まずは比較的硬めの文章である、新聞の記事だ。内容はニューヨークタイムズに掲載された、サッカーのワールドカップのブラジル代表に関するもの。ロナウジーニョやカカが代表から外れたという記事なので、ご存じの方も多いだろう。

<原文>
“SAO PAULO ― Ronaldinho, Kaka and Robinho were left off Brazil's World Cup roster by coach Luiz Felipe Scolari, who selected just five players who went to the 2010 tournament with the Selecao.”

<Google翻訳>
“サンパウロ - ロナウジーニョ、カカとロビーニョは、セレソンと2010のトーナメントに行ってきましたちょうど5選手を選択したルイス・フェリペ・スコラーリ監督は、ことで、ブラジルのワールドカップの名簿を中断した。”

<エキサイト英語翻訳>
“サンパウロ - Ronaldinho、カカおよびロビーニョはコーチ、ルイス・フェリペ・スコラーリによってブラジルのワールドカップ登録簿から残されました。この人はSelecaoを備えた2010年のトーナメントに行ったちょうど5人の選手を選びました。”


残念! どちらも意味の通じない訳文になってしまった。もはや、これらの選手が代表に選ばれたのかどうかすら分からない。「left off」という言い回しが「名簿から外れた」という意味になっていないのが決定的なところ。

ただし、ポルトガル語のSelecao(ブラジル代表の意)をセレソンとしているのは、さすが多言語対応のGoogle翻訳、ちょっとだけ面目躍如だ。

■「エイリアン2」はイモリを助ける話…? ちょっと変わった文章に挑戦

次は、ちょっと変わった文章ということで、映画「エイリアン2」のストーリーの一部を翻訳してみた。映画の後半、主人公たちが必至で脱出しようとしている場面だ。出典は英語版のWikipedia。ちなみにこの映画の原題は「Aliens」。一作目の「Alien」が複数形になっている。

<原文 Aliens>
“Ripley and an injured Hicks reach Bishop and the second dropship, but Ripley refuses to leave Newt behind. She rescues Newt from the hive in the processing station, where the two encounter the Alien queen and her egg chamber. Ripley destroys most of the eggs, enraging the queen, who escapes by tearing free from her ovipositor.”

<Google翻訳>
“リプリーと負傷したヒックスはビショップと第二ドロップシップに達したが、リプリーは背後にあるニュートを残すことを拒否します。彼女は2エイリアンの女王と彼女の卵室が発生した処理ステーションでのハイブからニュートを救出。リプリーは彼女の産卵管から無料で引き裂くことによって逃げる女王、エンレイジ、卵の大部分を破壊する。”

<エキサイト英語翻訳>
“リプリーおよび害されたヒックスはビショップおよび第2の直送に達します。しかし、リプリーは、イモリを後に残すことを拒絶します。彼女は現像所の巣箱からイモリを救います。ここで2つは外国の女王および彼女の卵室に遭遇します。リプリーは、女王を激怒させて、ほとんどの卵を破壊します、この人は逃げる、によって、彼女の産卵管がとてもない。”


困ったことにエキサイト英語翻訳では、一緒に逃げている少女「ニュート」を「イモリ」と訳してしまっているので、そのあとの話が、イモリを救うストーリーになってしまった(笑)。なぜリプリーはイモリにこだわるのか!? 

また「Alien queen」が「外国の女王」になっちゃってる。直訳としては間違いないのだが……。この翻訳に関しては、Google翻訳の方がスムーズに訳せているという結果になった。

■「ケンシロウ=編み物のヒーロー」「しずちゃん=私のマナガツオ」
再翻訳機能は誤解が誤解を呼ぶ結果に

最後にエキサイト英語翻訳の再翻訳機能を使って訳してみた。これは、日本語を英語に翻訳したものを、再度日本語に翻訳するという機能だ。引用は日本語版のWikipedia。果たして意味の通じる日本語になるのか!

<原文 Wikipediaによる『北斗の拳』のケンシロウの説明>
“ケンシロウ 本編の主人公。北斗神拳の末弟にして、一子相伝の北斗神拳の正統伝承者。“世紀末救世主”として語られる。胸に北斗七星をかたどった“七つの傷”を持つ。”

<エキサイト英語翻訳 日本語→英語→日本語>
“ケン・シロウ メイン編み物のヒーロー。それはホクト神拳の終了弟になる。また、彼は、その相続人にのみお下がりとして回されたホクト神拳の正当な伝承者である。それは「その世紀の終わりのイエスキリスト」として伝えられる。それには胸の中のジェットコースターをモデル化した「7つの割れ目」がある。”


「編み物のヒーロー」は実際のケンシロウとは程遠く、とっても弱そう(笑)。これは「本編」の英訳をしくじった結果と思われる。「ホクト神拳」という名前もお手軽感満載で、「お下がりとして回された」という下りも何だか家庭的な事情が見え隠れして……。モヒカンがうろうろしている世紀末感が全くない。


もう1つ、アニメのキャラの説明で同様の再翻訳を実行してみた。今度はWikipediaのドラえもん。

<原文 Wikipediaによる『ドラえもん』のしずかちゃんの説明>
“通称「しずちゃん」(アニメでは「しずかちゃん」)。5月生まれ。のび太が憧れるクラスメイトの少女。成績は良く、性格は優しい。よくお風呂に入っている。焼きイモが一番の好物であるがイメージダウンを気にして、あまり口にしない。”

<エキサイト英語翻訳 日本語→英語→日本語>
“一般名「私のマナガツオ」(アニメ、私の[静か/"]("))。5月の誕生。それが誰の後に拡張されるクラスメートおよび太の少女は切望します。それは高い達成しています。また、文字は温和です。彼は風呂によく入っています。ベークドポテトは最初の好きな食べ物ですが、それは想像するべき損害に関心があります。また、それはめったに口になりません。”


「私のマナガツオ」、う〜ん謎だ。「しずちゃん」がなぜか「my butter fish」に英訳され、こういう結果になっている。さらに「のび太」がほとんど消えているのだが、よくよく見てみると「のび」の部分が「拡張」に変化しているようだ。

■まとめ

翻訳アプリは、確かに英文を読んだり日本語を英語に訳する場合に役立つアプリだ。ただし、実際に訳してみると、まだまだ正確な訳は難しいことがわかる。あくまでも補助的なツールとして使うべきだろう。

2つのアプリは、どちらも一長一短あるが、今回のテストに限って言えば、Google翻訳のほうが自然な翻訳ができる印象だった。